狐の足跡②
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騎馬戦終了後、昼休みの時間を過ごした生徒たちは最終種目やレクリエーションの概要を聞くために会場へ赴く。騎馬戦で悔しい思いをした爆豪は、轟の家事情を盗み聞いてから大人しくなる。一方、クラスでのキレキャラであるもう一人は尻尾の毛を逆立ててガルルルと喉を鳴らしていた。昼休み中ずっと探していた切島が言う。
「高頭、お前昼飯食ったか?」
「食べてない!」
「どこにいたんだよ」
「むしゃくしゃして外走ってた!」
「元気か」
高頭の怒りは気を許した心操が原因である。当の本人はというと、視線に気づいて目が合った途端に舌を出して挑発する。カチン。高頭の緩い堪忍袋の緒が切れた。
「ブッ殺す!!!!」
「待て待て!体育祭中だぞ!」
「知るか!!」
「静かにしなさい!!」
騒ぐ高頭を叱ったのはミッドナイトだった。生徒全員が集まったことを確認し終えた彼女は最終種目の説明を行う。最終種目は総員16名によるトーナメントガチバトル。一対一の真剣勝負だ。切島に抱えられた高頭はぶら下がったままくじを引くのを待つ。心操との対戦して鬱憤を晴らそうと試みる高頭の前で尾白が手を挙げた。
「あの、すみません。俺、辞退します」
頭上から間抜けな「え」が聞こえた。高頭もぽかんと空いた口が塞がらない。尾白は騎馬戦の記憶がないことで自分の力で闘っていないと理解していた。全員が一位を狙い競っている中、自分はわけのわからないまま本戦で闘うことが許せない。彼の誠実さが裏目に出て、折角のチャンスを投げ出した。
「……」
「なんだ、男らしいな!」
男気を好む切島は感涙している。本人が嫌だというのだから、誰も止める権利はない。主審であるミッドナイトが許可しなければその申し出も受け入れられない。ドクンドクン鳴る心臓。脈打ちが何度目かで、ミッドナイトが采配を下す。
青臭くて好き。そんな理由で尾白の辞退は成立した。
最終種目に参加する者はレクリエーションへの参加は自由だった。緑谷が尾白から心操の話を聞いて青ざめたり、一人孤独に集中力を高める爆豪や轟、気を紛らわせる麗日たちのように過ごし方は様々だった。レクリエーションで盛り上がる会場の離れの木で休んでいた常闇は、下から聞こえるすすり泣きに目を覚ます。そこまで地上から高くない幹に背をこすりつけながら座り込んだ頭に、はあとため息をつく。
「罪悪感か?高頭」
「ッ!」
高頭と常闇は会話すら皆無だった。それでも常闇が注目を置く一人のクラスメイトである高頭を放っておくわけにもいかない。切島や芦戸のように、彼が気になってしまうからだ。突然降って来た声に驚いて泣き面を晒した高頭は鼻水をずびっとすする。まるで幼子のような泣き様に、ますます手を差し伸べてやりたくなる。
「尾白が気になるなら直接問いかけろ」
「うるさい!」
「そうやってメソメソ泣いても解決しないぞ。己を自粛し気を病んではこれからの試合で」
「お前に関係ないだろ!」
「……」
関係ない、ねえ。突き放された言葉に珍しく心を痛めた常闇は、地面に降り立ち、余り変わらない身長の高頭と目を合わせた。
「ッ」
「……」
鼻も目元も赤く染め、まだ溢れでる涙がほろっと足元の草を弾いた。虚勢を張る子どものようだ。誰かが傍にいなければ一瞬で壊れてしまいそう。ひび割れたガラスコップをそっと運ぶようなやさしさで、高頭を諭す。
「高頭、俺はお前に期待しているんだ」
「?」
恐らくこれはクラスの奴らも思っていること。
