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ぐんじんかぞく。

「お前等、豆まきするぞ」
「リボーン、バイパーも‼」
「やあ。おちびちゃん。元気そうだね」
連絡もなしに上がりこんできたリボーンとバイパーに、綱吉は歓声を上げて飛びつき、コロネロとラルは揃って冷たい視線を送った。
「何の用だコラ」
「豆まきって言ってるだろ。心配は要らないぞ、ちゃんと準備はしてきた」
どさりと、リボーンはテーブルに買い物袋を置く。中身を一つずつ取り出して、ラルは溜息を吐いた。
大量の福豆に枡、ひとつだけ鬼の面。それと、言い訳か胡麻擦りか、この場にいる人数分の恵方巻き。
まず間違いなく、遊ぶ気だ。ラルの視線に、更に冷気が宿る。
「うちを荒らす気か」
「やだなあ。ちゃんと片づけまで手伝うよ」
「…………そうか」
また溜息を吐いて、ラルは綱吉を抱き上げた。でもねえ、と腕の中で綱吉は残念そうに言う。
「でもオレ、もうほいくえんでまめまきしてきたよ?」
「そうなのかい?」
聞くバイパーに向け、綱吉はこくこくと頷くと身振りして、保育園でやってきたらしい節分の行事を説明した。
「きょうね、おにさんからね、しょーちゃんせんせーをまもったんだよ‼」
「…………なかなか勇敢だね、おちびちゃん」
しょーちゃん先生とは、綱吉のクラスを担任している保育士である。線の細く気弱そうな青年を綱吉を迎えにいったときのおぼろげな記憶から引き出して、バイパーはそう、と頷いた。
曖昧な誉め方に、それでも綱吉は満面の笑みを見せ、えへんと胸を張った。
「だからオレ、みてる!」
リボーンはにやりと笑って綱吉の頭を撫でる。
「ん、それがいいぞ」
その発言に不穏なものを感じて、大人たちの視線がリボーンに集中した。気付いているだろうに、リボーンはそれでも余裕を崩さず笑みを浮かべたまま、言った。
「じゃあ鬼を決めるぞ」
「俺はパスだ。お前等、撒くのはいいが物は壊すなよ…」
若干諦観を含んだ声で、ラルが言う。綱吉の子守役がいるだろうからな、と納得してリボーンはバイパーとコロネロに目を向けた。
「……じゃ、残りは三人だな」
じゃんけんぽん、といい歳した大人たちが声をそろえて手を出す。
「…………げ」
「おとーさんのまけー!」
きゃらきゃらと笑う綱吉。バイパーとリボーンは揃って黒い笑顔で、そそくさと福豆の入った袋を開ける。経験上、こういうときはどういうオチが待っているか。理解してコロネロはがくりと肩を落とし、ラルは警戒の色を強めた。
「…………綱吉」
「なーに、おかーさん?」
「何が起ころうと、俺はお前を守るからな」
「うん!」
何も理解していない子供は大きく頷いて、大好きな母親にへばりついた。


鬼の面を被ったコロネロが狭いリビングを逃げる。それを追う、黄と藍のアルコバレーノ。
うにょりと伸びた触手に行く手を阻まれ、鬼が吠えた。
「幻術は禁止だコラ!」
「知ったことじゃないよ」
ばらばらと豆を適当に投げながら、バイパーは答えた。
鬼は外、福は内。
一応そういう言葉も投げられてはいるが、主たる目的は最初から鬼いじめである。
「ほらほら、捕まる前にお逃げ」
触手が数を増す。それを回避したところで、何か準備をしていたリボーンが緑色の銃をコロネロに突きつけた。気付いたコロネロが顔色を変える。
「ちょっと待てコラ!」
「待たねえ。いくぞ、レオン」
銃に姿を変えた相棒に声を掛けてリボーンはトリガーをを引いた。

ぺちん。

いい音を立てて、鬼の面にヒットするのは投げる筈の豆で。目を丸くしたコロネロに、リボーンは声を上げて笑う。
「何、鳩が豆鉄砲食らった顔してんだ」
「食らったからだコラ‼」
「そうか。心配しなくても、もっと食らわせてやるぞ」
「僕の事も忘れないでね。金も貰わないのにこんなにするなんて、君はついてるよコロネロ」
「全然嬉しくねえぞコラ‼」
ぎゃんぎゃんと煩い大人達に、キッチン近くに避難しているラルが呆れた声できらきらした目で豆まきの様子を見守る息子に話しかける。
「面白いか、綱吉?」
「うん!おにさんもリボーンもバイパーもすごいね!」
「……あれなら鬼も裸足で逃げ出すだろう」
福の神も逃げかねないが、そこはどうにかなる。
腕の中の幸いを抱きしめなおして、ラルは豆を投げつくしつつある大人気ない大人達に呼びかけた。
「お前達、そろそろ終わらせないと恵方巻き没収だ!」
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