狐の足跡
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「はあ?」
平和の象徴を殺すのは俺だ。俺の主張に首謀者の青年は懸念したように見える。
「黒霧。こいつを飛ばせ。不愉快だ」
「しかし死柄木弔」
「黒霧に死柄木弔。覚えた。お前の名前も顔も匂いも」
「?」
ぽかんと呆れる二人の背後に周り意表を突く。人間が回避不能と呼ばれる視界の外側。まずは脚。死柄木の弁慶目掛けて一蹴り入れる。
「ぐ!?」
ガクっとその場に座り込んだ奴の横っ腹にもう一撃。これで人間は大抵激痛に悶えるのだ。
「させません」
振りかざした脚は黒霧のモヤに向かっていた。死柄木の攻撃を別の所へ受けさせようとするのだろう。この場合、俺が躊躇しそうな相手を選び動揺を生ませる。賢い奴ならあいつを選択するはずだ。
「……」
「なに!?」
何の迷いもなく一撃を放つ。固い筋肉の感触で確信がついた。黒霧はオールマイトの下へ俺の脚のみワープさせている。
「のわ!?あ、脚?痛いじゃないか高頭少年!」
「子どもの蹴りで喚くな」
「一瞬の躊躇もなく攻撃するだと…」
「さっきの言葉が虚勢だと思ったか?」
平和の象徴を殺すのは俺だ。大半のヒーローは奴に憧憬している傾向にあるが俺は違う。
「欺くことは得意だが、生憎アレは本心だ」
「……」
死柄木はじっとこちらを見つめる。俺と同じ赤い目が細くなる。
「いいなぁ、お前。気に入った」
にひるな笑みを浮かべる死柄木がこちらへ歩み寄る。腕を広げ俺にゆっくりと近づいてきた。拳を構えて周囲の警戒を怠らない。少し離れた場所では奴が怪人と対峙しており、それは全く通用していない。ざまあみろ。
「効かないのはショック吸収だからさ。脳無にダメージを与えたいならゆうっくりと肉をえぐり取るとかが効果的だね……」
「態々弱点をどうも」
「そういうことならやりやすい!!」
奴は怪人の後ろに周り腰を掴んだ。昔見た痛々しいプロレスの技でああいうのを見た覚えがある。バックドロップだ。奴の威力からして怪人の首は折れただろう。
「……?」
平和の象徴。俺の殺す対称は遥か高みの最強の男。だからこそ俺はここまで強くなれた。まだ先にいる奴はこんな敵ぐらい裕に倒してしまう。はずだった。地響きを起こした張本人は黒霧のワープにより怪人の五指で腹を掴まれていた。突き刺さる指先からは血が滲み出ている。痛いと叫ぶは、あの平和の象徴。強かにチャンスを起こした黒霧は死柄木に褒められる。意表を突くのは、奴の方が上手だった。
「目にも止まらぬ速度のあなたを拘束するのが脳無の役目。そして貴方の身体が半端にとどまった状態でゲートを閉じ、引きちぎるのが私の役目」
「このっ!」
「待てよ少年。お前の相手は俺だろ」
死柄木が俺の前に立ち道を塞がれた。甘かった。周到な奇襲をかけてきたぐらいの連中なら、俺達の裏をかいていてもおかしくなかった。生徒と同じように俺も心のどこかで平和の象徴は必ず勝つと慢心していたのだ。憎くて堪らないが、それだけの実力がある奴に甘えていた。ワープを解除させるには黒霧へ攻撃しなければ、奴を殺す目的が失われる。希望を持った生徒たちの目の前で、平和の象徴が失われる。
消失は、死を意味する。
「退け死柄……」
「どっけ邪魔だデク!!」
焦燥を取っ払う爆発音が唸る。視線を移した先にはもじゃもじゃと爆発男、少し離れた場所から紅白男。そして俺たちへ駆け込んでくる赤髪。