「USJで主犯格と一戦交えたと聞いた。俺たちも有象無象の相手はしたが、死柄木という主犯は一筋縄ではいかなかったのだろう?」
常闇の質問に応えずひくひくべそをかく。まだ伝わっていないのだな。常闇は気恥ずかしさを捨てて、真っ向から思いをぶつけてみようと思った。
「オールマイトに決闘を仕込むその度胸、俺は案外気にいってる」
「……へ」
「だから強気に戻れ。今のお前では闘争心に火が付かん」
休憩を終えた黒影が出て涙をぬぐう。頬肉も一緒に飛んでいってしまいそうな乱暴さに黒影を叱った。今度は赤子を撫でるような手つきへ変わる。混沌とした表情で見つめる高頭は惚けて項垂れた。泣き疲れたか?常闇の心配より先に囁いた。
「……怒ってないかな」
「……」
彼が気にするのは、尾白のことだ。始めて心を許した尾白と決別したら、高頭は次こそ誰とも口を聞かなくなる予感がする。嘘でもいい。今の奴を慰められるなら、虚言を吐いてやる。
「心の狭い奴ではないだろう」
「……うん」
「信じてやれ。尾白がお前に信頼を置くように」
「うん」
再び溢れた一滴が地面を濡らした。今度は自分で拭い、ばっと顔を上げる。凛々しく逞しいヒーローの顔だ。しかし再び眉を下げる。
「……」
「どうした?」
白く骨ばった指が常闇の服を掴んだ。黒影と同時に仰天していると、高頭はか細くおねだりした。
「……一緒に、尾白のとこに」
「っ」
皆まで言わなくても、付いて来てほしいことは理解できた。しかし、高頭は壁を無くすと人が変わったように甘えてくるのだと思い知らされた。思わずきゅんときた常闇は黒影と目を見合わせて呆れ半分、仕方なさ半分で頷いた。
「分かった」
「っ!」
ぱあと明るい表情へと変わった。尻尾を振りキラキラした目で見上げる高頭に、またきゅんとした。
尾白と和解し試合会場へ向かう。第一試合は心操と緑谷。個性を隠して来た二人の対決は高頭の興味をそそるものがあった。尾白が腰を据えると当然高頭が隣にくる習慣がついたせいか前列に行く高頭を見て呆れたように笑う。結局、彼は緑谷が気になっているだけで、毛嫌いしているのではないと知った。
「おう高頭、隣座るか?」
「……」
手招きするは初戦で敵となる上鳴。第一試合で当たる相手に陽気な笑顔を見せる彼を凝視して固まった。よかったら、という気だった上鳴は硬直した高頭を見て困らせたかと表情が曇った。
「いやならいーぜ」
ピコンと耳が直立する。
「いやなんて言ってない」
「あ、そう」
上鳴と並んでステージを見下ろす。セメントスによる広範囲のステージに集結した生徒は両者睨み合う。少し自信がついた上鳴は高頭に投げかけた。
「なあ高頭、どっちが勝つと思う?」
「心操」
「即答かよ!緑谷応援してやれよクラスメイトとして!」
「慣れ合いはしない」
「あ……」
控室での緑谷と高頭の険悪な雰囲気が蘇り地雷を踏んだと反省する。しょんぼり口を尖らせる上鳴の手前、高頭は心操に一票を投じる。緑谷の個性は未だ明かされていないが、心操の『洗脳』は会話一つで相手の自由を奪う。対人で最も有効活用できるといっても過言ではないほど強力で厄介である。恐らく尾白から心操の情報を得ている緑谷は彼と会話をすることを拒むだろう。なにせ、見物だ。
プレゼントマイクの試合開始の合図の前に、心操が緑谷にけしかける。
「強く思う”将来”があるなら形振り構ってちゃダメなんだ……」
余裕がないわけじゃない。それだけ必死に掴み取ろうとする心操の本音だ。ヒーロー科と普通科ではヒーローへの道に速く辿りつく方なんて、一目瞭然。心操は己の個性の不自由さに憂い、先を越される焦燥に葛藤しているんだ。
「あの猿はプライドがどうとか言ってたけど、」
あ?
