短いの
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ソファで目を覚ますと昼過ぎの時間だった。
「…ん?」
あー…、また朝ご飯食べたら寝ちゃったのか。
こうして貴重な休日を無為に消費していってしまう…。
想楽さんがいたら「だらしないなーもう」って怒るかな。
あれ、想楽さんは…そうだ、確か朝に出て行ったんだ。大学の用事があるからって…。
確か、グループワークがあると言っていた。懐かしい響きだ。
きっと、大学の若くて可愛い女の子も一緒なんだろうなあ。
盛大にため息をつきながら水を飲んだ。
…クーラーが効いていて寒い。夏だからと言って薄着の私がいけないけど。
ソファにかかっていた、手の届く範囲にあったシャツを羽織った。
「…ん?」
起きた時と全く同じような気の抜けた声が出たが、シャツを着たら私の服ではなかった。
想楽さんのシャツだ。…私が着ると少し大きくて、胸がきゅんと鳴った。そりゃそうなんだけど、やっぱり男の子なんだなあ…。
まあ、その辺にあったから着ないんだろう。ひとまず借りていよう。
何だかいろんなことのやる気が起きないな…。
再びソファに沈み込んだ私はボケーッとしていた。今日は一日休暇だけど、想楽さんが帰ってくるまで、どうしようかな。
想楽さんは一緒に住んでるわけじゃないけど、私の家にたくさん来てくれる。
何回も泊まっているし想楽さんのいろんなものがうちに増えた。
でも…今日はまた、うちに帰って来てくれるかな?それとも自分の家に帰るかな…。
普段は何とも思わないんだけど、さっき想楽さんの学生生活に思いを馳せたからか、なんとなく、…寂しい…ような…。
想楽さんは学生で、若くて、かっこよくてかわいくて、アイドルで、私なんかとなんで付き合っているんだろう。
もっと歳が近くて良い子がたくさんいるんじゃないか。
わざわざ、プロデューサーなんて選ばなくても…。
……考え始めてもキリがないことだ。
寂しいなんて、何言ってんだか。
そもそもアイドルと恋愛関係を持った時点で、ダメなんだ。ダメとわかっていても、隠しきれないくらい好きなんだから、想楽さんが許してくれる限り、そばに居させてもらおう。
そしていつでも終われる気持ちでいよう。想楽さんに別の道が見つかったり、別の相手ができたり、そうした時に笑顔で祝福できるぐらいに。
…1人で涙は流すかもしれないけど。
まあ、それくらいは自分でも許してあげよう。
「…よし」
モヤモヤした気持ちを振り払った私は、溜まっていた作業に取り掛かることにした。
…したところで、お腹が鳴った。…その前にお昼かな。
適当な食べ物を探しながら考えた。想楽さんがもしかしたら戻ってくるかもしれないし、夜は何か作って待っていよう。
若くて可愛い同級生にはなれないが、一日中グータラしている彼女よりは、ご飯を作って待っている彼女の方が可愛い…だろう。美味しいものでもないだろうけど…。
そうぼんやりと考えながら、自分の昼ごはんは作らなくてもいいもので適当に済ますのだった。
----------
「ハッ!」
…?????
目覚めるとベッドの上だった。
今スマホが鳴ったような…。
見ると想楽さんからLINKが来ていた。
『そろそろ終わりそうー。またプロデューサーさんのお家行ってもいいかなー?』
「………?」
寝ぼけた頭で文章を見て、同時にスマホの時間を目に入れた。
しばらくして今は夕方だと把握した。
えー…!また寝てたんだ…
自分のだらしなさ加減にげんなりする。
えーっと…、でも確か、お昼を食べて作業も少しして、ご飯の炊飯予約をしておいた…ような…。
恐る恐る確認すると、
「…炊けてる〜!よかったー。」
ほっと胸を撫で下ろした。せっかく、少しでも良い彼女になるぞ!と言った矢先に何もできてなかったでは、さすがにダメすぎて落ち込む。
想楽さんが帰ってくるまでに何かおかずを用意して待ってよう。
想楽さんにLINKの返信をする。
『もちろんです!ご飯作って待ってます。』
「…よし!」
たくさん寝たからか元気だ。今日の目標である『ご飯を作って待っている』を達成できそうで、私は上機嫌になり、鼻歌を歌いながら料理を開始した。
---------------
やっとグループワークの課題も終わり、プロデューサーさんの家に急いだ。
グループになって課題をやるというのは、いろんな意見が聞ける反面、それをまとめるのに時間がかかるし、何よりみんな話が逸れて普通に談笑を始めてしまうことが多い。僕は早く課題を終わらせたいのになー…と思いながら、適当に話を合わせて適当なところで仕切り直して話をまとめていくしかなかった。
