Premier:夢から醒めた夢

戦慄!変態楽士現る!



道中、スイートPとフラワープリンセス達はよく重曹泉によく来るという情報を得た帰宅部。その情報を頼りに重曹泉のフロアにやってきたのだが、現状入り口で立ち尽くしていた。
男湯と女湯。
スイートPは見た目こそは可憐な乙女だが、現実での性別は男性。しかも油ぎっしゅなおっさんであることがパピコで判明している。
つまり、男湯と女湯のどちらにいるのか見当がつかないのだ。

「どっち……ですかね?」
「ど、どうしましょう……」
「どうしようね、ほんと…」

知っている部員達は口々に困惑を口にしたり、沈黙したりしている。
しかし、スイートPとの戦いの後に加入をした永至と優里菜は全員が悩んでいる理由がよくわからなかった。

「こっちだろ?みんなさっきから何を言ってるんだ?」
「スイートPって女の人じゃないの?」
「難しい問題なんです……」

美笛が頭を抱えた。
実際気軽にどっちと言い難いのだからどうしようもない。
しばらく立ち往生していると、意を決した鼓太郎が男湯の方を見に行ってくれた。だが、戻ってきた鼓太郎曰く男湯にスイートPはいなかったと。
つまり、女湯にスイートPはいるということになる。

「女子だけで行くしかないねぇ」
「仕方ない、私達だけで見てきましょ」
「腹を括るしかないかぁ……てなわけで男性陣は待機~」

女性陣で女湯にスイートPを探しに行かなければならなくなったが、優里菜は「うっ…」と言葉を詰まらせる。
優里菜は入浴に関してはシャワー派だった。まったく温泉に入ることができないというわけではないが、インターバルを挟む必要がある。
入浴をしに行くわけではない、というのはわかっているが少々気が進まない。しかしなかなか言い出すこともできない。
その様子に真っ先に気が付いたのは琴乃だった。

「優里菜ちゃん、どうかした?」
「あっ、えっと……」

もごもごと言い淀む優里菜に、なんとなくその様子から言いたいことを察した琴乃は優しく微笑んだ。

「怖かったらここで待ってても大丈夫よ、私達が見てくるから」
「うん、わかった……」

そして、女性陣は愛菜と琴乃を筆頭に女湯へと入っていった。
脱衣所から温泉へとつながるドアガラス越しから確認をする。だが、湯気のせいで中の様子がなかなか確認できない。

「うーん、見えん」
「……仕方ない」

何かを決めたように呟いた琴乃はおもむろに衣服を脱ぎ始め、体にタオルを巻いた。それをみて慌てる美笛、「おぉ」と暢気な愛菜。

「突入するってわけだね、いつ向かう、私も同行しよう」
「今よ、今」
「ほ、本当にスイートPさんがいたら、どうするんですか……!」

ノリノリで愛菜が服を脱ぎ始めたところで慌てて鈴奈が待ったをかけた。
いくら見た目が可憐な乙女であったとしても、中身は二条院静華という一人の男性だ。男性にタオル一枚の姿を見せるというのは些かよろしくない、という意見は至極真っ当だった。

「服のまま中に入るわけにもいかないでしょ。減るもんじゃないわ。ほら、みんなも!」

琴乃の促しに、美笛達は「えぇ~~~!!」と、声を上げる。
一方、脱ぎ終えてタオルを装備した愛菜は腰に手を当てて堂々と胸を張っていた。誇らしげであった。


場所は変わって、重曹泉の中では…。

「ふぅ……あったまる…」
「…あの、天河そうさ……ではなく、天河さん、我々こんなことをしていてよいのでしょうか」

女性達がちらほらと湯に浸かって談笑していたりする空間。
ある女性2人も隣り合って湯に浸かっていたが、片割れの黒髪の女性『四辻萃』が気まずそうにもう一人の薄い青色の髪の女性『天河紫依』に話しかける。

「あんまり根を詰めすぎても仕方がないでしょ?ほらリラックスリラックス」
「いや、和泉さんを探さないと!あの人どっか行っちゃったじゃないですか!勝手に!」
「いつものことじゃない?」

