狐の足跡②
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ゼリーの空をゴミ箱に放り込み観覧席に到着した頃には、麗日と爆豪がステージ上に立っていた。
「おー高頭おつかれー。一次予選おめ!」
「……!」
真っ先に声を駆けた瀬呂の隣に上鳴の頭部があった。高頭が目を逸らし、罰悪そうにするのですかさずフォローを入れる。
「気にすんなよ高頭。どう見たってありゃあ、上鳴が油断したせいだ」
瀬呂の発現にクラスがクスクス笑っている。揶揄ではなく、単純に分析した結果、上鳴に非があったと呟いていた。何だこいつら。唖然とする高頭にビシッと指さす上鳴が立ち上がる。
「くっそ悔しいから止めてくれよ!いいか高頭!」
「お、おう」
「次はぜってー勝つからな!覚悟しとけ!」
「……」
恐れていたものは、なかった。A組のみんなは上鳴のリベンジを心待ちにしている者や、高頭の勝利を願う者の双方に別れる。誰も、何かを、否定するわけでもなく、無関心になるわけでもない。
「……」
「高頭ちゃん?」
蛙吹が呼びかけ耳がぴくりと動く。
ああどうして、お前達は違うんだろうな。もっと早く出会っていれば、俺もここまで…。
今までを思い出して幼い自分に彼等がいればと仮定した話で考えてみれば、少し笑えた。震える唇を浮かせる。
「次も、俺が勝つ」
「いや敗けねぇし!」
上鳴と高頭のやり取りを微笑ましく眺める面々。
受けて立つ奴なんていなかった。俺を遠ざけて逃げていって拒絶していった。だから人間が嫌いになって、恨むようにもなった。
けれど彼らは違う。誰もが目指す場所が同じで、ひた走って、その姿はとても輝かしい。眩しくて目を細めた先にいる彼等を、どうして嫌いになれようか。
「え!?」
「わ、」
「高頭、おま」
「え?」
人の顔を見るなり仰天している。なんだ、急に。首を傾げとりあえず麗日の晴れ舞台を拝見するべく上鳴の隣に腰を下ろした。
「なに、お前、俺に懐いた?」
「調子にのるな」
「デレ期短ぇ!さっき笑ってたじゃんか!」
「俺が?」
「そう!」
ああ、と納得する。俺は笑っていたのか。仏頂面で過ごして来たから珍しいものを見る彼等がおかしくなった。
「俺だって嬉しいときは笑う」
「……お前に人の心があったのか」
「テメェぶっ飛ばすぞ」
青筋を立てた俺は拳を握って見せつけた。上鳴は「殺す」から「ぶっ飛ばす」に降格していると感動しぱあと表情を明るくさせる。彼の性格上、爆豪ほどおっかないと感じる高頭は威嚇する子猫のように愛らしいと思ってしまうのだ。気分を良くした上鳴は高頭の首に腕を回す。
「熱い!」
「お前実は照れ屋だろ!可愛い奴め!」
「はあ!?誰が照れ屋だ!もう一回アホにしてやろうか!」
「はいはい強がりすんなってー」
「おいそろそろ始まるぞ」
上鳴がますます調子に乗ってきて瀬呂が上鳴の肩を引く。もうその辺にしておけとクラスの視線を感じた上鳴はそっと手を離した。乱れた服から覗くネックレスのチェーンに目がいき、ロケットの中には彼女の写真でもあるのか問いかけようと視線を落とす。
「え」
「っち見んな」
「あ、ハイ」
本当に照れていた。赤くなり困ったように眉を下げていた。この瞬間、上鳴の心臓は鷲掴みにされたように速い脈打ちへと変わる。麗日と爆豪戦が始まる合図がなったとき、高頭が女だったら脈ありだったのにと密かに思う上鳴であった。
爆豪という男は女子にも容赦がない。そんな声がプロたちから聞こえ、ほとほと呆れる。
「これだから世の中己惚れる奴が多いんだ」
「なに?何の話?」
麗日の個性は対象に触れなければ発動しない。条件を満たすためにはセンスの塊である爆豪と近接を挑むほか方法がないとみる。正直いって機動力に欠ける麗日は、爆豪の疲労を待つか個性の限界を越えさせるかしか自力で”道”を作り出せない。
「お茶子ちゃん」
「うち見てらんない」
目を覆う耳郎の手に尻尾を触れさせた。くすぐったさに耳郎が顔を上げる。
「見てやれよ、麗日の雄姿」
