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「オラ、口開けろ」 小十郎さんが差し出すのは薄くチョコでコーティングされた棒状のお菓子である。 「な、なんですかそれ…」 「見りゃわかんだろ」 「いや、そりゃあ分かりますけど…」 私が聞いているのは彼が菓子を差し出すその意図であって、菓子の商品名でも味付けでもない。 じれたように舌打ちする小十郎さんに、私のこめかみの辺りを冷や汗が流れていった。 「あの、小十郎さ」 「食えって言ってる」 「!い、いだだだだ痛いです痛、痛い!無理に突っ込まんでください!」 がっちりと顎をホールドされ、唇にお菓子の先が突き立てられた。もう無理矢理突っ込む気満々である。 「は離してくださいいい」 「強情だな」 「どっちがですかぁああ」 小十郎さんの肩を全力で押しやるも彼が身を引くそぶりはない。しまいには大人しくしろ、と両手をいとも簡単に封じられてしまう。 むぐぅっと口をつぐみよそを向くことでなんとか口に含むことは回避してみるものの、それもそろそろ限界に近い。 (どうしちゃったんだ小十郎さん…!) いつになく大人気ない彼の姿に私の頭上ではクエスチョンマークが飛び交うばかりだ。 後少しで口に入る…! というところで、突然小十郎さんの動きが止まった。 はて?と私が戸惑うのと、部屋の襖がスパンッと小気味良い音を響かせ開かれたのはほぼ同時だった。 「は、早まんな小十郎っ…!」 「は…」 ………ん? 鬼気迫る表情で襖に手をかけ声を上げたのは、他ならぬクラスメイトの伊達政宗君その人だ。 私と小十郎さんを目に留め、次いで小十郎さんの手元の某有名なお菓子に気がつくと、彼の両目はみるみるうちに見開かれていった。 「●ッキー…?」 「政宗様………」 伊達君の呟きとかぶるように、隣からハァと重いため息が聞こえてきた。 「え、なにどういうこと」 「そういうことです」 「ああそうか、なんだ……………いやいやいやおかしいだろ!」 小十郎てめぇ、なまえのこと襲ってたんじゃねぇのかよ!と小十郎さんに詰め寄る伊達君。本人を目の前にしてデリカシーの欠片も持ち合わせちゃいない。 対する小十郎さんはというとまさに冷静そのもの。 その証拠に、 「襲う?こんな妙ちくりんなガキをですか?」 「小十郎さん私に全力で喧嘩売ってますよねそうですよね…!」 普段と全く変わらない毒舌で私を見事けちょんけちょんにしてくださったのでありました。(いつか絶対刺されるぞこの人!) ――さて、事の顛末はこうである。 11月11日本日早朝(AM 4:00)。片倉小十郎、今日が巷で噂のポッ●ーの日だと気がつく。厨房で朝食を作り終えた彼は、余った時間で手作りポ●キーを作り、日ごろの感謝を込めて伊達君にプレゼントしようと決意する。基礎となるプレッツェルはもちろんの事、コーティングのチョコからトッピングに至るまで、彼は何から何まで自分の手で選び抜き作り上げた。 そして先刻。ようやく試作品が完成した。一応自分でも食してみたものの、果たしてこれが成功なのかどうか分からずしばしの思案。のち、出来映えをみる為の実験台が必要だと思い至る。そして選ばれたのがわたしだった。 というわけで。 全く、本当に揃いも揃ってどうしようもない主従だとつくづく思う。一体全体人をなんだと思っているんだ。(特に小十郎さん!) 皿に盛られた香ばしく甘い匂いを放つお菓子に手を伸ばしつつ、私は小十郎さんと伊達君をじっとりと睨みつけてやった。 ぱくり 「…ん?あれ、普通に美味しいですよこれ…ってあだっ!」 「勝手に食ってんじゃねぇ それは政宗様の分だ」 「け、けち…!いいじゃないですかちょっとくらい…!」 「泣くなってなまえ。ほら、俺の分やるから。」 「伊達君んんんんん」 「………政宗様、あまりこいつを甘やかさないでください。すぐに調子に乗りますから。」 小十郎さんの流し目に伊達君の肩がビクリと揺れた。 ど、どうしたの伊達君!そんな、人の口に無理矢理ポッキ●突っ込むような人に負けちゃだめだよ!断じて! 「政宗様」 「お…おぉ…」 「っへーんだ、姑みたいにネチネチうるさい小十郎さんの言うことなんか聞かないですよ!ね、伊達君!」 「は?」 瞬間、もの凄い形相で伊達君がこちらを振り返る。私までびっくりして、思わず普段なら出さないような変な声を出してしまった。 おいバカ勘弁しろよっ…!なんて聞こえたような気もするけどたぶん私の気のせいだ。…たぶん。(ごめん伊達くん!巻き込んだ!) そんな伊達君の必死な形相も気になるが、それよか私としては、なにやらさっきから妙に黙りこくっている小十郎さんの方が気になって気になって仕方がなくて…… 「そうか姑か俺は…」 「え、あの、小十郎さーん…?」 「こんのクソガキ…」 「ギャッ…!助けて伊達君殺されるっ!!」 「!ちょっ引っ張んなバカ…!」 キレてた!小十郎さんめっちゃキレてた!! 慌てて伊達君にしがみつくとそのまま二人して、まるで何かのコントかのように勢い良く後方へと倒れ込んでしまった。 いくら下が畳だったとはいえ、痛いものは痛い。さらに言えば私の下敷きにされた伊達君はもっともっと痛そうだ。だ、大丈夫…?声をかけて顔をのぞき込むと、頭の後ろを押さえしばらく低い声で呻いていた伊達君の目が、私の姿を認めた途端突如としてカッと見開いた。 「バッ…!早くどけなまえ、俺が殺される…!」 「え?」 随分と必死な様子の伊達君に私が首を傾げるのと、背後から延びてきた小十郎さんの腕に思いきり頭を鷲掴みにされるのはほぼ同時だった。 11月11日 (Jesus!好きな子ほど苛めたいとかいうレベルじゃねぇぞアレは…!) 2011.11.19 ------------- だいぶ遅刻しましたが、ポッキーの日おめでとう! |
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