短いの
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「…え?一部屋しか取れてない?」
私の声がホテルのロビーに木霊するようにすら感じる。
冷や汗がながれ心拍が速くなる。
「は、はい。こちらトリプル一部屋のご予約になっております。」
「シングルをもう一部屋予約したと思うんですが…」
「申し訳ありません、承っていないようですが…」
「……え…えっと…じゃあ今からもう一部屋取ることはできますか?」
「申し訳ありません…お一人ですとご用意できるお部屋がなく…。お部屋のグレードを上げて広いお部屋をご用意することは可能なのですがいかがでしょう?」
「えーっと…………」
「プロデューサーさん、何かミスー?」
「部屋がないのかい?」
「我々の部屋しか予約できていなかったようですね。」
「……………」
フロントで揉めていると、レジェンダーズの3人が後ろから声をかけてくる。
ダラダラと冷や汗が流れた。
「まあ、いいんじゃないか?一部屋で。」
「雨彦さん何言ってるんですか?!いいわけないでしょう!そ、そしたら私はその辺で適当に探しますので…」
「何言ってるのー。ネットカフェとかに行くつもりー?女の子1人で危ないよー。」
「そうですよプロデューサーさん。それはダメです。」
「部屋はないが、布団は人数分あるんだろ?」
「う…うう……」
私は頭を抱えた。自然豊かな地域だ。そこに撮影のため泊まりに来たのだ。周りには他のホテルもなさそうだ。というか何もなさそうだ。確かに女1人でネカフェや漫喫はよくないかもしれない。しかも今からそれらを探しに行くとなるとここから遠いしどうすれば。みなさんにも囲まれて頭を抱えた。
「う……うぅ……………
……じゃあ……せめて…広い部屋にグレードアップしてください………」
ついに折れた私は、ガクッと肩を落としてフロントのスタッフさんにそう告げたのだった。
3人はホッとして喜んでいる様子。
山村さん、無駄遣いしてごめんなさい…。
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部屋の鍵を渡され、案内された方へ4人でてくてくと歩いて向かう。
「わーい、グレードの高い部屋ってどんな感じなんだろうねー?」
「我々としては嬉しいハプニングですね。」
「お前さん、そんな暗い顔しなさんな。俺たちと同じ部屋がそんなに嫌かい?」
「…あの、私これでも女なんですが…。」
「ふっ、そんなことわかってるさ。」
わかってるの?本当かこいつら?
訝しんで3人の顔を見るが何も考えてなさそうにニコニコしている。わかってないだろ。
「あ、こちらの部屋みたいですね!」
「開けてみよー。」
いつの間にやら部屋についたようだ。
想楽さんがドアを開けると…。
「わー、部屋に露天風呂がついてるよー。」
「これはすごいな。贅沢じゃないか。」
「なんと!広い部屋ですね!」
私はずっこけてしまった。
グレードアップってそういうこと?!
広々とした綺麗な部屋には、頼んだ通り布団が4セット用意されており、部屋の奥、窓の外には露天風呂が見えた。
すごすぎるけど、どっちにしろこのメンバーで私が使うわけもない。
高いなあと思ったらそういうことか…!
