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<div style="text-align:left;"> ※白無垢姿の姉弟子と 「危ない橋は渡らない主義なんです」 と、以前、同じく芭蕉さんの元で句を勉強していた年下の弟子が言っていたのを思い出す。 危ない橋は渡らないんです。最初から渡らなければ、後で痛い目を見ることもないでしょう。わざわざ渡って、そうしてわざわざ痛い思いをする確立を高めるなんて、そんなの馬鹿のすることだ。…確かに君は、そう言っていたね。 「河合君、」 「………」 だけどね、渡っても渡らなくてもどうせ痛い目見るって分かっているのならさ、ちょっとくらいがたがきてる橋だって、渡ってみたっていいんじゃないのかなぁ。わたしはね、そう思うよ。 「河合君、そろそろ…」 「いやです」 「……河合君放して…」 「いやです」 …あーあ ほら、河合君、今すっごく後悔した顔してる。あの時、あの橋を渡っておけばよかったなぁって思っているんでしょ。そうしたら、今みたいなことにはならなかったかもしれないって、そう思っているんでしょ。…残念ながらね、その通りなんだよ。 「なまえ、そろそろ…」 部屋に入ってきた、新しくわたしの旦那様になる男性が、わたしと河合君の姿を認めて「あ、」と声を漏らした。 河合君は私の手を握ったまま、目を細め旦那様を睨み付けた。 「…邪魔したかな」 「い、いえ そんな…」 「そうですね、邪魔です」 「!河合君!」 たしなめるつもりで睨みつけたというのに、河合君はそれきり下を向いて黙り込んでしまった。 私の右手を痛いくらいに強く握りしめる、彼の左手。 こんなに余裕のない男の子だっただろうか、とぼんやりとそんなことを思った。 あれから河合君は一言も発さず、身じろぎさえしようとしない。 途方に暮れてしまった旦那様に、部屋を出てもらうよう目で合図を送る。 困惑する彼に大丈夫だと笑って見せ、再び河合君に向き直った。 「…僕を置いていくんですか。」 「………」 「ねぇ、なまえさん…あなたにそれが出来ますか。」 俯く彼の、熱っぽい、纏わりつくような視線。 大好きだった。年下のこの生意気な少年が。どうしようもなく愛おしかった。この子といつか、どうにかなるんじゃないかと思ってた。 親の決めた結婚だもの。私をここまで育ててくれた両親が、必死に取り次いでくれた結婚だもの。彼は優しい人だもの。私のこと、本気で愛してくれるもの。きっと素敵な家庭を築いていけるはずだから。 「…さようなら、河合君」 それと、ごめんね。 ビコーズ、アイラブドユー 2011.9.2 ------------- 絡めた指をそっと解いた |
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