やきもち
「……んだよそれ」
「ご、ごめん!迷惑だってことは重々承知してるんだよ!」
突然低い声を出されて、俯いてしまった。
や、やっぱり怒るよね!
そりゃそうだよ。
「……違う」
「え、え?」
「お前さぁ」
や、やっぱり怒ってない!?
あたしはすっかりビビってしまって、肩を震わせる。
「……なんでそういう可愛いこと言うんだよ」
言葉の意味を理解するのに、かなり時間がかかったけど、分かったときには顔に熱が集まって火が出そうだった。
か、か、可愛い……。
「お、怒ってないの……?」
「怒るわけねーじゃん。だってそれ、ヤキモチだろ」
……ヤキモチ。
そっか、あたし嫉妬してたんだ……。
モヤモヤしてズキズキするのって、嫉妬だったんだ……。
「でも、不安にさせたならごめん」
「ふ、不安ってどころじゃないよ!大野くん女子苦手なはずなのに女の子とばかり一緒にいるし……今日だって、クッキー貰ってたでしょ?」
「あー……」
大野くんは少し躊躇ったあと、口を開く。
「それ、俺の作戦だから」
「え?作戦?」
「……さくらっていつも俺が女子と話してても告白されてても平気そうだったから、嫉妬してほしくて」
そんなの……っ
常にしてるに決まってるじゃん……!
「うー……」
「おわっ、なんで泣くんだよ!」
「それ言ったら、大野くんだって平気そうじゃんかぁー……」
あたしがそうやって泣きながら言えば、大野くんはため息をついた。
だってだって、あたしが男子と喋っててもじゃれあってても興味なさそうにしてるもん!
「バカ。平気なわけないだろ」
「え……?」
「さくらの想像する数千倍は嫉妬深いからな、俺」
ニッと口角を上げて、あたしの頭を撫でる大野くん。
思わずその顔に見とれてしまった。
「毎日嫉妬で狂いそうになってんのに、なんで気づかねーの」
「そっ……そんなの、気づくわけないじゃん!」
「はは、だよなぁ。お前、天性の鈍感だもんなぁ」
「て、てんせい……?ってなに?」
「生まれつき、ってこと」
あたしがしばらく考え込んで、「……いやそれバカにしてるでしょ!」と怒ると、大野くんはさほど申し訳なく思ってなさそうに「わりぃわりぃ」って頭をポンポン、と叩いてきた。
うっ……あたしゃその顔に弱いんだよ……。
このイケメンめ!