短いの
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僕はプロデューサーさんのことが好き。
「みなさん、撮影お疲れ様でした!」
「お疲れ様ー。プロデューサーさんも送迎ありがとうー。」
レジェンダーズのみんなで撮影の仕事が終わって、プロデューサーさんが車で送ってくれる。
仕事もスムーズに上手く行ったし和やかだ。
「クリスさん、撮影の仕事も慣れてきましたね。様になってましたよ。」
「ええ、おかげさまで最近は撮られる仕事にも慣れてきたように思います。ありがとうございます。」
「ふふ、想楽さんは今回もとっても可愛く撮れてましたよ!」
助手席のクリスさんと話していたプロデューサーさんが、運転しながらミラー越しに後部座席にいる僕の方に目をやっているのが見えた。
「…そうかなー。ありがとー。」
一応褒められたのでお礼は言っておく。
隣の雨彦さんがニヤニヤしていた。
…僕がプロデューサーさんが好き、というのは、勘のいい事務所のメンバーには気づかれているだろう。
「雨彦さんはセクシーというか…大人の色気出てましたね!ファンのみなさんも喜ぶと思います!」
「そうかい、それならよかったよ。ありがとさん。」
みんなかっこいいと褒められているのに、また僕だけかわいいと言われてしまった。
顔には出さないけど複雑な感情で窓の外の景色を眺めた。
たしかに、クリスさんや雨彦さんに比べたら、自分のビジュアルは可愛いという表現になりやすいだろうけども。
「今回の雑誌も、ファンからの質問がありましたが…以前も答えたような内容でしたかね?何度も同じような質問が多いみたいで申し訳ないですね。」
「あぁ…好きなタイプは?ってやつか。」
「はい…まあ、それだけファンのみなさんが気になっている質問ということなんでしょうね。」
「言われてみれば、以前も仕事で同じ質問をされたような気がします。」
確かに、以前も同じ質問をされたことがあったかも。みんなの答えは見ていないので少し気になった。
「クリスさんはなんて答えたのー?」
「私ですか?私は確か…海が好きな方と答えました。海が苦手な方だと私とは合わないかと思いまして…」
「なるほどねー。クリスさんらしいねー。」
「そのようなお相手はいないので想像でしかないですが…、一緒に海を眺めたりして楽しめるような人がいいですね。このような回答で、大丈夫だったでしょうか?プロデューサー。」
「素敵だと思います。みなさんアイドルですので、このような質問は答えるのも気を遣ったりしますよね。」
「そうだねー。ファンのみんなが見るものなんだもんねー。」
「北村はなんて答えたんだ?」
「僕は…」
雨彦さん、またニヤニヤしてるー。
僕を困らせたいのか、はたまたプロデューサーさんにアピールするのを手伝ってあげようとでも思ってるのかな?
「…ショートカットの子はかわいいと思いますー。って答えたかな。」
「なるほどな…」
雨彦さんがチラリとプロデューサーさんを見やる。
プロデューサーさんの髪は…短い方だろう。
「なるほど…そうすると、ショートカットのファンは喜びますね!しかも髪が長いファンの子は切ろうかなっていうのもできるし、アイドルとしていい回答ですね!」
「…そこまでは考えてなかったよー。」
突然、思ってもいなかったプロデューサーさんの分析からのお褒めの言葉が始まり、雨彦さんは笑いを堪えているようで口を手で押さえている。クリスさんは「さすがですね、想楽!」と笑顔。
「…そういう雨彦さんはー?」
「ん?俺か?」
「うん、なんて答えたのー?」
「俺は…一緒にいて落ち着けるような人がいい、だったかな。」
「へえ…」
「ふふ、みなさんの答え、個性も出てて素敵だと思います。ファンのみなさんも喜ぶでしょうね。」
「お前さんはどうだい?」
「え?」
「お前さんだったら、この質問になんて答えるんだ?」
「えっ私の好きなタイプですか?」
雨彦さんに突然振られたプロデューサーさんは少し焦っている様子。
雨彦さんを見て目が合うと、フッと笑っていた。
…まあ僕も気になるけどー。
「そうですね…みなさんのように素敵な答えは思いつきませんが…
うーん、あっ!背が高い方は男らしくてかっこいいと思います。」
心の中にプロデューサーさんの答えがぐさっと刺さるイメージ。
背が高い方…
明らかに、レジェンダーズの中では僕は背が低い。
落ち込むなー。
「うーん、うーん…あと年上の方だと頼れる感じがしていいですね。」
さらに追撃をくらう。
「…そうか」
さすがの雨彦さんも憐れんだようで反応もそこそこに話を終わらせようとしている様子。
「なるほど…背が高くて年上の頼れる方ですか…そうすると、雨彦は当てはまりますね!」
