Premier:夢から醒めた夢

深い水底に揺蕩う



揺り籠に揺られ、暖かい毛布に抱擁されているような感覚。
暖かく、安心感に満ちた、穏やかな時が流れている。
苦しいものや辛いこと、嫌なものを全て遮ってくれる暖かなヴェールに守られていた。


『起きて、そろそろ目覚めないと』


誰かの声がした。
悪戯っぽくて、でも安心感がある。
何度も何度も自分を支えてくれていた誰かの声。


『やるべきこと、あるんでしょう?』
『夢の中に沈むのはもうおしまい、さぁ起きて』


やるべきこと。
必死に思い出そうとした、だが記憶は思い出そうとするたびに霧散して、核心を掴めない。
思い出せ、思い出せ_______。
必死に、覚束ない意識を手繰り寄せ、記憶の糸を辿る。


『君は使命があってきた』
『とても大事で、重大で、深刻な使命』
『君にしか果たせないことなんだよ?』


そうだ、そうだった。
自分には使命があった。
だが具体的には思い出せない、霧のようにもやもやとしている。


『まだ、思い出せないんだね…』
『でも、そのうち思い出せるように私が助けてあげる』
『さぁ起きて、今を逃すとずっと思い出せなくなるよ』


白銀の糸が垂らされた。
絹のようで、蜘蛛の糸のようで、美しい。
この色を知っている。
いつだって自分のことを守ってくれた、優しい銀色。
黄金のお姫様に寄り添い続ける、騎士のような白銀。
手を伸ばした、大事な色だったから。

糸が手に絡みつき、ゆっくりと上へ上へと持ち上げる。
紫の蝶は道を示すように上へと昇っていく。
妖艶で美しくて、目を奪われた。
ひらひらと、祝福のように赤い薔薇の花弁が舞い落ちる。
その花弁は温かくて、心強かった。

どれも大切で、どれも自分を守ってくれる、優しいもの。

眩い光が視界に射した。
もうすぐこの優しい夢の底から醒めなければならない、


『いってらっしゃい』
『大丈夫、いつだって私はそばにいるからね』
『辛いことは全部私が代わってあげる』
『だから君は元気に、明るく、可愛らしく過ごしていてね』


『おはよう、いってらっしゃい_____優里菜

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