「だあー!!」
「……ッ」
「くっそ!いいとこねー!」
集結した面々は対人演習で攻撃力に長けた奴ら。俺の心配をした赤髪に腕を引かれ死柄木と距離が開く。むっと口を尖らせた。
「大丈夫か、高頭!」
「触るな!余計なことするなら退け!」
「何だその言いぐさは!」
ぎゃんぎゃん騒ぐ俺たちを無視して紅白の男は「平和の象徴はテメェ等ごときに殺れねえよ」と暴言を吐く。氷結で力の弱まった怪人から逃れた奴は傷口を抑えて死柄木に向かい合う。死柄木は爆発男に抑えられた死柄木を見て落胆した。
「出入口を抑えられた。こりゃあピンチだなあ…」
その声音は俺達に掴まる覚悟を含んでいない。どうにかして逃亡を図ろうとしている。そうなれば、遠方の入口ではなく、爆発男が確保した黒霧だ。地から足を離す。
「脳無。爆発小僧をやっつけろ。出入口の奪還だ」
赤髪の腕を振り払い、黒霧の下へ走った。その間に怪人は氷結で崩れた部分を超再生という個性で復元させていく。なんつう便利な個性だ。羨ましいなくそ。俺は爆発男に回避を促した。
「邪魔だ退け!」
「あぁ!?テメェやんのか!」
こういうタイプはいうことを聞かない。目で見て納得させる方法が有望だが、それは俺が死ぬ。あの怪人のパワーは奴並で俺の個性では抑えられる限度がある。無理やり蹴とばした方が早い。爆発男を突き飛ばした瞬間、こちらにやって来る怪人の拳が防御した腕に喰い込んだ。
「ぐうッ」
あまりの衝撃に体が吹っ飛んで行く。すると俺を後ろから包むような温もりを感じ目を見開く。ズズズと摩擦で靴底がすり減り立ち度止まった。
「無茶をするな、少年!」
劇画チックな顔面を見上げ、全身に怒りの熱が込みあがる。
「触、……ッ!!!!」
腕を引きはがそうとしたとき、怪人に受けた腕から激痛が走る。怪人の拳が触れるたった一瞬、俺は油断した。それだけで重症を負わせるなんて。滅多に怪我をしない腕を庇うように片方の拳を振るった。
「君は十分闘ってくれた。さあ、皆と一緒に逃げなさい!」
「指図すんな!余裕ないくせに強がってんなよ!」
「この場を喰止めるために強がるさ、何故って?」
奴は俺を横切りいつもの口調で言った。
「平和の象徴だからだ」
「……」
ああ。だから俺はお前が嫌いだ。自分が平和の象徴であることを振りかざして、何でもできるかのように振る舞って、救えなかった人間を無視して、そこに立つお前が。
「……くそ」
大嫌いなんだ。
オールマイトの連続パンチにて怪人脳無はUSJの外へ吹っ飛ばされた。これがトップ。親父の上にいるトップヒーローなんだと見せられ震えた。更に向こうへと叫んで疲弊してもおかしくない状況でトップは笑う。
全盛期なら5発で済んだ。衰えた今は300発以上も撃ってしまった。
俺のサポートでやられそうになっていたオールマイトは依然平和の象徴としてそこに君臨している。あれが、親父が越せない壁なのだとう痛感した。動揺する敵はオールマイトに気圧され逃亡か戦闘かを迫られる。奴らの視界に俺たちは入っていない。ここにいればオールマイトの戦闘の邪魔になりかねない。
「俺たちの出る幕じゃねえみたいだな…」
俺の意見に賛同する切島が緑谷を説得しようとするが、奴の目線はオールマイトに向かったまま。それもどうでもよかった。
「さあどうした!?」
オールマイトの煽りが聞こえる。それを背に俺たちは出入口へ向かった。いや、待て。あいつは?
