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どんなに一生懸命勉強してもいつも成績は二番だった。どうしても一番がとれなかった。竹中君がいたから。竹中君は委員会に入っていていつも忙しそうにしている。勉強する時間なんかほとんどなさそうだし、見たところ塾にも通っていない。そのくせいつも成績は一番だった。
体育もそうだ。あれだけ化け物ぞろいのこの学校で、彼の50m走のタイムはいつもトップだった。たいていのスポーツはそつなくこなすし、ダーツだのビリヤードだの乗馬だのフェンシングだの、難しそうなスポーツなんかもさらっとやってのける。しかもかなり上手い。どんなに頑張ってもわたしには適わなかった。
極めつけはその容貌だ。いわゆる美形。中性的な顔立ちと長い手足、細身の体に陶器のように白い肌。これでもてないはずがない。もちろんわたしなんか彼の足元にも及ばない。
彼はすごいと思う。尊敬もする。だけど同時にどうしようもなく疎ましいとも思う。好きか嫌いかと聞かれたら、嫌いの部類に入る。
「君は僕を完璧だ完璧だと言うけれど、完璧な人間なんてこの世にはいないよ。」
「…ねぇ竹中君、鏡って見たことある?」
「鏡はあくまでその人の外見しか映さないだろう。内面までは把握できない。僕が完璧かどうかなんて、人によって評価が変わるよ。」
竹中君のように理論的に考えるのは苦手だ。さらに言うなら竹中君も苦手だ。
席を立とうとすると背中から追いかけるように彼の声がかかる。
「ねぇ、僕は完璧な人間なんかじゃないよ。」
「どうだか。」
「その証拠に好きな女の子一人振り向かせられない。」
竹中くんの方を振り返ると、意志の強い藤色の瞳でじっと見つめ返される。
「完璧だと君は言うけれど、そういう僕ではダメなんだ。どうしたら彼女に振り向いてもらえるかっていつも考えているよ。」
「……ふうん。」
竹中君みたいな人でも、悩むことはあるんだな。ちょっと、反省。
2012.5.21
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