プレゼントマイクの合図が響く。
「チャンスをドブに捨てるなんてバカだと思わないか?」
声圧に押され他の奴には届かない声も、個性を使った高頭にははっきりと聞こえた。尾白を揶揄する心操の挑発に、緑谷だけでなく高頭まで乗ってしまう。簡単に洗脳された緑谷が完全停止する。
「あんの野郎、後で殴る!」
「なに、急にどうしたお前」
拳を握った俺は後方を気にせず立ち上がった。ざわつく会場内でカラクリを知る尾白と高頭は緑谷の敗北を想像した。尾白は残念がり、高頭は心底興味なさげだ。ただ、尾白をバカにした発言に怒り被るのみ。皺をよせ睨む心操が呟く。
「おまえは、恵まれてて良いよなぁ。緑谷出久」
高頭の怒りの炎がしゅるしゅる音を立てて鎮まる。また上鳴が動揺するが、呆然とした横顔につい見とれた。
「……」
あ、真剣だ。高頭の集中は会場へ向けられている。
「分かんないだろうけど、こんな個性でも夢見ちゃうんだ。さぁ、負けてくれ」
高頭は大人しく座った。
個性なんて関係ないのに。強い志を持つ者が英雄になれるのに。力ばかりに気を取られて大事な本質を見失った世の中に嫌気がさす。ぐっと服を掴んだ。今この試合を楽しみに見ている病室のあの子に、心操の声が届けばなんて励ますのだろう。
「……」
俺にはできないよ。掴んだ服を離ししわをつくった。
高頭が俯く間、緑谷がゆっくり場外へ歩いて行く。すると、突然の風圧に緑谷の洗脳が解けた。
「!」
目を見開く。奴は心操の洗脳の解除方法を事前に知っていた。尾白から聞いたのか。だとしても洗脳に抗うことはできない。俺はできなかった。しかし、緑谷はできた。
オールマイトのお気に入り。だけじゃない。緑谷の持つ何かが心操の個性に打ち勝った。
「……す」
称賛の言葉は風にのり流れて行った。
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「高頭、お前昼飯食ったか?」
「食べてない!」
「どこにいたんだよ」
「むしゃくしゃして外走ってた!」
「元気か」
高頭の怒りは気を許した心操が原因である。当の本人はというと、視線に気づいて目が合った途端に舌を出して挑発する。カチン。高頭の緩い堪忍袋の緒が切れた。
「ブッ殺す!!!!」
「待て待て!体育祭中だぞ!」
「知るか!!」
「静かにしなさい!!」
騒ぐ高頭を叱ったのはミッドナイトだった。生徒全員が集まったことを確認し終えた彼女は最終種目の説明を行う。最終種目は総員16名によるトーナメントガチバトル。一対一の真剣勝負だ。切島に抱えられた高頭はぶら下がったままくじを引くのを待つ。心操との対戦して鬱憤を晴らそうと試みる高頭の前で尾白が手を挙げた。
「あの、すみません。俺、辞退します」
頭上から間抜けな「え」が聞こえた。高頭もぽかんと空いた口が塞がらない。尾白は騎馬戦の記憶がないことで自分の力で闘っていないと理解していた。全員が一位を狙い競っている中、自分はわけのわからないまま本戦で闘うことが許せない。彼の誠実さが裏目に出て、折角のチャンスを投げ出した。
「……」
「なんだ、男らしいな!」
男気を好む切島は感涙している。本人が嫌だというのだから、誰も止める権利はない。主審であるミッドナイトが許可しなければその申し出も受け入れられない。ドクンドクン鳴る心臓。脈打ちが何度目かで、ミッドナイトが采配を下す。
青臭くて好き。そんな理由で尾白の辞退は成立した。
