短いの
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朝、事務所の扉が開く。
「おはようござ、!!!」
「おはようー、プロデューサーさん。」
そ、想楽さん…!!!!!!
事務所に入ってきた彼を視界に入れた瞬間、心臓が跳ね上がった。
落ち着け、落ち着け、
自分に言い聞かせるも、なかなかそう上手くはいかなかった。
事務所には今は私しかいない。つまり今事務所に来た想楽さんと私の2人きりだ。
挙動不審になる私だが、想楽さんの方はいつもと変わりない様子だ。
どこを見たらいいかわからずキョロキョロと視線を泳がせていたが、チラッと想楽さんを見るとにっこり笑って近づいてくるのがわかり、再び視線は宙を泳いだ。
「プロデューサーさん、昨日の話…覚えてるー?」
「はっっ、えっっと…はい!でも、あの…」
「僕がプロデューサーさんを好きっていう話。」
耳元で囁かれ腰が抜けそうになる。
よろけると肩を抱かれ支えられてしまった。
「大丈夫ー?」
「!!!だっ大丈夫です!!」
今度は硬直したかのように全身に力が入り、ザッと後退りして想楽さんから離れた。
しかし、想楽さんは動揺している私を見て嬉しそうにふふ、と笑っている。
…昨日のこと、夢じゃなかったんだ。
事件は昨日の夜、終業後のことだった。
昨日も今みたいに事務所に残っていたのは私だけだった。そして今みたいに想楽さんが事務所にやって来た。
「あれ?プロデューサーさんまだいたのー?」
「想楽さん!お疲れ様です!もう帰るところですよ。」
「そうだったんだー。仕事が終わって前を通ったら電気がついてたから…。遅いし送っていくよー。」
「え!いえいえ、いいですよ。あ、なんなら私が車で想楽さんを送っていきますが…。」
「…そんなことしたら更にプロデューサーさんが帰るのが遅くなっちゃうでしょー?」
「いえ、そのくらい全然大丈夫ですよ!今車を出しますね。」
「…ちょっと待ってー。」
想楽さんは私の手を掴んで止めた。ギュッと手を強く握って、いつになく真剣な顔をしていたが、その時の私は何も考えていなかったしあまり気づいていなかったと思う。
「?はい?」
「ちょっと、今から話すこと聞いてね。」
「はい…?どうしました?想楽さん。」
「僕、プロデューサーさんのこと、好きなんだ。」
「…え?」
「プロデューサーさんとしてだけでなくて、1人の女の子として好き。」
「え…?お、おんなのこ?」
「そうー。だから、好きな子に送ってもらうのも、遅い時間に1人で帰すのも、僕のプライドが傷ついちゃうから、今日は一緒に電車で帰ろうねー。」
「………えっと……………?えっと…」
「ね。」
そうしてフッと笑うと、困惑している私の手を両方取ってギュッと握った。
握られた両手を見て、段々と、なんとなく状況を理解してきた私の顔は赤くなっていった。
「ふふ、じゃあ一緒に帰ろう?」
「はっ!はい!そ、そうですね!」
すぐにいつものように話し始め、歩き始めたから、なんとなく、とにかく、わからなかったからわからないままで、元に戻そうと思って考えないようにした。
結局、家までは送ってくれて、お礼を言って別れるその時、
「…プロデューサーさん、さっきの話、いきなりごめんね。びっくりしちゃったよねー?」
「えっ、さっき…あ、え、いえ、」
「プロデューサーさんを困らせちゃうなーっていうのはわかってたんだけど…、でも伝えたことは全部本当の気持ちだから。
…すぐに何か言って欲しいとかじゃないから…まあでも、僕のこと考えてくれたら嬉しいかなー?」
「…あの……」
「じゃあ、おやすみなさいー。また明日ねー。」
私が何も言えないまま、想楽さんは手を振って帰ってしまったのだった。
そのあとは家に帰ってからも、想楽さんの思惑通りなのか、当然、想楽さんのことしか考えられなかった。
さっきの話?はなんだったのか?
本当の話?
でもすごく真剣な顔してた…
いやでも私はプロデューサーで想楽さんはアイドルで、
ていうか女の子、って、
手を握ってた?
大分年下なのに…
何の話したんだっけ?
あれ、本当にあったことだったのかな…
黙々と1人、風呂に入り、髪を乾かし、スキンケアして、ご飯を食べ、テレビを見て、歯磨きして、スマホチェックして、布団の中で、日常生活をこなすその間もずっと混乱した頭で考えていたが、答えは出ず、段々あれは現実だったのかもわからなくなっていた。
…………が。
一夜が明け、今日、やっぱり本当にあったことだったんだ…!?
「…今、夢じゃなかったんだーって思ってるでしょー。」
「…え?!な、なんでわかるんですか?!」
「ふふ、本当に思ってたのー?」
くすくすと笑う想楽さんを前に恥ずかしくなる。
な、なんでわかるの?!ていうか、からかわれてる?!
「プロデューサーさんのこと、ずっと見てたから、なんとなくわかるのかもー。」
「…あの、」
「今言いたいことも、わかるよー。」
「えっ?!」
「ちゃんと考えてくれたんでしょー?プロデューサーさんはプロデューサーだから、アイドルとは恋愛できないって、言うかなーって。」
「…………はい。」
「…ちゃんと考えてくれて、ありがとうー。
…でも、」
「は、はい?」
「今日のプロデューサーさんを見て思っちゃったんだけど…。」
スッと私の頬に一瞬想楽さんの手が触れたかと思えば、私の髪に触れて掬った。それほど長くない私の髪の毛が想楽さんの手からこぼれて頬に当たった。
想楽さんのまっすぐな瞳にまた顔を赤くした私は視線を逸らした。
「あ、あの…?」
「ふふ、」
「そ、想楽さん…?」
「僕にもまだ、望みがあると思わないー?」
「えっ?!」
「だってこんなに意識してくれるなんて…、ふふ、嬉しいなー。」
想楽さんは口元を押さえて、本当に嬉しそうに、面白そうに笑っており、私の顔は赤くなるばかり。
「昨日は僕のこといっぱい考えてくれたんだねー。」
「いえっ…あの…いやっそうなんですが…!」
「好きな子の、染める頬見て希望持ちー、…ね、いいよねー?」
「…だ、ダメです!」
「そんな真っ赤な顔で言われてもなー。」
…自分でも、そう思う。
あー…と思わず声を出して手で顔を覆った。
それでも顔を見ようとしてくる想楽さんから顔を逸らすが、かわいー、と言われてますます顔を上げられなくなってしまうのだった。