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犬と僕の暮らし

 昼前、散歩に出た山本が公園の脇を通りかかったとき、ふと次郎が吠えた。公園の中を向いて尻尾を振る。
「どうした、次郎?」
 つられて、そちらを見て。山本は息が止まりそうになった。
 どきんと心臓が音を立てて。けれど、目が離せない。ベンチに座る、つんつんした茶髪の少年。
「……デーチモ」
 向こうは次郎が吠えたせいか、とっくに山本のことに気付いている。今日も、こないだと同じ琥珀色の瞳。それが、山本に向けてゆるりと細まった。
「こんにちは」
 何を、こいつは考えてるんだろう。
 デーチモの膝の上に乗っかってる子ライオンとおぼしきイキモノも、ぐるぐると甘えた声を出してぺたりとデーチモになついてる。
 こいつらは、何なんだ。俺が知ってるのは、もっと――。
「なにもしないよ。オレも、ナッツも」
 山本のの混乱を悟ったのか、デーチモがそう言って笑う。迷って、彼はデーチモに近づいた。刀はない。武器になりそうなものも、ない。ほとんど丸腰で、山本は化け物に近づいてしまう。しかし向こうも、傍目からはなにも持っていないようだった。
「こないだは、ごめん」
 ぺこりと、デーチモは頭を下げた。真似をして子ライオンもくうんと鳴いてふかふかのたてがみを動かしている。その理由を、山本は察することが出来なかった。
「へ?」
「雲雀さん、連れてって。アラウディさんの依頼だったけど、君まで巻き込んだ」
 まさか謝られるとは思ってなかった。言葉が、何も出てこない。その間にデーチモは膝の上のライオンをベンチにおろすと、次郎の前にしゃがみこんで頭を撫でた。
「次郎もごめんね、びっくりさせて」
 おとなしく撫でられる次郎はぱたぱたと尻尾を振ってデーチモに答える。そういや、はぐれたこいつを拾ってくれたのはデーチモだったか。
「……ありがとな」
山本も、ぶっきらぼうに言葉を出す。そういえば借りが一つ、有るのだった。
「え?」
「次郎、拾ってくれたの。感謝してんのな」
 するとデーチモは意外そうな表情であっけにとられて山本を見て、そして頬を赤くして――いわゆる、照れた。
「べ、別に……たまたまナッツと一緒にいただけだし」
 すうと山本から次郎に視線を戻して、デーチモはぼそぼそと答える。案外、分かりやすい性格のようだ。
「心配してたのな、こいつも小次郎も俺の大事な相棒だから」
「…………オレもナッツがいないと不安だから」
 名を呼ばれ目を開けたライオンが、ベンチからデーチモの肩に飛び移る。
「どうした、ナッツ?ほら、次郎だよ」
 するとライオンは次郎を見て、がうがうと機嫌良さげに鳴いた。次郎も答えるように吠えて、尻尾をぶんぶん振っている。
 仲いいのな。俺たちとは、違って。そんなことを考えていた山本はふとデーチモの後ろに見た夕焼けが眩しくて、目を細める。
 そして、急に思い出して、しまった。口を押さえて言葉を封じる前に、俺は聞いてしまった。
「なあ、ひとつ……いいか?」
「なに?」
 きょと、とデーチモの琥珀色が俺を見る。なれない、いろ。山本はその色ではないデーチモを、知っている。
「山本剛って、知ってるか?」
「…………やまもと、つよし」
「俺のオヤジだ。…………十何年も前に、殺された」
 あんたにか?――とは。聞けなかった。
「……やまもとつよし」
 デーチモが、確かめるようにその名を呟く。そして、ゆるく首を傾げた。
「…………今は、よくわからない」
否定、なのだろうか?それにしても変な回答だと山本は感じる。
「そか。それならいいのな」
「うん。じゃあ、雲雀さんによろしく」
ライオンを抱き上げ影奉仕を踏んで歩いていくデーチモの背中を、どうしてか山本はさびしそうだと思ってしまった。


*****


 あわてて洗濯物を取り込みながら、山本は溜息を吐いた。朝、青く晴れ渡っていた空が昼すぎから急に曇りだして、夕方を前に泣き出した。
 どうにか濡れないうちに洗濯物を室内に入れて、ほっと一息付けば、そのタイミングを見計らったように固定の電話が鳴る。
 珍しい。思って、けれど山本は当たり前にそれを取った。そして彼は、電話の向こうの人間に少し、驚いた。
「どーしたのな、雲雀?」
 いつも通り小学校に向かった雲雀が、電話を掛けている。彼が携帯電話を持ち歩いていることは知っていたが、掛けている所はついぞみたことがなかった。
「傘、忘れた。迎えに来て」
 いつもの雲雀らしく淡々と。そういや傘、持ってってなかったな、納得して山本は返事する。
「おう、どの辺にいるのな?」
「通学路沿いの駄菓子屋。雨宿りしてるから」
「了解、すぐ行くのな!」
 電話を切ると、山本は二本の傘を手に玄関に立つ。そしてきらきらとした目で見上げる次郎の頭を苦笑して撫でた。
「ごめんな次郎、散歩じゃねーのな。小次郎と留守番してくれよ。帰ったらジャーキーやるから。な?」
 わん、と鳴いてはたぱた尾を振った次郎に苦笑を笑顔に変えて、山本はいってきます、と家を出た。


