Prelude

もはや公開指名手配



何度かデジヘッドと律達は戦闘を繰り広げながらも、何とか1年1組の教室前までたどり着いた。

「やっぱりいいな~、私もカタルシス・エフェクト使いたいな~」
「まだ言ってる……」
「だぁって~、役に立てるって言って入ったのに結局、戦闘任せっきりだし~、あと純粋にかっこいい」
「天ヶ崎の場合後者の比重が大きいんじゃないか?」
「バレたか」

流石にクラスメイトの目は誤魔化せなかった。
悪いというわけではないのだが。
実際ちょっと楽しいと思っている愛菜もいる。

やがて、別行動をしていた鼓太郎達とも合流した。
どうやら彼らもデジヘッドに何度も見つかりそうになったらしい。

「でも、どうしてデジヘッドって襲ってくるんですかね?別に私達が現実に帰ったって自分達には関係ないのに」

思えば襲ってくる理由が見当もつかない。
メビウスに居たいというのも、帰りたいというのも、本人の意思でしかない。だから帰りたいという意思を妨害されるのはよくわからない。
自由意志の侵害である。
だがアリアが言うには、メビウスはμの曲を聞いた人達のエネルギーで成り立っている。そしてそれを潜在的、あるいは本能的意識として自覚しているのだという。
だからデジヘッドは帰宅部の面々のような真実に気付いてしまった人達を見つけ、メビウスとμを否定しないよう洗脳しようとするらしい。

「うーん、原理はわかるけど納得はできないね~……本当に楽園だって言うなら本人の意思を尊重してこそじゃない?」
「なんか、家に帰ろうとする私達が悪者みたいですね…」

美笛の言葉に鈴奈は悪いことをしているのかどうか不安そうだった。
が、帰りたい奴が帰ろうとして何が悪い、という鼓太郎のご尤もすぎる言葉がそれを打ち消した。
しかし、一番不可解なのが何故かデジヘッドが律達を帰宅部であることを知っていた点だ。

「誰か情報を流してなきゃあり得ないことだよね~」
「裏切者でもいるってことか!?」
「そんな風には思いたくないけど、みんな注意してね」

さて、話もそこそこに帰宅部と鳴子は1年1組に入りカギPを探すことにした。

「……いなくない?」
「……いない、みたいですね」
「やっぱりこの教室じゃないんじゃ…」

カギP、おらず。振出しに戻る。
とはいえもはや見当がつく場所は探し尽くした。
これ以上探せる場所は思い当たらない。
全員で頭を悩ませていると、突如として校内放送が流れ始めた。

カギPである。
彼が放送を始めた理由は『オスティナートの楽士』達が情報提供を呼びかけ続けていた帰宅部のメンバーが発覚し、それを公表するためだった。

「え?」

そうして教室前方、黒板横の置かれたモニターに映し出される帰宅部の顔写真……。

「私居ないんですけど!!!」
「天ヶ崎、声が大きい。あと多分だが俺の膝辺りに蹲ってるのそうじゃないか?」
「……うわー!!遺失物横領の瞬間収められてるー!!」

終始一貫、そこじゃない。
妙に、いやかなりズレた視点の会話をしているうちに、現在位置までバラされている。
情報を横流ししている人間は誰なんだ。本当に。
距離感と角度から推測するに……。

「…守田ちゃーん?」
「…守田さん?」

愛菜と琴乃の声が重なった。
そして鳴子はバツが悪そうに苦笑いをして視線を逸らす。
せっせと撮影をしてはネットに垂れ流していたのは彼女だった。
恐らくデジヘッドはこの1年1組目掛けて押し寄せてくるだろう、それは簡単に想像がつく。
おもむろにため息をついた愛菜は掃除用具入れに近づいて、箒を一本取りだした。

「愛菜ちゃん?箒でデジヘッドは倒せないわよ?」
「安心して、これはお守り」

あまりにも日常的すぎるお守りである。


さて、教室に押しかけてきた大量のデジヘッドは律と笙悟、琴乃。
そして最中にカタルシス・エフェクトを覚醒させた鼓太郎達に一掃された。

「ま、また先を越されてしまった……」

愛菜は相変わらずショックを隠せないようである。
どれだけ覚醒させたいんだ。
美笛と鈴奈が「まぁまぁどうどう」と宥めていた。
傍から面倒すぎる先輩かもしれない、自重しろ。

一方、この乱闘のせいで鳴子は完全に世界の本当の姿に気づいてしまったようだ。
閑話休題それはさておき

カギPには教室の様子を見えているらしい。
どうやら向こう側は放っておく気はないようで、早々に潰しておこうか、などと言う。

「なんだっけ、あんまり強い言葉を使うなよもやしに見えるぞ、だっけ?」
「天ヶ崎、一回黙ろう」

宥められた。素直に黙った。
さて、カギPこと響鍵介は放送室にいるらしい。
アリアはというと、彼の言葉にかなり、いやそれはもう憤慨していた。
どちらにせよ、アリアの怒りがあろうとなかろうと、μの居場所を聞き出すためには会いに行かざるを得ないわけで。

「よーし、行くかー……」
「天ヶ崎、箒は置いていけ」
「お守り…」
「要らない」

律は無慈悲だった。
7/10ページ
スキ