只管攻撃を仕掛け続ける麗日に爆発で凌ぐ爆豪にブーイングが飛ぶ。思わず盛大な舌打ちをした高頭は隣の上鳴を怯えさせた。
「何なのよさっきから」
「麗日を可哀想だと言うヒーロー気どり共の喉潰したい」
「こっわ!お前がいうと冗談に聞こえねぇから!」
「麗日が”弱い奴”って言われてるみたいでムカツクんだ」
相澤の説教も終わり、やっと気づいたプロたちは揃いも揃って上空を見上げる。そこには麗日の策があった。視点を落とし続けた理由をやっと気づいたプロたちは己の見る目の無さに落胆するといい。
「ヒーローは心が強い奴がなるもんだ」
麗日が蓄えた武器を流星群の如く落下させる。勢いのついた瓦礫は爆豪や麗日目掛けて走る。爆豪は避けると予想した捨て身策だろうが、悲しいことに、爆豪には通用しなかった。最大火力での爆発で瓦礫どころか麗日自身が飛ばされる。観覧席にまで風圧がくるのだ。間近となれば場外へ飛ばされてもおかしくない。何とか踏みとどまっている麗日は絶望の目で爆豪を睨む。
再び立ち上がりニヤつく爆豪に立ち向かおうとするが、個性の上限に達した彼女は自力で立つことすらままならなくなってしまっていた。
「……」
今回は、相手が悪かった。なんて言わない。全力で闘ったヒーローの卵を称えないで、何が人を救うだだの言えるのか。
いつかきっと、麗日がちゃんとプロとして立つその姿を拝んでやる。あいつを悪く言う者がいるなら、今度こそ喉を…。冷ややかな目をする友人を気にして上鳴が声をかけた。
「高頭」
「!」
「麗日敗けて悔しいのは分かるけど、顔怖ぇよ」
「……分かってる」
プロは厳しい世界にいると痛感した子どもたちは、勝者も敗者も称えようと心に決めた。
そして、第二回戦の頭は緑谷と轟。しばしの休憩時間の間に爆豪が戻って来た。ポケットに手を入れ柄の悪い人相は相変わらずだが、不機嫌なのか口をとがらせている。
瀬呂が声をかけ、蛙吹が悪役をかっていたことを告げるとうるせえと怒声をあげる。耳郎の隣へドカリと座った爆豪はぼそっと囁いた。
「どこがか弱ぇんだよ」
「おー高頭おつかれー。一次予選おめ!」
「……!」
真っ先に声を駆けた瀬呂の隣に上鳴の頭部があった。高頭が目を逸らし、罰悪そうにするのですかさずフォローを入れる。
「気にすんなよ高頭。どう見たってありゃあ、上鳴が油断したせいだ」
瀬呂の発現にクラスがクスクス笑っている。揶揄ではなく、単純に分析した結果、上鳴に非があったと呟いていた。何だこいつら。唖然とする高頭にビシッと指さす上鳴が立ち上がる。
「くっそ悔しいから止めてくれよ!いいか高頭!」
「お、おう」
「次はぜってー勝つからな!覚悟しとけ!」
「……」
恐れていたものは、なかった。A組のみんなは上鳴のリベンジを心待ちにしている者や、高頭の勝利を願う者の双方に別れる。誰も、何かを、否定するわけでもなく、無関心になるわけでもない。
「……」
「高頭ちゃん?」
蛙吹が呼びかけ耳がぴくりと動く。
ああどうして、お前達は違うんだろうな。もっと早く出会っていれば、俺もここまで…。
今までを思い出して幼い自分に彼等がいればと仮定した話で考えてみれば、少し笑えた。震える唇を浮かせる。
「次も、俺が勝つ」
「いや敗けねぇし!」
上鳴と高頭のやり取りを微笑ましく眺める面々。
受けて立つ奴なんていなかった。俺を遠ざけて逃げていって拒絶していった。だから人間が嫌いになって、恨むようにもなった。
けれど彼らは違う。誰もが目指す場所が同じで、ひた走って、その姿はとても輝かしい。眩しくて目を細めた先にいる彼等を、どうして嫌いになれようか。
「え!?」
「わ、」
「高頭、おま」
「え?」
人の顔を見るなり仰天している。なんだ、急に。首を傾げとりあえず麗日の晴れ舞台を拝見するべく上鳴の隣に腰を下ろした。
「なに、お前、俺に懐いた?」
「調子にのるな」
「デレ期短ぇ!さっき笑ってたじゃんか!」
「俺が?」
「そう!」
ああ、と納得する。俺は笑っていたのか。仏頂面で過ごして来たから珍しいものを見る彼等がおかしくなった。