 たどり着いた駄菓子屋の軒先で雨宿りをしている雲雀に声を掛けようとして、山本はぱち、と瞬きした。
 雨宿りをするランドセル姿の子供が、二人いた。
 片方はもちろん雲雀。そしてもう一人は、眼帯をつけた女の子。
 山本が声を掛ける前に雲雀が気づいて、彼をぎっと睨む。その横で女の子が、片目をまんまるに見開いた。
「遅い」
「…………ぁ」
「待たせたな雲雀…………と、凪…か?」
 こくんと、女の子――凪が頷く。雲雀はえ、と小さく驚きの声を洩らして、山本に聞いた。
「知り合い?」
「んー。こいつの兄ちゃんと顔見知り。凪も迎え呼んだのか?」
「……うん。おにいちゃんが、すぐ来るから待ってなさいって」
 それぞれの保護者が来るまで、二人で待っていたらしい。雲雀も凪もそう口数は多くないだろうに、平気だったのか。そのあたりの事情を内心案じて、山本はもう一つの懸念をこぼす。
「凪一人置いてくのも心配なのな」
「…………そうだね」
 いくら通学路とはいえ、雨だと人通りも減る。何となく先に帰ることもできず、山本も二人の横に立って降りしきる雨を眺めた。
 しばらくもしないうちに三人の前に、一台の車が止まる。運転席から出てきた青年は、まず凪を見て笑顔を浮かべ、山本に気づいた瞬間それを凍り付かせた。
「よお、骸」
 つとめて明るく、山本は片手を挙げて挨拶する。骸とよばれた青年は呆然とした様子でそれに答えた。
「……山本武……あなた、生きてたんですか…」
「なんとかな。渡し守に嫌われたっぽい」
「…………それなら連絡の一つくらい寄越しなさい‼」
 骸の怒声と同時に繰り出された手刀を受け止め、山本は笑顔に困った色を混ぜて、しょーがねえだろ、と言い訳した。小学生組はきょとりとした顔で大人たちのやり取りを見ている。
「ケータイ落としちまったのな」
「知ってますよ、それだけは僕が拾いましたから。念のため処分しましたが。他は?」
「次郎と小次郎は無事。アレも師匠が拾ってくれたのな」
「本当に悪運だけはありますね」
 どうしても会話が噛み合うようで、噛み合わない。埒があかない。深いふかい溜息を吐いて、骸は車のドアを指さした。
「凪、乗りなさい。山本と――雲雀君ですね、君も。……そいつに少し、話があります」
「おにいちゃん?」
「何か目的があるの?」
 子供たちに問われ、骸は眉を下げて微笑んだ。
「仕事の話ですよ。それに、雨の中で体が冷えたでしょう」


*****


 骸の車で連れていかれたマンション、その一室――六道骸と凪兄妹の自宅。そのリビングで、雲雀と凪はソファに並んで座り、ホットミルクを飲み、クッキーをかじっていた。
 凪がふと点けたテレビは適当な番組を流しているが、凪自身も雲雀も、いまいち興味が持てなくてただただおやつを食べ進める。
 もう一人の住人もとい家主の骸は二人にホットミルクとおやつのクッキーを出した後、何か言おうとした山本の耳を引っ張って自室に閉じこもってしまった。そうして、小学生の二人だけがリビングに残される。
 雲雀は一人、考えていた。それこそ凪が山本に気付いたその瞬間から、湧いてやまない疑問があった。
 やがて彼は傍らの凪に、聞いた。
「凪は、あの人のことをどれだけ知ってるの?」
「え?」
「あの人……山本のこと」
 かくりと凪の首が傾く。ゆっくりと片目をぱちりと瞬かせて、彼女はぽつりぽつりと答えた。
「あんまり、知らないわ。おにいちゃんのお仕事の知り合いで、たまにうちに来てたの」
「そう」
「けれど、急に来なくなって。おにいちゃんが連絡がとれないって言って、探してた」
 凪の言う『来なくなった』その頃に、自分があの人を拾ったんだろう。
思って、雲雀は次の問いかけに移る。自分の知らない山本のことを知りたかった。どうしてかは、分からない。
「凪の兄さんの仕事って?」
「わからない。おにいちゃん、私にお仕事の話はしないから」
妹に言えないようなことなのか。それとも、六道骸という人間の性格からか。そこは、雲雀には分からない。想像もできない。
「ねえ、私も聞いていい?」
「いいけど」
 凪が僅かに雲雀を見上げて言った。許可をしてみれば、彼女はこう問いを投げる。
「どうして、あの人があなたと一緒にいるの?」
「拾ったんだ」
 口元を緩めて、雲雀は答えた。凪は少しの間不思議そうにしていたが、納得したのかそう、とだけ返事し、桜色のマグカップに口をつけた。