今この場にはいない、ある人物のことを話に出したがあっさりと論破された。その人物は気が付くといつの間にかいなくなっている。忽然と姿を消し、気づいたら帰ってきている。いつものことである。
ぐぅの音も返せなくなった萃は深く湯に浸かる。解せない、という表情だった。

一方で紫依はある2人組のことを見ていた。
男性がどうだこうだ、と語らっている2人組だ。とはいえ途中から片方のマシンガントークになっている。そのうえ言っていることが暴論中の暴論だった。
世界から男が消えたら人類は滅亡するだろう、と内心でツッコミを入れておく紫依。

しばらく見守っていると、紫のツインテールの女性の方が突然温泉の中に沈んだ。何故、何が起きた。

「え!?なんか人沈みませんでした!?」
「沈んだというか潜ったようにも見えるけど」

「まさか溺れたんじゃ……スイートPさん!?スイートPさん!」

「やはり溺れてますよ!!」
「……ん?」

スイートPという女性を呼ぶ声が空間に反響した。
だがその声に反応を示した別の人物達がいた。
紫依が萃を抑えながらその集団をちらりと横目で見ていると、その内の1人が凄まじい音圧で叫んだではないか。
抑え込まれていた萃も固まり、紫依も目が点になった。

「鈴奈ちゃん、大丈夫、大丈夫落ち着いて!」
「くっ!?曲者!!」

黒髪のロングの女性が叫んだ栗毛の女性を宥め、凛と大人びた女性がそう声を上げる。騒然どころの話ではない、曲者という言葉に再度萃が反応を示した。
曲者が誰に対してあてられた言葉なのかはわからない。だが少なくとも何やら『面倒事』の気配だけはひしひしと肌で感じとることができた。

刹那、白い煙幕のようなものが上がる。
その煙が晴れると、獅子と女性の彫像が置かれた台座の上に白タイツと白いタキシードを着た変人変態が立っていた。

「え……」
「あ~~!!」
「うわーー!?何あの人!?」
「S、Stork様!?」

あちらこちらから困惑と驚愕の声が上がる。
当たり前だ、いきなり白タイツを履いたスーツの変態が現れたのだから。
驚いたのは紫依も萃も例外ではないが、彼女達はすぐさま同じ結論にたどり着いた。

あの変態は像に変身して覗いていたのだ、と。
一方で、先程湯船に沈んで溺れたと勘違いされていたスイートPという女性も浮上した。

「気を付けて!そいつも中身は男よ!!」
「わー!!!わぁー!!!黙れ黙れ黙れッ!!!」

なかなかの大声だったせいで、いくら大声でかき消そうとしても無駄だった。知れ渡った事実はもはや回収のしようも言い訳の余地もない。
そして、その事実を初めて知ったのはStorkも例外ではなかった。

「マジで!?あんた男だったのかよ!?なんで男が女湯にいるんだ!!よくも騙したな!!」

お前が言うな、お前が。
もはや状況は説明不可能とことんカオスな状況になってしまっている。あまりの展開の速さに紫依も萃も唖然としていた。
その間にスイートPは怒り心頭でその場から逃げ去っていく。
片やStorkは茫然自失となっているショートヘアの、先程まで男性に関して暴論を並べ立てていた女性に近づいていた。
変態だ、いや既に変態だった。

「まずいです!」
「待って萃ちゃん、無暗に突っ込まないで!」

正義感の強い萃はある種の危機的状況にようやく我に返り、慌てて立ち上がって2人の間に入ろうとした。
だが、表立った行動はすべきではないと考える紫依に咄嗟に脚を掴まれ、湯船に倒れ込んだ。
ぷかり、浮かぶ萃。
湯船に浮かんだ彼女の対処に、あわあわと手を拱く紫依。

なお、謎の力を覚醒させたショートヘアの女性がStorkを感電させたことで、事なきを得た。自力で解決したはいいものの、ショックが大きすぎて気絶してしまったが。

さて、改めて表現する。
説明不可能とことんカオスな状況すぎる。
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