「え!?まあ、そう…ですね…?…なんかこんな話、少し照れますね。」
無邪気なクリスさんにえへへと笑うプロデューサーさん。
あーあ、聞くんじゃなかったかなー。
「それを言うなら、古論も当てはまるだろう。まあ、頼れるという点で考えれば、もっと他に当てはまるやつもいると思うがな。」
雨彦さん、優しいなー。でも、無理しなくていいよー。
しかしプロデューサーさんは雨彦さんの言葉にやけに納得したようだった。
「そうですね…こうして考えていても、実際は違うことも多いですからね。」
「…?どういうことー?」
「今まで周りの方を見てきて個人的に思うことですが…、好きなタイプの方と上手く行くとも限らないし、好きになった相手が好きなタイプとも限らないかな…と。」
「…?そんなことが…?プロデューサーは難しいことがわかるのですね。」
「いえ…周りの友達など見ていると、そうかな?と…」
「なるほどな、想像と現実は違うこともあるだろう。」
「…へえー、それはプロデューサーさん自身の経験からではなくてー?」
「えっ!えっと……それは………内緒で。」
はにかんで笑うプロデューサーさんに、不覚にもときめいてしまい、答えははぐらかされてしまった。
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「えっ想楽さんのお家ですか。おじゃましていいんですか?ぜひ行きたいです!」
…この間の車内での会話以来、薄々感じていたけど…
僕はプロデューサーさんに大分、男として意識されていないようだ。
まあ、話の流れで少し家に誘っただけだけどー。
「何か手土産はあった方がいいですかね?」
「誰も家いないし、特にいらないよー。」
「そうですか…?でも、何か一緒に食べられるものでも買っていきますね。」
「ありがとー。」
2人きり、アピールしても効果なし、かー。
家にプロデューサーさんが来る、兄さんはいない、2人きり、と思うと僕は少し、緊張しちゃうかもー。
プロデューサーさんの朗らかな笑顔を見ながら思った。
--------------
「どうぞー、入ってー。」
「おじゃまします!」
「くつろいでいいよー、お茶入れるねー。」
「ありがとうございます。わー、素敵なお部屋ですね。この雑貨も想楽さんが集めたんですか?」
「んーまあねー。あ、お菓子ありがとー。一緒に食べようねー。」
「あ、よかったらお兄さんにも…」
穏やかに雑談できている。いつも事務所ではたくさんのアイドルたちに囲まれているからか、僕の家に来て2人きりというのは…なんだかとても優越感がある。
プロデューサーさんを独り占めしているようで。
心の中でそんなことを考えていると、プロデューサーさんがまっすぐこちらを見つめてきて少し心臓が鳴った。
「…あの、なにか…悩んでいることでもありますか?」
「え?」
「あ…いえ、私をお家に誘ってくれたということは、何か…みなさんには聞かれたくない相談事でもあるのかなと…」
「…あー。」
なるほどー。
ただプロデューサーさんが家に来てくれたら嬉しいなーという単純な気持ちで誘っただけだったので、そんなことを考えていてくれたとは少し申し訳ない。
でも、僕のことを気にしてくれていて嬉しいとも思った。
…なんて、子供じゃないんだからー。
「あの…仕事のことでも、そうじゃなくても、なんでも聞きますので、私でよかったらいつでも相談してくださいね。なんでも、想楽さんの力になりたいと思ってますから。」
「…プロデューサーさん。」
何か言おうと口を開きかけたとき、ガチャリと玄関の開く音がした。
…玄関の方から「ただいまー」と兄さんの気の抜けた声がする。
「あれ?誰か来て…」
「…兄さん。おかえりー。プロデューサーさんが来てるよ。」
「お、お兄さん…!?す、すみません、お邪魔してます!」
兄さんがリビングに入ってくるとプロデューサーさんは慌てて立ち上がり、緊張した面持ちでペコペコと挨拶をし始めた。
…いつも帰ってこないくせに、なんでいい感じの時に帰ってくるかなー。
そう思いながらもプロデューサーさんを兄さんに紹介する。
「僕らのプロダクションのプロデューサーさんだよー。とってもお世話になってる人ー。」
「プロデューサーさん?!えっと…想楽がいつもお世話になって…」
「いえ…!こちらこそ想楽さんにはいつもお世話になって…!いえ!とってもお仕事頑張って頂いていて…!あの、突然お邪魔していてすみません…!えーっと、あ、このお菓子、つまらないものですが…」
「ああ、いえ!お気遣いなく…!」
兄さんとプロデューサーさんがお互いにペコペコと頭を下げ合い、どんどん腰が低くなっていく。
…ていうか、なんかプロデューサーさん顔が赤くないかなー?
