短いの
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プロデューサーさんの車の中では、いつも僕らの曲が聴こえてくる。
「…………」
「…………」
何か微かに聞こえてふと目を覚ました。
プロデューサーさん、また歌ってるー。
プロデューサーさんは僕たちアイドルをよく現場や家まで車で連れてってくれる。いつもプロデューサーさんの車の中では315プロのみんなの曲が流れていた。
シャッフルでいろんなユニットの曲やソロ曲も聴こえてくる。
いつもは雑談してるけど、自然に黙って静かになった時、アイドルが寝てしまった時、よくプロデューサーさんが鼻歌を歌っていることに気づいた。
時折、ニコニコとリズムに乗って身体を揺らしていることも。そんな様子を見てしまった時は、面白いし可愛いしでこっちまで笑みがこぼれる。
今日も長い移動中、僕はうたた寝してしまったため、話し相手もいなくなったプロデューサーさんは無意識に歌っていたようだった。
これは…幸広さんの曲かなー?
…しかも、プロデューサーさんってばもしかして、
「……もしかして、真似して歌ってるのー?」
しばらく静かに聴いていたが、思わずフフッと笑って尋ねると、プロデューサーさんは身体をビクッとさせ歌声は止まった。
「あ……聞こえちゃいました…?」
「むしろ聴かせてくれてると思ってたよー」
「恥ずかしい…。みなさんの曲好きで、思わず…、失礼しました…」
「歌ってもらえるくらい好きなんて、みんな嬉しいと思うよー」
「そうならいいんですが…」
「たくさん曲があるのに、歌えるんだもんね。僕ら大事にされてるなーって思うよ。」
「そりゃあ…プロデューサーですから、そのくらい当然です。」
プロデューサーさんがこっちをちらっと見て微笑んだ。
…嬉しいねー。
「…僕の曲も歌ってもらおうかなー」
「えっ」
「僕の真似もできるの?」
プロデューサーさんが歌ったらどうなるか、ちょっと気になる。期待を込めてプロデューサーさんを見るが即座に、
「そんなの無理ですよ!」
と、本気で無理の顔をしていた。
もちろんです!任せてください!と笑顔が返ってくるのを想像してたんだけど、あまりに違ったので驚いた。
「想楽さんみたいに可愛い声出せませんよ…!しかもご本人の…プロの前で歌うなんて…無理です!」
「…えー」
あー、また“可愛い”が出たー
「かっこいいじゃないのー?」
「えっ!ええっと…!もちろん、当然すっごくかっこいいんですが…!高い声は私には出せないというか…!可愛いだけじゃなくかっこいいのはもちろんで…!」
慌ててる慌ててる。
可愛いよりはかっこいいと言われたい。好きな女性になら、特に。しきりに可愛い可愛いと言われるとちょっとねー。
「でも歌ってくれないんだー、他の人の曲は歌ってくれるのに…。」
わざとらしくしゅんとして見せるとますますプロデューサーさんは慌てている。
「い、いえ…私は可愛い声ではないので…低い声の方の曲は歌いやすいというだけで…決して想楽さんの曲が嫌とかではなく…いえむしろ大好きなんですが…!たくさん聴いてるんですよ、あの、本当に…大好きで…」
可愛いと言われムッとしたのもあり、僕の曲は歌わず他の人の曲はルンルンで歌うことにやや嫉妬もあり、意地悪言ってみたけど…
慌ててるプロデューサーさんもみれるし、“大好き”も引き出せたし段々気分が良くなってきた。
「でも、プロデューサーさんの声かわいいよねー?」
「えっ?!いえ…恥ずかしい話、女にしては低い声しか出ず…」
「そんなことないんじゃないかなー」
「いえそんな…、いや、ありがとうございます。」
気を遣って言ってると思ってる顔だなー。
もしかして、本当に女性の自分より僕の声が可愛いと思ってるのかなこの人。
「…まあたしかに、普段は落ち着いた声ではあるかなー」
「はは…そうなんですよ。想楽さんだけじゃなくて、アイドルの皆さんの中には私より可愛らしい声の方がたくさんいて…いつも本当にすごいなと思ってるんですよ。」
「…でも本当に声もかわいいと思うよー」
「は…、あはは…」
「まあ、そういうのって自分じゃわからないものなのかもねー」
「う、うーん、どうでしょうか」
「まあでも、夜になったらわかるよね?」
「え?」
「ね」
プロデューサーさんの足にそっと手を置いてにっこり笑いかけると、ポカンとしていたプロデューサーさんの顔がみるみる内に赤くなっていった。
「いえ…!?あの…、いや、えーっと、」
「今日も兄さんは仕事で帰ってこないし、寂しいなー」
「!」
プロデューサーさんのハンドルを握る手が、ぎゅっと強くなったのがわかった。
「来てくれるよね、なまえさん」
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「は…あ、あの…あの…!
…………もしかして怒ってます…?」
「えー?怒ってないよー」
「可愛いって言ったから…?」
「怒ってないってー」
「………えっと…、ていうか…!想楽さんも、あの、他のみなさんのように後ろの席で広々と使っていただいてもいいんですよ…?」
「えー、プロデューサーさんの隣がいいな」
「ぅ……」
「今日はプロデューサーさん夕飯何食べたいー?」
「えっと…」
「多分、僕の仕事終わっても、プロデューサーさんはその後もしばらく終わらないよね」
「そ、そうですね」
「何か作って待ってるから、また可愛い声きかせてね」
「…………………………は、……い……」
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