振り返った土煙では変わりずらいが、確かにそこに存在している。
入学してオールマイトの授業で喧嘩を売った奴。奴の戦闘を始めて黙視して経験値が高いことが知れた。俺達より先に、プロの世界を知っているような勘の良さに納得がいく。爆豪に匹敵する戦闘センスは輝いているが、粗暴な態度とオールマイトを嫌悪する光景は俺達がヒーローを目指す理由とは違うのだと示していた。
オールマイトを憧れるヒーローは多くいるが、憎むヒーローはいない。敵側の考え方の奴に頷けないのは事実だが、時折見せるあの……。土煙にシルエットが浮かんだ。
「高頭…」
オールマイトが敵を倒すなら、俺たち生徒は避難を優先すべき。賢い奴だと思っていたが、そうでもないのか?揺れる煙から微かに見える腕の動きをじっと見た。
「どうした、轟」
「高頭がいる」
「はあ!?アイツまだあんなところに!おーい高頭!」
切島の良心は高頭を呼びかけるが、応答はなかった。爆豪も同様に振り向く。影が動いた。丸い頭部を腕でこすりつける動作のように見える。
「泣いてる?」
「……」
オールマイトに救われることが屈辱なのか。何もできない歯がゆさなのか。理由は不明だが、何度も涙を拭っているようにしか見えない。以前、爆豪が教室で泣き虫野郎と言っていた。案外涙もろい奴だったのか。俺達が高頭に注目している間、緑谷はオールマイトから目を離すことはなかった。
「……」
「緑谷」
オールマイトと主犯格たちはまだ闘うようだ。緑谷はブツブツ何かを呟き冷や汗を流す。あのオールマイトを心配しているっていうのか。
「……」
お前がオールマイトのお気に入りだからか?緑谷。お前に恨みはないが、そういうことなら俺はお前を見逃すわけにはいかない。
親父を完全否定するために、右側のみで俺はトップになる。
「な、緑谷!?」
思念にふせる俺の目の前から姿を消した緑谷は、オールマイトのもとへ飛んでいた。蛙吹が言っていた言葉を思い出す。緑谷とオールマイトの個性は似ている。個性が類似あるいは同等になる場合は遺伝がほとんどだ。なあ、緑谷。お前、オールマイトの隠し子なのか?
俺が緑谷に視線を移している間に、高頭の影は獣へと変化していた。
「ガルルル……」
180811
平和の象徴を殺すのは俺だ。俺の主張に首謀者の青年は懸念したように見える。
「黒霧。こいつを飛ばせ。不愉快だ」
「しかし死柄木弔」
「黒霧に死柄木弔。覚えた。お前の名前も顔も匂いも」
「?」
ぽかんと呆れる二人の背後に周り意表を突く。人間が回避不能と呼ばれる視界の外側。まずは脚。死柄木の弁慶目掛けて一蹴り入れる。
「ぐ!?」
ガクっとその場に座り込んだ奴の横っ腹にもう一撃。これで人間は大抵激痛に悶えるのだ。
「させません」
振りかざした脚は黒霧のモヤに向かっていた。死柄木の攻撃を別の所へ受けさせようとするのだろう。この場合、俺が躊躇しそうな相手を選び動揺を生ませる。賢い奴ならあいつを選択するはずだ。
「……」
「なに!?」
何の迷いもなく一撃を放つ。固い筋肉の感触で確信がついた。黒霧はオールマイトの下へ俺の脚のみワープさせている。
「のわ!?あ、脚?痛いじゃないか高頭少年!」
「子どもの蹴りで喚くな」
「一瞬の躊躇もなく攻撃するだと…」
「さっきの言葉が虚勢だと思ったか?」
平和の象徴を殺すのは俺だ。大半のヒーローは奴に憧憬している傾向にあるが俺は違う。
「欺くことは得意だが、生憎アレは本心だ」
「……」
死柄木はじっとこちらを見つめる。俺と同じ赤い目が細くなる。
「いいなぁ、お前。気に入った」
にひるな笑みを浮かべる死柄木がこちらへ歩み寄る。腕を広げ俺にゆっくりと近づいてきた。拳を構えて周囲の警戒を怠らない。少し離れた場所では奴が怪人と対峙しており、それは全く通用していない。ざまあみろ。