せっかくの休日が潰れちゃったな。プロデューサーさんも休みだったのに…。
もしこの課題がなければ、そうでなくても1人でできる課題だったら、1日プロデューサーさんと過ごせたのに、と思うとため息が出る。
昨日の夜もずっと一緒にいたが、すでにもう会いたくなっていた。
送ったLINKに『ご飯を作って待ってます』なんて返ってくるものだから、嬉しくなり早く彼女の元へ行きたかった。自然と早足になり彼女の家に向かったのだった。
到着し、もらっていた合鍵で玄関を開けて入っていく。
いまだにこの瞬間も嬉しくなる。合鍵をもらえるほど、信頼されている、好かれている、と思うといつも自然と頬が緩んだ。
「プロデューサーさん、お邪魔しますー。戻ったよー…」
と言いながら入ろうとしたところで、キッチンから音がした。何か作ってくれているようだ。
僕が入って来たことに気づかないのか、何か作りながら彼女が鼻歌を歌っている。
…NEXT STAGE!だ。
楽しそうでかわいい。笑みが溢れつつ玄関からリビングに入っていくと、プロデューサーさんの姿を目に入れて驚いた。
「あ!想楽さん!お疲れ様でした!」
「ありが………、プロデューサーさん、そのシャツ…」
「?……あ!すみません…!そこにあったので着たら想楽さんので…!ちょっと借りようと思ってずっと着ちゃってた…!」
「…いや、着ててもいいんだけどー。」
着ないから置きっぱなしにしてしまっていたシャツだ。別にプロデューサーさんが着るくらいはなんの支障もない。
…ない、が、自分の服を彼女が着ているというのは、なんだか…
僕のシャツはプロデューサーさんには少し大きいようで、袖から細い腕が見えて、裾からも細い素足が伸びている。シャツの中は今朝別れた時の薄着の部屋着のままのようだ。
…目に毒だなー…。
「すみません、シャツ洗って返しますね。ご飯、大したものじゃないんですけど、もうできるの、でっ?!」
喋っているプロデューサーさんを後ろから抱きしめると案の定慌てている。
「想楽さん…?!あの…?」
「…一応聞くけど、わざとやってるー?」
「わざと…?!わざと…なに…ですか?!」
「僕を誘惑しようとしてる?」
「ゆ?!ゆうわく?!…誘惑は…してない…と思うんですが…?!」
「ふふっ、まあそうだよね、プロデューサーさんはしてないよねー。でも、」
抱きしめたままプロデューサーさんの太腿に手を滑らせると顔を真っ赤にして固まっている。この人一生こういうの慣れないのかなー。
「…僕は誘惑されちゃったかもー。」
「ぁ………いえ……あの………そういうつもりは……あの……」
「えー?だって疲れて帰ってきてみたら、ご飯作ってくれてて、僕らの歌歌って、彼氏の服着てそんなに肌出して…」
「え、え、肌?!…夏はいつもこうじゃないですか…?!」
「いつも見てるからっていつも平気なわけじゃないんだよー?」
「え……あの…す、すみません…?」
「それに、料理もいつも苦手だからやりたくないって言ってたのに、してくれたんだー。」
「た、たまにはやりますよ!…それに、少しは良い所を見せないとと思って…。」
「…無理しなくていいのにー。また自分は若くないし可愛くないしと思ってる?」
「え゛っ、だ、だって…!それは本当のことですし…ん!」
こちらを向かせてキスすると、一瞬驚いた様子で顔を真っ赤にして目を泳がせて黙ったので、僕は満足した。
「じゃ、せっかく作ってくれたし冷めちゃう前にご飯食べよー。」
「は、はい…た、食べましょう!」
抱きしめていた手を離すとプロデューサーさんはホッと一安心したようだった。
「プロデューサーさん、今日は1日お昼寝ばっかりしてたんでしょー?」
「あはは…恥ずかしながら…はい…。気づいたら寝ちゃってて。」
「じゃあ夜は眠くならないよねー。」
「確かにそうかもですね、昼夜逆転してしまって良くないってわかってるんですけどねー。」
「そうしたら夜は僕が時間をもらうから大丈夫ー。」
「え?」
「昨日の夜もあれだけ伝えたつもりだったけど、まだわかってないみたいだからー。」
「え」
「まだ若くないからとか気にしてるとはねー。僕がどれだけなまえさんのこと好きか、もっと伝えていかなきゃねー。」
「え」
「ね、夜が楽しみだねー。なまえさん。」
ねー、と笑いかけると顔を赤くして目を逸らしている。
今日日中一緒にいられなかった分、これから存分に2人の時間を楽しもう。