最終種目に参加する者はレクリエーションへの参加は自由だった。緑谷が尾白から心操の話を聞いて青ざめたり、一人孤独に集中力を高める爆豪や轟、気を紛らわせる麗日たちのように過ごし方は様々だった。レクリエーションで盛り上がる会場の離れの木で休んでいた常闇は、下から聞こえるすすり泣きに目を覚ます。そこまで地上から高くない幹に背をこすりつけながら座り込んだ頭に、はあとため息をつく。
「罪悪感か?高頭」
「ッ!」
高頭と常闇は会話すら皆無だった。それでも常闇が注目を置く一人のクラスメイトである高頭を放っておくわけにもいかない。切島や芦戸のように、彼が気になってしまうからだ。突然降って来た声に驚いて泣き面を晒した高頭は鼻水をずびっとすする。まるで幼子のような泣き様に、ますます手を差し伸べてやりたくなる。
「尾白が気になるなら直接問いかけろ」
「うるさい!」
「そうやってメソメソ泣いても解決しないぞ。己を自粛し気を病んではこれからの試合で」
「お前に関係ないだろ!」
「……」
関係ない、ねえ。突き放された言葉に珍しく心を痛めた常闇は、地面に降り立ち、余り変わらない身長の高頭と目を合わせた。
「ッ」
「……」
鼻も目元も赤く染め、まだ溢れでる涙がほろっと足元の草を弾いた。虚勢を張る子どものようだ。誰かが傍にいなければ一瞬で壊れてしまいそう。ひび割れたガラスコップをそっと運ぶようなやさしさで、高頭を諭す。
「高頭、俺はお前に期待しているんだ」
「?」
恐らくこれはクラスの奴らも思っていること。
「USJで主犯格と一戦交えたと聞いた。俺たちも有象無象の相手はしたが、死柄木という主犯は一筋縄ではいかなかったのだろう?」
常闇の質問に応えずひくひくべそをかく。まだ伝わっていないのだな。常闇は気恥ずかしさを捨てて、真っ向から思いをぶつけてみようと思った。
「オールマイトに決闘を仕込むその度胸、俺は案外気にいってる」
「……へ」
「だから強気に戻れ。今のお前では闘争心に火が付かん」
休憩を終えた黒影が出て涙をぬぐう。頬肉も一緒に飛んでいってしまいそうな乱暴さに黒影を叱った。今度は赤子を撫でるような手つきへ変わる。混沌とした表情で見つめる高頭は惚けて項垂れた。泣き疲れたか?常闇の心配より先に囁いた。
「……怒ってないかな」
「……」
彼が気にするのは、尾白のことだ。始めて心を許した尾白と決別したら、高頭は次こそ誰とも口を聞かなくなる予感がする。嘘でもいい。今の奴を慰められるなら、虚言を吐いてやる。
「心の狭い奴ではないだろう」
「……うん」
「信じてやれ。尾白がお前に信頼を置くように」
「うん」
再び溢れた一滴が地面を濡らした。今度は自分で拭い、ばっと顔を上げる。凛々しく逞しいヒーローの顔だ。しかし再び眉を下げる。
「……」
「どうした?」
白く骨ばった指が常闇の服を掴んだ。黒影と同時に仰天していると、高頭はか細くおねだりした。
「……一緒に、尾白のとこに」
「っ」
皆まで言わなくても、付いて来てほしいことは理解できた。しかし、高頭は壁を無くすと人が変わったように甘えてくるのだと思い知らされた。思わずきゅんときた常闇は黒影と目を見合わせて呆れ半分、仕方なさ半分で頷いた。
「分かった」
「っ!」
ぱあと明るい表情へと変わった。尻尾を振りキラキラした目で見上げる高頭に、またきゅんとした。
尾白と和解し試合会場へ向かう。第一試合は心操と緑谷。個性を隠して来た二人の対決は高頭の興味をそそるものがあった。尾白が腰を据えると当然高頭が隣にくる習慣がついたせいか前列に行く高頭を見て呆れたように笑う。結局、彼は緑谷が気になっているだけで、毛嫌いしているのではないと知った。