「効かないのはショック吸収だからさ。脳無にダメージを与えたいならゆうっくりと肉をえぐり取るとかが効果的だね……」
「態々弱点をどうも」
「そういうことならやりやすい!!」
奴は怪人の後ろに周り腰を掴んだ。昔見た痛々しいプロレスの技でああいうのを見た覚えがある。バックドロップだ。奴の威力からして怪人の首は折れただろう。
「……?」
平和の象徴。俺の殺す対称は遥か高みの最強の男。だからこそ俺はここまで強くなれた。まだ先にいる奴はこんな敵ぐらい裕に倒してしまう。はずだった。地響きを起こした張本人は黒霧のワープにより怪人の五指で腹を掴まれていた。突き刺さる指先からは血が滲み出ている。痛いと叫ぶは、あの平和の象徴。強かにチャンスを起こした黒霧は死柄木に褒められる。意表を突くのは、奴の方が上手だった。
「目にも止まらぬ速度のあなたを拘束するのが脳無の役目。そして貴方の身体が半端にとどまった状態でゲートを閉じ、引きちぎるのが私の役目」
「このっ!」
「待てよ少年。お前の相手は俺だろ」
死柄木が俺の前に立ち道を塞がれた。甘かった。周到な奇襲をかけてきたぐらいの連中なら、俺達の裏をかいていてもおかしくなかった。生徒と同じように俺も心のどこかで平和の象徴は必ず勝つと慢心していたのだ。憎くて堪らないが、それだけの実力がある奴に甘えていた。ワープを解除させるには黒霧へ攻撃しなければ、奴を殺す目的が失われる。希望を持った生徒たちの目の前で、平和の象徴が失われる。
消失は、死を意味する。
「退け死柄……」
「どっけ邪魔だデク!!」
焦燥を取っ払う爆発音が唸る。視線を移した先にはもじゃもじゃと爆発男、少し離れた場所から紅白男。そして俺たちへ駆け込んでくる赤髪。
「だあー!!」
「……ッ」
「くっそ!いいとこねー!」
集結した面々は対人演習で攻撃力に長けた奴ら。俺の心配をした赤髪に腕を引かれ死柄木と距離が開く。むっと口を尖らせた。
「大丈夫か、高頭!」
「触るな!余計なことするなら退け!」
「何だその言いぐさは!」
ぎゃんぎゃん騒ぐ俺たちを無視して紅白の男は「平和の象徴はテメェ等ごときに殺れねえよ」と暴言を吐く。氷結で力の弱まった怪人から逃れた奴は傷口を抑えて死柄木に向かい合う。死柄木は爆発男に抑えられた死柄木を見て落胆した。
「出入口を抑えられた。こりゃあピンチだなあ…」
その声音は俺達に掴まる覚悟を含んでいない。どうにかして逃亡を図ろうとしている。そうなれば、遠方の入口ではなく、爆発男が確保した黒霧だ。地から足を離す。
「脳無。爆発小僧をやっつけろ。出入口の奪還だ」
赤髪の腕を振り払い、黒霧の下へ走った。その間に怪人は氷結で崩れた部分を超再生という個性で復元させていく。なんつう便利な個性だ。羨ましいなくそ。俺は爆発男に回避を促した。
「邪魔だ退け!」
「あぁ!?テメェやんのか!」
こういうタイプはいうことを聞かない。目で見て納得させる方法が有望だが、それは俺が死ぬ。あの怪人のパワーは奴並で俺の個性では抑えられる限度がある。無理やり蹴とばした方が早い。爆発男を突き飛ばした瞬間、こちらにやって来る怪人の拳が防御した腕に喰い込んだ。
「ぐうッ」
あまりの衝撃に体が吹っ飛んで行く。すると俺を後ろから包むような温もりを感じ目を見開く。ズズズと摩擦で靴底がすり減り立ち度止まった。
「無茶をするな、少年!」
劇画チックな顔面を見上げ、全身に怒りの熱が込みあがる。
「触、……ッ!!!!」
腕を引きはがそうとしたとき、怪人に受けた腕から激痛が走る。怪人の拳が触れるたった一瞬、俺は油断した。それだけで重症を負わせるなんて。滅多に怪我をしない腕を庇うように片方の拳を振るった。