「俺だって嬉しいときは笑う」
「……お前に人の心があったのか」
「テメェぶっ飛ばすぞ」
青筋を立てた俺は拳を握って見せつけた。上鳴は「殺す」から「ぶっ飛ばす」に降格していると感動しぱあと表情を明るくさせる。彼の性格上、爆豪ほどおっかないと感じる高頭は威嚇する子猫のように愛らしいと思ってしまうのだ。気分を良くした上鳴は高頭の首に腕を回す。
「熱い!」
「お前実は照れ屋だろ!可愛い奴め!」
「はあ!?誰が照れ屋だ!もう一回アホにしてやろうか!」
「はいはい強がりすんなってー」
「おいそろそろ始まるぞ」
上鳴がますます調子に乗ってきて瀬呂が上鳴の肩を引く。もうその辺にしておけとクラスの視線を感じた上鳴はそっと手を離した。乱れた服から覗くネックレスのチェーンに目がいき、ロケットの中には彼女の写真でもあるのか問いかけようと視線を落とす。
「え」
「っち見んな」
「あ、ハイ」
本当に照れていた。赤くなり困ったように眉を下げていた。この瞬間、上鳴の心臓は鷲掴みにされたように速い脈打ちへと変わる。麗日と爆豪戦が始まる合図がなったとき、高頭が女だったら脈ありだったのにと密かに思う上鳴であった。
爆豪という男は女子にも容赦がない。そんな声がプロたちから聞こえ、ほとほと呆れる。
「これだから世の中己惚れる奴が多いんだ」
「なに?何の話?」
麗日の個性は対象に触れなければ発動しない。条件を満たすためにはセンスの塊である爆豪と近接を挑むほか方法がないとみる。正直いって機動力に欠ける麗日は、爆豪の疲労を待つか個性の限界を越えさせるかしか自力で”道”を作り出せない。
「お茶子ちゃん」
「うち見てらんない」
目を覆う耳郎の手に尻尾を触れさせた。くすぐったさに耳郎が顔を上げる。
「見てやれよ、麗日の雄姿」
只管攻撃を仕掛け続ける麗日に爆発で凌ぐ爆豪にブーイングが飛ぶ。思わず盛大な舌打ちをした高頭は隣の上鳴を怯えさせた。
「何なのよさっきから」
「麗日を可哀想だと言うヒーロー気どり共の喉潰したい」
「こっわ!お前がいうと冗談に聞こえねぇから!」
「麗日が”弱い奴”って言われてるみたいでムカツクんだ」
相澤の説教も終わり、やっと気づいたプロたちは揃いも揃って上空を見上げる。そこには麗日の策があった。視点を落とし続けた理由をやっと気づいたプロたちは己の見る目の無さに落胆するといい。
「ヒーローは心が強い奴がなるもんだ」
麗日が蓄えた武器を流星群の如く落下させる。勢いのついた瓦礫は爆豪や麗日目掛けて走る。爆豪は避けると予想した捨て身策だろうが、悲しいことに、爆豪には通用しなかった。最大火力での爆発で瓦礫どころか麗日自身が飛ばされる。観覧席にまで風圧がくるのだ。間近となれば場外へ飛ばされてもおかしくない。何とか踏みとどまっている麗日は絶望の目で爆豪を睨む。
再び立ち上がりニヤつく爆豪に立ち向かおうとするが、個性の上限に達した彼女は自力で立つことすらままならなくなってしまっていた。
「……」
今回は、相手が悪かった。なんて言わない。全力で闘ったヒーローの卵を称えないで、何が人を救うだだの言えるのか。
いつかきっと、麗日がちゃんとプロとして立つその姿を拝んでやる。あいつを悪く言う者がいるなら、今度こそ喉を…。冷ややかな目をする友人を気にして上鳴が声をかけた。
「高頭」
「!」
「麗日敗けて悔しいのは分かるけど、顔怖ぇよ」
「……分かってる」
プロは厳しい世界にいると痛感した子どもたちは、勝者も敗者も称えようと心に決めた。
そして、第二回戦の頭は緑谷と轟。しばしの休憩時間の間に爆豪が戻って来た。ポケットに手を入れ柄の悪い人相は相変わらずだが、不機嫌なのか口をとがらせている。
瀬呂が声をかけ、蛙吹が悪役をかっていたことを告げるとうるせえと怒声をあげる。耳郎の隣へドカリと座った爆豪はぼそっと囁いた。
「どこがか弱ぇんだよ」
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