「おう高頭、隣座るか?」
「……」
手招きするは初戦で敵となる上鳴。第一試合で当たる相手に陽気な笑顔を見せる彼を凝視して固まった。よかったら、という気だった上鳴は硬直した高頭を見て困らせたかと表情が曇った。
「いやならいーぜ」
ピコンと耳が直立する。
「いやなんて言ってない」
「あ、そう」
上鳴と並んでステージを見下ろす。セメントスによる広範囲のステージに集結した生徒は両者睨み合う。少し自信がついた上鳴は高頭に投げかけた。
「なあ高頭、どっちが勝つと思う?」
「心操」
「即答かよ!緑谷応援してやれよクラスメイトとして!」
「慣れ合いはしない」
「あ……」
控室での緑谷と高頭の険悪な雰囲気が蘇り地雷を踏んだと反省する。しょんぼり口を尖らせる上鳴の手前、高頭は心操に一票を投じる。緑谷の個性は未だ明かされていないが、心操の『洗脳』は会話一つで相手の自由を奪う。対人で最も有効活用できるといっても過言ではないほど強力で厄介である。恐らく尾白から心操の情報を得ている緑谷は彼と会話をすることを拒むだろう。なにせ、見物だ。
プレゼントマイクの試合開始の合図の前に、心操が緑谷にけしかける。
「強く思う”将来”があるなら形振り構ってちゃダメなんだ……」
余裕がないわけじゃない。それだけ必死に掴み取ろうとする心操の本音だ。ヒーロー科と普通科ではヒーローへの道に速く辿りつく方なんて、一目瞭然。心操は己の個性の不自由さに憂い、先を越される焦燥に葛藤しているんだ。
「あの猿はプライドがどうとか言ってたけど、」
あ?
プレゼントマイクの合図が響く。
「チャンスをドブに捨てるなんてバカだと思わないか?」
声圧に押され他の奴には届かない声も、個性を使った高頭にははっきりと聞こえた。尾白を揶揄する心操の挑発に、緑谷だけでなく高頭まで乗ってしまう。簡単に洗脳された緑谷が完全停止する。
「あんの野郎、後で殴る!」
「なに、急にどうしたお前」
拳を握った俺は後方を気にせず立ち上がった。ざわつく会場内でカラクリを知る尾白と高頭は緑谷の敗北を想像した。尾白は残念がり、高頭は心底興味なさげだ。ただ、尾白をバカにした発言に怒り被るのみ。皺をよせ睨む心操が呟く。
「おまえは、恵まれてて良いよなぁ。緑谷出久」
高頭の怒りの炎がしゅるしゅる音を立てて鎮まる。また上鳴が動揺するが、呆然とした横顔につい見とれた。
「……」
あ、真剣だ。高頭の集中は会場へ向けられている。
「分かんないだろうけど、こんな個性でも夢見ちゃうんだ。さぁ、負けてくれ」
高頭は大人しく座った。
個性なんて関係ないのに。強い志を持つ者が英雄になれるのに。力ばかりに気を取られて大事な本質を見失った世の中に嫌気がさす。ぐっと服を掴んだ。今この試合を楽しみに見ている病室のあの子に、心操の声が届けばなんて励ますのだろう。
「……」
俺にはできないよ。掴んだ服を離ししわをつくった。
高頭が俯く間、緑谷がゆっくり場外へ歩いて行く。すると、突然の風圧に緑谷の洗脳が解けた。
「!」
目を見開く。奴は心操の洗脳の解除方法を事前に知っていた。尾白から聞いたのか。だとしても洗脳に抗うことはできない。俺はできなかった。しかし、緑谷はできた。
オールマイトのお気に入り。だけじゃない。緑谷の持つ何かが心操の個性に打ち勝った。
「……す」
称賛の言葉は風にのり流れて行った。
180813