短いの
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いつだったか言っていた。
「私、寒いのが苦手なんですよ。」
あれは暑い夏の日のことだっただろうか。
まあ、暑すぎるのも困りますね…、と苦笑いする彼女とその時の空気感を思い出していた。
「…ぅ……さむ…」
「…あ、起きたー。おはようなまえさん。」
今、寒い冬の朝の空気を感じながら、布団の中で小さくなっているこの人を見て不思議な気分になっていた。
「朝だよー。」
「…想楽さん」
「なにー?」
「行かないで…」
「……」
かわいい、が、この人は寒いのが苦手で、僕が起きて布団から出て行ってしまったら、暖をとれなくなるからそう言っているのだと、それも理解していた。
単純に僕と一緒にいたい、離れたくないという意味なら愛しくて仕方ないだろう。
打算的な彼女の思惑を理解してしまっているため、ときめく気持ちを心の隅に追いやった。
なんだか悔しいから。
「…寒いからでしょー。」
「うん……」
いつもは敬語なのに、それも忘れて寝ぼけているようだ。僕の服を弱々しく握りしめ、眉間に皺をよせながら頷く彼女に、今度のときめきは不可避だった。
「しょうがないなー。」
ニヤけるのを抑えながらぎゅっと抱きしめてあげると、すぐに腕をまわしかえしてくるのでやっぱり嬉しくなってニヤけてしまった。
…まあ、見えてないからいいかー。
あの夏の時にはまだ、こんなこと全然知らなかったなー。
本当に寒いのが苦手ということ、ものすごく朝が弱いということ、この人の家のベッドの寝心地と、一緒に眠るあたたかさ、体温、…他にもいろいろ。
夏頃とは随分と変化した関係に、不思議な感覚になりつつ、満足感、充足感、…幸福感?多幸感?いろんなものを感じていた。
…まあ、まだ起きるまでゆっくりする時間はあるだろう。
「寝坊しないようにねー。」
「ん…んー…。」
「うーん…冬は朝、澄んだ空気も、嫌がって。プロデューサーさんは朝も、寒いのも本当苦手だよねー。」
モゾモゾと腕の中に収まっている彼女が動いた。顔が上を向いて至近距離で目が合い、眠たそうな目に確かめるように見つめられる。
「……想楽さんも?」
「…僕も、寒いのは苦手かなー。」
そう言って抱きしめる腕に力を込めると、彼女は満足そうにまた僕の胸に顔を埋めた。
結局のところ、寒いのが苦手なのは僕も同じで、寒いのが苦手な者同士、素足を絡めて暖を取り合って、僕らはもう一度眠りについた。