「…お前さん、そう落ち込むな。もともと違う部屋でも、お前さんもこっちの部屋に呼ぶつもりだったんだぜ?」
「え?」
「なあ…仕事の前乗りとはいえ、せっかくの旅行じゃないか。やることは一つだろ…?」
「…え?」
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「…あっ!」
私の短く上がった声が、静まり返った部屋に響いた。
「…これで上がりだ。俺の勝ちだな。」
「あぁ〜…!まいりました…。…雨彦さん、透視能力あります?」
「ふふ、最後になっても雨彦さんは負けないねー。」
「プロデューサーさん、惜しかったですね!」
豪華な部屋で、私たち4人はトランプで盛り上がっていた。
ババ抜きをするがなかなか雨彦さんは負けることがない。
「ふふ、トランプなんて久しぶり。みなさん、仕事で泊まる時はいつもこんなことしてたんですか?」
「たまにな。思い出したらこいつを持ってきて3人で盛り上がってるのさ。古論と俺は、たまには酒でも飲んでな。」
「まーバラバラに過ごしてることも多いけどねー。」
「私はそういう想楽と雨彦と過ごす時間も、好きですよ!」
「ふふ、仲が良くて何よりです。」
想楽さんがトランプをまとめてくれている。
クリスさん笑顔で言った言葉にはみんな表情が柔らかくなった。
大人たちは買ってきたお酒も飲んでおり、ほわ〜っとした雰囲気が漂っている。
私は想楽さんに悪いし、お酒好きでもないから遠慮しようと思ったが…
トランプも盛り上がり、想楽さんからも勧められて、せっかくだからと少しだけ私も飲んだ。久しぶりに飲むと、少し楽しい気分になってきた気がする。
クリスさんはやや顔が赤いようだ。雨彦さんは…全く変わらないな。
「さて…そろそろいい時間だな。プロデューサー、このホテルには大浴場もあるようだ。そっちに行ってきたらどうだい?」
「あ、そうですね…。」
時計をチラッと見ると到着してから大分経っているようで、楽しんでいると時間はあっというまだ。
「せっかくだから、お湯に浸かってこようかな?」
「それがいいよー。いってらっしゃいー。」
「じゃあちょっと、いってきますね。」
着替え等を用意して、3人に手を振り部屋を後にして大浴場を目指した。
大浴場はゆったりとお湯に浸かることができて、いろんな種類のお風呂もあり楽しむことができた。
温泉なのかな?なんだか肌も良くなったような。
…はじめは予約ミスしてしまい、担当アイドルの男性3人と一つの部屋なんてと思ったけど…結構楽しいかも。
こんな風に過ごせるなら、みなさんと同じ部屋でも全然よかった。
最初、嫌そうにしてしまい態度悪かったかな…。
いいお湯に浸かりほかほかになって、満足した私は、ホテルの浴衣を着てまたみなさんのいる部屋に戻って行った。
……戻ったら、
「あ、プロデューサーさん戻ってきたー。」
「プロデューサーさん、おかえりなさい!」
「戻ったか、お前さん。」
露天風呂に浸かる3人の姿が。
私は頭を抱えて膝から崩れ落ちた。
「ねええ!!!ちょっと!!!!!あんたら………は???……はあ???????」
「あーやっぱり怒ってるよープロデューサーさん。」
「やっぱり私たちだけ露天風呂を楽しんで申し訳ないですね。」
「違うわ!!!!!ちょっ……ほんとに……ちょっとーーー!!!」
「お前さんも一緒にどうだい?」
「馬鹿なの?!!!?入るわけないでしょー!!!!」
私は怒り散らして赤面しながら両手で顔を隠した。
何?!なんなのこの人たち?!
