やきもち
最近、気に食わないことがある。
恋人の大野くんについてだ。
あのイケメンがモテることは、今更言わなくとも分かる事だけど、最近の大野くんは女子にくっつきすぎだと思う。
そもそも大野くん、女子が苦手なはずじゃ……。
もしかして、あたしに飽きたから……!?
ど、どうしよう。
飽きられた上に他の女にとられちゃたまったもんじゃないね。
「大野くーん!クッキー焼いてきたの!」
クッキー!?
あたしにゃそんな女子力高いもん作れないよ!
うぅ……女子力の面では他の女に勝てっこないってことか……。
「大野くんのために甘さ控えめにしてきたの!」
耳を塞ぎたくなるような声を右から左へ流しながら、あたしは席を立った。
あーもう……このままじゃ本当に飽きられちゃうよ。
「あ、まるちゃん!」
「……たまちゃん……」
前から歩いてくるたまちゃん。
高校に入ってからおろしたストレートの髪がサラサラと揺れる。
メガネの奥で大きな目がくりくりと動く。
「どうしたの、まるちゃん。元気ないね」
「うん……あたしの悩みを聞いてくれるかい、たまちゃん……」
「もちろんだよ!何があったの?」
たまちゃんの優しさに感謝しながらも、あたしは簡潔に話す。
「ほら、大野くんってモテるでしょ」
「うん」
「だから、そのうち飽きられちゃうんじゃないかと思って心配なんだよ。どうにかして他の女に勝ちたいんだけど……」
あたしがそこまで言い切ると、たまちゃんは「あぁ、それなら」と手のひらに拳を乗せた。
「今日の放課後、お菓子作りしようよ!私も手伝うから」
「……いいの?」
「うん。ちょうど杉山くんに作ってあげようと思ってたところなの!」
たまちゃんの人の良さに感動してあたしは泣きそうになる。
たまちゃんは料理部で、たまにこうして放課調理室を借りて何かお菓子を作っている。
あたしも食べさせてもらったことあるけど、本当に美味しかったからたまちゃんの言葉には信ぴょう性がある。
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