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今日の仕事は前々から楽しみにしていた。
レジェンダーズの皆さんの撮影の付き添いなのだが、なんと、撮影場所は、私の大好きな遊園地。
最近は、アイドルも遊園地のキャラクターと一緒に人気のダンスを踊ってテレビに出ている。
いいなあ〜と思っていたが、まさかスタッフ側で来られるとは思っていなかった。
明るいBGM、華やかなお城、装飾、仕事中だろうがその全てが心を躍らせる。
まあ、撮影が終われば長居できないけどね。
レジェンダーズの皆さんは既に着替えて準備ができたようだ。カメラテストが行われている。
付き添いといっても、特に心配することもないんだよな。
強いて言えば、撮影が苦手というクリスさんかな…でも最近は慣れてきたようで、遺憾無くそのビジュアルを発揮できている。今回の王子様のような衣装も、このロケーションもクリスさんにピッタリだろう。
遠くから皆さんを見ていると、想楽さんが気づいたようでこちらに手を振った。すると雨彦さんとクリスさんも手を振ってくれこちらに笑いかけてくれる。
慌てて小さく手を振り返した。
…わー、すっっごい絵になるなー。私、今回もいい仕事したな。
平日の早朝といえど、遊園地の入園者たちが増えてきて、撮影をチラチラ見ている人もいる。
あんまりSNSとかに書かれないといいけど。勝手に写真を撮る人がいないかは気にしておこう。
周りを見渡していると、遠くに小さな女の子がてくてくと歩いているのを見つけた。
……あれ?1人…?あんなに小さいのに…。
心配で少し目で追ってしばらく様子を見ていたが、どうも保護者らしき人は見当たらない。
涙目になる小さな子を見て、意を決して歩み寄り、目線を合わせて声をかける。
「えっと…、こんにちはー。お母さんかお父さんは一緒ですか?」
「…まま…、ままみえなくなった…」
小さな女の子の大きな目から涙がこぼれた。
うわー。やっぱり迷子かも…。
「えっと…一緒に遊園地の人のところ行こっか。お母さん探してもらおうね。」
スタッフさんを探して保護してもらおうと思うが、女の子は泣いてなかなか動こうとしない。
私、子供の扱い上手くないんだよな…。心配で声をかけたはいいものの、やっぱりスムーズに解決とはいかなさそうだ。
どうしよー…。
「プロデューサーさんー、どうしたの?」
「想楽さん!カメラテストは…」
「終わって休憩だよー。…その子はー?」
「あ…どうも迷子のようで、遊園地のスタッフさんのところに連れて行きたいのですが…」
「迷子かー。」
想楽さんはスッと片膝をつきしゃがんで、女の子の前で目線を合わせた。
「お姫様、そんなに泣いてどうしたのー?」
「…おうじさま?」
「そうだよー。お母さんを一緒に探しに行きましょう。お手をどうぞー。」
想楽さんが優しく手を差し伸べると、女の子は泣きながらも想楽さんの手を取った。
「スタッフさんはあっちかなー?あ、プロデューサーさん、一緒に来てねー。女の人いた方がいいかもだしー。」
「は、はい!もちろんです!」
女の子の手を引いて、想楽さんはゆっくり歩き始めたので私は後を着いて行く。
す、すごい…!
「お姫様はどこから来たのー?お城かなー?」
「ううん、おうちだよ。…おうじさまは?」
「僕はねー、あのお城から来たんだよ。内緒だよー?」
「ないしょ?」
「しーっだよー。」
「しー…っ」
女の子と想楽さんが顔を見合わせて、人差し指を口に当てている。
なんとも尊い光景に私は手で顔を覆った。
想楽さんが女の子の手を引いて歩いていると、雨彦さんとクリスさんも気づいたようだ。
「おや、想楽、その子は…」
「迷子のお姫様だよー。」
「フッ、北村は王子様ってわけか。やるな。じゃ、俺はスタッフを呼んでこようか。」
「ふふ、可愛らしいお姫様ですね。そうだ、お姫様、チョコレートはいかがですか?」
クリスさんが自身のバックからチョコレートを出して女の子にあげている。女の子は泣き止んで笑顔になっていた。
その後、雨彦さんが呼んだ遊園地のスタッフさんが来てくれると、女の子は迷子センターへと案内された。
女の子は最後まで想楽さんに手を振っていた。
「…想楽さん、ありがとうございました!助かりました。」
「ふふ、プロデューサーさん、オロオロしてたねー。まあ、なんとかなって良かったよー。この衣装のおかげかなー。」
「ほんとにスマートで…本物の王子様のようでしたよ!」
「Beitのみんなには負けるけどねー。」
「そんなことないです!本当にかっこよかったですよ!」
「…プロデューサーさんも、こういうの好きー?」
「え?」
想楽さんは私の手を取り、
「どうか僕と、一曲お相手願いませんか?」
そして手の甲に口づけする。
「僕のお姫様……なんてね、どうー?
……あれ?プロデューサーさん?……固まっちゃったー。」
「おや?プロデューサーさん?どうしました?」
「北村、プロデューサーをからかうのはその辺にしておけ。本当に動かなくなっちまうからな。」
「ふふ、そうみたいー。」
固まっていると後ろから雨彦さんとクリスさんが来てワイワイと話し始める。
「〜〜〜っ…!!みなさん!!そろそろ撮影が始まるようです…!!」
「お、そうみたいだな。じゃあそろそろ行くとするか。」
「プロデューサーさん、まるでアコウダイのように真っ赤になっていますが大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫です…!!みなさん行ってきてください!!!」
「じゃあ、行ってくるねー。プロデューサーさん。」
想楽さんの無邪気な笑顔と、駆けていく皆さんの背中を見送った。
…今回の撮影も、いいものになりそうだ。