Prelude
帰宅部活動開始
「そうだ、ついでに1個聞いていい?」
「どうした?」
「何でカギPくんがここに?」
そうであった。
愛菜は戦ってすぐくらいに意識を失ってしまったため、カギPこと響鍵介が帰宅部に仲間入りしたことを知らないのである。
つまり愛菜からしてみれば目が覚めたらいきなり仲間の顔をして、先程まで戦っていた相手がそこにいる、という不可解極まりない状況になっていた。
「先輩達に負けた以上、他の楽士達に許してもらえるかもわかりませんし…帰宅部に入れば『帰りたい』っていう気持ちが少しはわかるようになるのかなって思って」
「なるほどね~、いいじゃん」
あっさり、これぞ二つ返事。
鍵介としてはもう少し驚かれるものだと思っていたが、驚く素振りすら彼女にはなかった。
「僕が言うのも変ですけど、もうちょっと何かないんですか?」
「え?君が自分で決めたことに私が口をはさむのは変じゃない?」
さらり。嘘偽りを挟む余地が見当たらない言葉。
これには鍵介もぽかん。
しかし理屈もわかる、言ってる意味も理解できる。
そうしてしばらく考えてから彼は納得した。
(…あぁ、この人は最大限に意思を尊重してくれる人なんだ)
理解してようやく彼女が多くの人を惹きつけている理由を分かることができた気がした。
「それで、お前にも伝えておくことがある」
「はいはいなんでっしゃろ」
「もともとは部長は俺がやってたんだが、式島に譲ることにした」
「おぉ、式島君出世じゃん」
ぱちぱちぱちぱち。拍手。称賛。
惜しみない祝福。
「お祝いはアン肝クレープでよき?」
「天ヶ崎、最後まで聞け」
「はい、佐竹先輩」
姿勢を正す。
「恐らくこれからも帰宅部に人は増えると考えていい…そこで、だ。天ヶ崎、お前に副部長を任せたい」
「……?」
脳内に宇宙が広がった。
全ては理解できなかったが。
鼓太郎が「無理ならこの鼓太郎様に任せろ!」と堂々と言っている。
が、今のところ鼓太郎の言葉も耳に入ってない。
「つまり、私、式島君の相棒?」
「相棒っつーか、サポートっつーか」
「やる、全然やる」
きっぱり。数秒越しの即答。
理由は役に立ちたいというのはある。
ただそれ以上にかっこいいと思った。
相棒、サポート、副部長。
主人公を傍で支えるってかっこいい、憧れがある。
「じゃあ、よろしくな。ただし、無茶はするな」
先程倒れた時のように、無理をして戦わないことを約束させられた。
「でも、私、頑張るよ。みんなが帰れるように後押ししたいし、なにより私も帰りたい。はっきりとはわからないけど、たぶん私にも現実で待たせてる大事な人がいると思うから」
霞んだ記憶の中で悲しい声をしていたあの人物。
誰なのかは見当もつかないが現実に帰って、会いたい。
心からそう思った。
最初は他人事では言った帰宅部でも今は自分事だ。
だから、もっと、ずっと、全力で帰るために頑張ろう。
そう、愛菜は決意した。
