林檎ステーション
私は上を見る。空はゆっくりと紫に変わりつつあった。そこに、真っ黒な影が浮いていた。シギだ。一匹のシギが、列車と並走して北へ北へと飛んでいる。阿呆者なのか、変わり者なのか。しかし、その小さな翼で必死に風を生み出している。
私はしばらくその姿を見ていたが、寒くなって窓を閉めた。そして私は座って、林檎を見つめた。手に持って、皮のまま齧り付いてみる。軽やかな食感。甘い。安心する味。思い出の味。美しい味。飲み込むと、美味しさで頭がくらくらした。
食べ終わる頃には、目の前にはもう暗雲は垂れ込んでいなかった。
本日天気晴朗、快晴也。
明日天気晴朗、快晴也。
われても末に、逢はむとぞ思ふ。
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