「君は十分闘ってくれた。さあ、皆と一緒に逃げなさい!」
「指図すんな!余裕ないくせに強がってんなよ!」
「この場を喰止めるために強がるさ、何故って?」
奴は俺を横切りいつもの口調で言った。
「平和の象徴だからだ」
「……」
ああ。だから俺はお前が嫌いだ。自分が平和の象徴であることを振りかざして、何でもできるかのように振る舞って、救えなかった人間を無視して、そこに立つお前が。
「……くそ」
大嫌いなんだ。
オールマイトの連続パンチにて怪人脳無はUSJの外へ吹っ飛ばされた。これがトップ。親父の上にいるトップヒーローなんだと見せられ震えた。更に向こうへと叫んで疲弊してもおかしくない状況でトップは笑う。
全盛期なら5発で済んだ。衰えた今は300発以上も撃ってしまった。
俺のサポートでやられそうになっていたオールマイトは依然平和の象徴としてそこに君臨している。あれが、親父が越せない壁なのだとう痛感した。動揺する敵はオールマイトに気圧され逃亡か戦闘かを迫られる。奴らの視界に俺たちは入っていない。ここにいればオールマイトの戦闘の邪魔になりかねない。
「俺たちの出る幕じゃねえみたいだな…」
俺の意見に賛同する切島が緑谷を説得しようとするが、奴の目線はオールマイトに向かったまま。それもどうでもよかった。
「さあどうした!?」
オールマイトの煽りが聞こえる。それを背に俺たちは出入口へ向かった。いや、待て。あいつは?
振り返った土煙では変わりずらいが、確かにそこに存在している。
入学してオールマイトの授業で喧嘩を売った奴。奴の戦闘を始めて黙視して経験値が高いことが知れた。俺達より先に、プロの世界を知っているような勘の良さに納得がいく。爆豪に匹敵する戦闘センスは輝いているが、粗暴な態度とオールマイトを嫌悪する光景は俺達がヒーローを目指す理由とは違うのだと示していた。
オールマイトを憧れるヒーローは多くいるが、憎むヒーローはいない。敵側の考え方の奴に頷けないのは事実だが、時折見せるあの……。土煙にシルエットが浮かんだ。
「高頭…」
オールマイトが敵を倒すなら、俺たち生徒は避難を優先すべき。賢い奴だと思っていたが、そうでもないのか?揺れる煙から微かに見える腕の動きをじっと見た。
「どうした、轟」
「高頭がいる」
「はあ!?アイツまだあんなところに!おーい高頭!」
切島の良心は高頭を呼びかけるが、応答はなかった。爆豪も同様に振り向く。影が動いた。丸い頭部を腕でこすりつける動作のように見える。
「泣いてる?」
「……」
オールマイトに救われることが屈辱なのか。何もできない歯がゆさなのか。理由は不明だが、何度も涙を拭っているようにしか見えない。以前、爆豪が教室で泣き虫野郎と言っていた。案外涙もろい奴だったのか。俺達が高頭に注目している間、緑谷はオールマイトから目を離すことはなかった。
「……」
「緑谷」
オールマイトと主犯格たちはまだ闘うようだ。緑谷はブツブツ何かを呟き冷や汗を流す。あのオールマイトを心配しているっていうのか。
「……」
お前がオールマイトのお気に入りだからか?緑谷。お前に恨みはないが、そういうことなら俺はお前を見逃すわけにはいかない。
親父を完全否定するために、右側のみで俺はトップになる。
「な、緑谷!?」
思念にふせる俺の目の前から姿を消した緑谷は、オールマイトのもとへ飛んでいた。蛙吹が言っていた言葉を思い出す。緑谷とオールマイトの個性は似ている。個性が類似あるいは同等になる場合は遺伝がほとんどだ。なあ、緑谷。お前、オールマイトの隠し子なのか?
俺が緑谷に視線を移している間に、高頭の影は獣へと変化していた。
「ガルルル……」
180811