「やっぱりなんもわかってないじゃないですか!!ていうか酔っ払い?!想楽さんは……飲んでないでしょ!!止めてくださいよ!!」
「えー僕も温泉入りたかったし…プロデューサーさんの反応が面白くてつい、ごめんねー。」
「ごめんねじゃねーです!!!」
「プロデューサーさん浴衣かわいいねー。」
「ありがとうございます!!!いや違う!!!」
もおおお、と叫びながら床にしゃがみ込む私を、おそらくにまにましながら見られている気がする。こっちは見ないように必死だが。
「湯上がりの、いつもは見れぬ、色気かなー」
「まさに湯に浸かって色気爆発させてる人たちが何言ってんですか???!!!」
「北村…お前元気だな。」
「想楽、若いですね。」
「なにー?プロデューサーさんのかわいい浴衣姿に欲情したのは僕だけってことー?おじさんたちは酔っ払ってるから元気出ないだけでしょー?」
「何の話??!!やめてもらえません??!!」
3人に背を向けてしゃがみこんでいるが、いろいろな恥ずかしさに耐えきれず耳を塞いだ。
「もう…!!もう私出ますから…!!!」
「なんだ、もう出るのかい?もうちょっと浸かってけばいいじゃないか。」
「浸かってません!!!部屋を出るっつってんの!!!」
「あー待って待って。僕もう出るからさー。」
3人を見ないようにしながら荷物をまとめようとするとザバっと湯から上がる音が聞こえて焦り、また両目を塞いでしゃがみ込んだ。
「うわーーーッッッ!!!何出てるんですか馬鹿入ってろって!!!!出なくていいですからーー!!!!」
「口の悪いプロデューサーさん、滅多に見れないですから新鮮ですね。」
「ちょっと本当にそのまま出てこないでくださいよ!!!?!!!?」
「大丈夫大丈夫ー。僕ももう浴衣着たからー。」
「え…」
しゃがみ込んだ肩にぽん、と手を置かれて、想楽さんから声をかけられた方を恐る恐る目を開けてみると、
「ちょっ…ちゃんと着てください!!!!」
「ぐえっ」
ほぼほぼ浴衣ははだけており、思わず襟をがっと持って重ね合わせた。
「くるしいー。しかもこれ左前だよー死んじゃうよー。」
「知りません!!!!」
「なんだ北村、浴衣着せてもらってるのか、俺もお前さんに着せてもらおうか。」
「ずるいですよ、私もお願いします!」
「酔っ払い共やめろ出てこないでって馬鹿もうーーー!!!!」
2人もザバザバと湯から出ようとしてる気配がしてまた手で顔を覆った。
「プロデューサーさん、酔っ払いたちはほっといて一緒に寝よー。」
「一緒に寝ません!!!ていうか、酔ってないあなたが1番タチ悪くないですか?!!?!」
「全く、お前さんの言う通りだな。北村、あんまりプロデューサーをからかうんじゃない。」
「お前も怪しいんだよなあ??!!酔ってますか??!?!それ酔っ払ってんの??!!」
「プロデューサーさん、いい海を泳がせてくださってありがとうございます!雨彦と想楽と海に入れて楽しかったです!」
「温泉ですよね???もーーーー本当に酔っ払ってるってこと??!!明日撮影なの大丈夫です?!?!とにかく早く服着てくださいよ!?!!」
「お前さん、」
「なんですか?!」
「浴衣着せてくれないのかい?」
「くれないよ早く着てくれよ!!!!」
もーーー!!!と呻きながら床にうずくまり丸まっている私に、「えい」と後ろから重さが加わり、「ぎゃっ」と声をあげてしまった。
そのまま布団に寝転がらされる。
想楽さんに押されて転がされたようだ。気づくと3人に囲まれていた。(一応浴衣は着たようだった。)
「ごめんねー、からかいすぎちゃったかなー。」
「私たちみんな、プロデューサーさんのことが大好きなんですよ。」
「明日はいい仕事してみせるさ、だから今日は俺たちのわがままに付き合ってくれるかい?」
「……………そんな言い方ずるい………
…でもダメ!!!1人ずつ1個布団使ってください!!!」
移動させようと怒ったが、下の方でクリスさんが既に寝息を立てているのが聞こえた。寝てる?!
雨彦さんももう寝てるし!狸寝入りか?!狐なのに?!
想楽さんは「ふふふ」と笑って私の腕に抱きついて寝ようとしている。
「ちょっと起き…想楽さん!!起きてるでしょそっち行ってくださいもーーー!!!」
何とか抜け出して、離れた布団のすみにくるまって寝た私であったが、
次の日の朝、やっぱり3人に囲まれて目を覚ましたのだった。
「…なんで?」
その日のお仕事は完璧にこなしていたのは余談である。