ふと、車内での会話を思い出した。
背の高い、年上の男性…。
「…プロデューサーさん、じゃあ僕の部屋行こうかー。兄さん、今日はプロデューサーさんと話があって来てもらったからさー。」
「あ、そうだったのか。いや、俺またすぐ会社戻るから、ゆっくりしてってもらって…」
「まだ戻るのー?まあ僕たちは部屋にいるから、兄さんも適当にゆっくりしていきなよー。プロデューサーさん、お茶とか持っていくから部屋で待っててねー。」
「あっ、すみません想楽さん…!ありがとうございます…!お兄さんもお忙しい中すみません…!私も長居しませんのでお気遣いなく…!」
頭を下げているプロデューサーさんを部屋に誘導した。
リビングに戻ると兄さんが水を飲んで一息ついていた。
「プロデューサーさんが来てるとは…、言ってくれればなあ…」
「こっちのセリフだよー。たまにしか帰ってこないくせにー。」
「でもプロデューサーさんがあんな若くて可愛らしい感じの女性とは思わなかったなー、てっきり男性だと…」
「…プロデューサーさんは女性だけど、しっかり仕事のできる人だよー。」
「いや、そういう意味じゃないって!
…想楽、お前………………いや、まあいいや。まあ、ゆっくりしてってもらえよ。」
そう言って兄さんはヒラヒラ手を振って行ってしまう。
気づかないうちにお茶を入れ直してくれてあった。
「ふぅ…、プロデューサーさん、お待たせー。」
「あ!お茶すみません…!ありがとうございます!」
部屋に戻るとまだ緊張した面持ちのプロデューサーさんが僕の部屋の床にちょこんと正座して座っていた。
「…あ、あの、お兄さんお帰りになったのに私お邪魔じゃないですか…?」
「邪魔じゃないよー。兄さんまた出てくし、せっかく来てくれたんだからもうちょっとゆっくりしてって欲しいなー。」
「そ、そうですか?勢いでお部屋にも入れてもらっちゃって…なんだかすみません。」
「謝らないでいいよー。
…ちょっと聞きたいんだけど…」
喋りながらプロデューサーさんのすぐ横に並んで座った。
どうしても気になってしまい、なるべく感情を出さないようにして質問する。
「…兄さんと話してるとき、プロデューサーさん顔赤かったけど…」
「え?!」
「そんなに緊張したー?それとも、兄さんのこと…会ったら何か思ったー?」
「え?!私顔赤かったですかね?!」
「うんー。大分照れてるようだったけどー。」
「えー、お恥ずかしい…!」
また顔が赤くなるプロデューサーさんを見てぼんやり思う。
あー、やっぱり僕じゃダメなのかなーって。
「いえ、あの、なんでもないのですが…、想楽さんのお兄さん、当然なんですが想楽さんに似ていらっしゃって…想楽さんも成長したら、こんな風にもっとかっこよくなるのかなって…」
「…僕ー?」
「は、はい、想像したら更に緊張してしまいました…今も男性の部屋に入れてもらうっていうのも緊張していますし…い、いえすみません!変なこと言ってますよね、忘れてください。」
「………」
えへへと照れ笑いしているプロデューサーさんを見て、なんだか気が抜けた。
はーと息をついてそのままプロデューサーさんの肩に頭を乗せてもたれかかった。
「あーなるほどねーそんなこと考えてたんだー。」
「えっ!そ、想楽さん?!」
「そっかそっかー。」
「あ、あの…」
「…今日はさ、プロデューサーさんとゆっくりしたいなーと思って呼んだんだ。
話したいことは…あったけど、今はいいやー。」
「そ、そうですか…?」
「うん、だから…いつか話したくなった時は、その時は…聞いてくれる?」
間近でプロデューサーさんの目を見て言うと、プロデューサーさんの顔が赤くなっていくのがわかった。
「も、もちろん私でよければ…!」
恥ずかしそうに顔を逸らされたのと、もちろんと言ってくれたのが嬉しくてまたプロデューサーさんの肩に頭を乗っけてくっついた。
「ふふっありがとー。」
「あ、あの…」
「なあにー?」
「い、いえ…」
「…ふふ、まだ僕にも望みはありそうだねー。」
「…?なんですか…?」
「なんでもないよー。こっちの話ー。
この心、こちらに向くよう、諦めずー。」
「???」
「ふふ、またうちに遊びに来てねーってことー。」
「は、はい!ぜひ…!」
顔を赤くしているプロデューサーさんの肩に、乗っている僕の顔はきっとほころんでいるだろう。
また、家に来てもらおう。
こんな時間をたくさん過ごせますようにと思った。