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※『春恋し』の裏話
こじゅとなかなか会えなくて、なんだか寂しいなあと思ってた。雪遊びも飽きちゃったし、お城で飼ってるわんちゃんたちはぐうぐう寝てるし、女中のお姉さん達は、朝からお客様のお世話で忙しいんだって。
次は、なにして遊ぼうかなぁ。
そんなことを考えて、お城の中をとぼとぼ下を向いて歩いていたら、前を見ていなかったから、誰かにぶつかってしまった。
尻もちついちゃって、びっくりして顔を上げたら、視線の先には、きれいなお着物を着た、とっても素敵なおねいさん。
「ごめんなさいね、だいじょうぶ?」
そう言って手を差し出してくれたのが、お菊さんだった。
「なまえさんは、片倉様のことが好きなのね?」
「うん、大好き。」
「……」
「世界で一番大好きだよ。」
「そう…」
ごめんね、とお菊さんは言う。
わたし、あなたのお邪魔虫ね、と。
お菊さんは、用があってお城に来たんだけど、厠を探しているうちに迷ってしまったんだって。
だから、縁側でちょこっとだけお話することにした。
お菊さんに好きな人のことを聞かれたから、こじゅだよって自信満々に答えたら、『そうね、片倉様、素敵な御仁だものね…』って言って、お菊さんはなんだか元気がなくなっちゃった。どこか遠くの方を見つめて、すごく悲しそうな目をしてる。
お菊さんも、こじゅのこと、好きなのかなぁ?
「お菊さんは?」
「わたし?」
「うん」
「お菊さんは、好きな人いるの?」
「私の好きな人…」
「…」
「わたし、わたしは…」
その時、お菊、お菊と遠くから声が聞こえた。
声のした方を見たら、知らないおじさんが怖ーい顔して誰かを探している。やなおじさん。
お菊さんは、辛そうに目を閉じて、それから深く息を吸い込んだ。
そして、何かを決心するみたいに、力強く立ち上がった。
「なまえさん、よく覚えておいてね。」
「?はい」
「心の底から好きな人ができたら、その想いを大切にしてね。絶対に自分の気持ちに嘘を吐いちゃだめよ。」
「?うん、」
「そして、その人にちゃんと、自分の気持ちを打ち明けてね。でないと、いつかきっと後悔してしまうわ。」
「…お菊さんは後悔しているの?」
「……」
「……」
「…ええ、そうね。」
そう言うお菊さんの目は、やっぱり悲しそうだ。
お菊さん、誰か、とても大切な人がいたんだね。
「なまえさん、貴女のその素敵な気持ち、大切にしてね。」
「うん。」
お菊さんの背中を見送りながら、こじゅが次遊んでくれる時には、こじゅに沢山の大好きとありがとうを言わなくちゃなぁって思った。
お菊さんの願いも、いつかきっと、叶うと良いね。
2020.4.4
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お菊さんのスピンオフを企画中
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