短いの
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今日の仕事はこれで終わり。
「お疲れ様でした!」
「お疲れ様です!プロデューサーさん、メリークリスマス!」
「!山村さんも!メリークリスマス!」
山村さんと挨拶を交わして事務所を出た。
今日はクリスマスイヴ。事務所では日中、来られる人で集まってクリスマスパーティーもした。わいわいと騒がしく、楽しい時間だった。
その時もケーキは少し食べたけど、帰り道、予約していたケーキを受け取りに行く。
浮き足だって自然と早足になっていることに自分では気づかない。
「いらっしゃいませー」
「すみません!ケーキを予約してるんですが…」
「ご予約の方ですね。」
店はやや混雑していたが、店員さんはテキパキ対応している。
今日は一日ずっとそうだったんだろう。感謝しながらケーキを受け取った。
暗くなり外はだいぶ寒かった。
冷たい風を顔に浴びながら、ケーキの箱に気をつけながら、早足で帰宅する。
玄関を開けると、リビングの明かりがついているのがわかった。
そこから想楽さんが玄関まで顔を出す。
「あ、プロデューサーさんおかえりー。」
「!想楽さん!もう来てたんですね!」
「事務所のパーティー終わってそのまま来させてもらったからー。」
「そうだったんですね、お待たせしました。」
「うん。待ってたよー。外寒かったでしょー。」
想楽さんは両手を私の頬にピタッと乗せた。一瞬息が止まった。こういうスキンシップにはまだ慣れなくて照れてしまう。
…でもあったかい。
「つ、冷たいですよ!」
「ふふ、あっためてあげるー。…あ、ケーキ受け取りに行ってくれたんだ。ありがとー。」
「いえ、帰り道なので!」
笑顔でケーキの箱を少し持ち上げて見せると想楽さんは両手で受け取った。
「まああったかい物でも飲んだらー?」と話しながら2人であったかいリビングに行く。
想楽さんが自分の家のように過ごしてくれているようで少し嬉しい。
「このケーキ屋さん、巻緒さんに教えてもらったんですよ。」
「それは美味しそうだねー。」
「ですよね!楽しみです。あ、でも昼間に事務所で食べたケーキも…東雲さんの作ったケーキもやっぱり美味しかったですね!」
「そうだねー。大きくてびっくりしたよー。」
「ふふっ3段でしたもんね。事務所のみんながほとんど来るからって、大きいの作ってくれたんですよ。」
「でもあんなに大きいのをみんなで全部食べきったもんねー。事務所のパーティーは相変わらず賑やかだったなー。」
「みなさんで集まれるのも楽しかったですね。SNSに写真を載せたらファンの皆さんも喜んでるようで…」
話しながらコートを脱ぐと想楽さんが受け取ってくれた。
「プロデューサーさんはその後お仕事もお疲れ様ー。」
「あっありがとうございます。お待たせしてすみません。」
「そんなに待ってないよー。」
コートをかけに行ったと思ったら、戻ってきた想楽さんは意外な物を持っていた。
「これ買いに行ってたからー。」
「…えっ?」
「メリークリスマス、なまえさんー。」
想楽さんが持っていたのは小さな薔薇の花束だった。
「…えっ?私にですか?」
「それ以外ないでしょー。豪華なのじゃないけど、高価な物だと受け取ってもらえないかと思ってー。これならどうかなー?」
「えっ、えっ」
目の前に差し出されて思わず手に受け取った。
たしかに、クリスマスプレゼントはいらないと言ってあった。
想楽さんは学生で、アイドルのお給料も多くはなく、お兄さんに生活費も渡していることも知っているので、何も買わないでくださいね!と、不満そうな想楽さんにあらかじめ何度か言っておいた。
…でもまさか花を用意してくれているとは。
困惑している私の顔を想楽さんが覗き込む。
「…嬉しいー?なまえさん」
「えっ!う、…嬉しい…です。あ、ありがとうございます!」
「よかったー。」
あまりに予想外の出来事で、ポカーンとしてしまったが、慌ててお礼を言うと想楽さんは嬉しそうに笑った。
そしてかがんで私に短いキスをした。
「なまえさん、女の子だしこういうの好きかなーと思って。」
「へっ!?女の子!?えっと……はい…。」
こんな、女の子扱い、確かに憧れていたが、思いの外照れる。顔が熱い。花束を両手でぎゅっと握った。
そんな私を見て満足そうに笑っている。
「事務所のパーティーも楽しかったけど、今からその話も禁止ねー。」
「へっ!?」
「だって、今からは恋人同士の時間だからー。プロデューサーさんじゃなくて、なまえさんと僕の時間だよー。だから他の人の話は終わりねー。」
「えっ!は、はい。」
「ふふ、僕のことだけ考えてねー。」
「…ずっと考えてますよ。」
言われなくても、事務所を出てから、ケーキを買って、ここに着くまでも、ずっと、
「…もっと、だよー。」
私の両頬にまたピタッと手を添えて、今度は何回もキスをした。
「せっかくのクリスマスだもん、ね?」
冷たかった私の両頬は、想楽さんのおかげで、既にすっかり熱くなっているようだった。