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例えば近い将来侍の世が終わりを告げるとしたらの話。彼の生き甲斐ともいえる人斬りが生業として成り立たなくなって、彼の存在は新たな日の本できっと異端なものとなる。手持ち無沙汰になった右手の刀の納め時が分からず途方に暮れる貴方を、出来ることなら私が一番近くで支えたい、なんて酔狂なことを言ったとしたら貴方は笑うだろうか。
「正気じゃないね。」
顔をしかめる彼は、長かった戦が漸く終わったことでどこか脱力しているように見えた。彼も人だ。
「私は、これからも大石さんの傍にいたいです。」
肩口で頬についた返り血を拭いつつ、何を見るでもなくぼんやりと遠くに視線を投げる彼は、こちらを見ることなく私の話を鼻で笑う。
「お前が?」
「ええ。」
「それ本気で言ってるの。」
「ええ。」
「…ふふっ」
「なぜ笑うんです?」
私の言葉に彼がゆっくりとこちらを振り返った。
「なぜじゃないよ、お前わざわざ自分から不幸になりにいくなんておかしいと思わないのかい。」
「不幸だなんて思っていません。それにわたし、大石さんの隣に立てるなら馬鹿だって不幸だって別に構わない。」
「…だからそれが馬鹿だって言ってるんだよ。お前、頭おかしいんじゃないの。」
「………」
…頼むから期待させないでくれない。
俯き、見えない何かに懸命に耐えるこの人がわたしはどうしようもなく愛しいと思う。人斬りだの性格破綻者だの散々言われてきた彼だけど、本当の彼はこんなにも人間くさい。目を凝らして見てみれば人並みの感情だって持っている。それを皆知らないだけなのだ。
「…新しい世の中をあなたと見ていきたいんです。生まれ変わった日の本を、貴方の傍で。出来ることならそんな時代でわたしが貴方を支えたいんです。もしそこに大石さんが欠けてしまったりなんかしたら、そっちのほうがよっぽど不幸ですよ。」
期待していいんです。どうか期待していてください。私が貴方を絶対に幸せにしてみせますから。
言ってしまえばわたしは、このどうしようもない男が好きなのだ。どうしようもなく。
2012.1.1
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男前鈴花ちゃん
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