*****


 骸の自室に引っ張りこまれ、山本はフローリングに正座させられ仁王立ちする骸を見上げていた。骸は柳眉を吊り上げ、赤と青のオッドアイで山本を睨む。
「この死に損ないが……」
「悪かったって! けど連絡する方法無かったのな!番号覚えてねえし」
「トリ以下」
 言い訳――といえ、その殆どが事実だ――も叩き斬られ、山本はガクリと俯いて嘆く。
「……ひでえのな」
「携帯が無くともあの店に行けばよかったでしょう」
「…………あ」
 その反応に、骸は盛大な溜息を吐いた。雨の下で出会ってから何度目の溜息か。もう覚えていない。数えたくもない。
「想像以上の馬鹿でしたね、君は」
 呆れしか感情の込められていない言葉を投げつけて、骸は山本を見下ろした。眉間にしわが寄るのを自覚して、そこを押さえてみる。
「考えもつきませんでしたか?」
「ああ、全く。……そっか、店に行けば獄寺に連絡できたか」
「……まあ、それは今更の話です。獄寺には僕から連絡を入れますよ」
「頼むのな」
 獄寺も怒るだろう。嵐のような気性のあの青年にも散々に怒られて叱られてしまえばいい。八つ当たりを予定して、けれど骸にはまだ確認したいことが山ほどあった。
「他にも聞きたいことがあります。……次郎に小次郎、あと刀は今君の元にあるのですね」
「ああ。小次郎が師匠のとこに飛んで、刀まで案内してくれたらしいのな。で、次郎は……あー……」
「何ですか、君らしくもない」
「その……デーチモに、保護されてたのな」
「…………は?」
 流石の骸も、これには目を点にした。
 デーチモと言えば、骸達にとってはいわゆる商売敵だ。そして山本はそれだけでない理由を以て、彼を嫌っている。その訳は、骸の知り及ぶところでは無かったが。
 そんな二人に奇妙な接点が出来たものである。
「なんか、奴のライオン? それと一緒に拾われて、でデーチモが雲雀に次郎預けて、俺んとこまで戻ってきたのな」
「なるほど。ある意味恩人ですね」
「……あんま、感謝したくねぇ相手だけどな。けど次郎も懐いちまってるし……変な奴なのな」
「じゃあ、雲雀君は?」
「拾われた」
 あっけらかんと答えた山本に、骸はやはりこれは馬鹿なのだと確信を持つ。元々馬鹿だ馬鹿だと思っていたが、大馬鹿かもしれない。
「君は捨て犬ですか」
「似てるかもな。あの後、雲雀に拾われてそっから厄介になってる」
「雲雀君、ねえ……」
 ふむ。思考を巡らせて骸は言葉を続ける。
「凪に少し話を聞いたことがありますが……変わった子ですよね」
「なのな」
 否定する余地がなく、山本はこくこくと骸に頷いて見せる。
「恩もあるし、あいつ変に聡いし……だから俺、しばらく仕事は休みにしたいのな。下手に動いて雲雀に見つかりたくねえし」
「珍しい。あの銀髪が聞いたら驚きますよ」
 銀髪の知り合い。いくつか、思い当たる。山本はんー、と唸って二択まで人間を絞り混み、結局回答を骸に求めた。
「それ、どっちなのな?」
「どちらも」
「ああ、そっか」
「……まあ、君の決めたことについて僕はとやかく言うつもりはありませんが。しかし……」
 そこで一度言葉を止めた骸の色違いの両眼が、奇妙な感情を灯して山本をじっと見つめる。山本も、それをまじまじと見返した。やがて骸は、静かに問うた。
「君は……何から目を背けたかったのですか?」
「何の話なのな?」
 問い返し、けれどそれに骸は答えようとしない。己の投げた疑問符にすら回答を求めないまま、彼は話を続ける。
「……無意識なら、まだ良しとしましょう。けれどそれは、故意ではないのですか? 僕の知る君は、大馬鹿者ではあれ、そこまで愚かではない」
「………………それは買い被りなのな」
「彼が、理由ですか?」
 雲雀のことだと。山本は名を出されずとも理解した。
 確かに雲雀は、その答えの一端となり得る。けれど、そのすべてのかたちを、山本自身が見つけられずにいる。
「……分かんねえ。けど、雲雀といるとなんか――落ち着くっていうか、あったかいのな」
「そうですか。……まあ、いいでしょう。好きになさい」
「サンキュな、骸」


 ようやく二人がリビングに戻れば、待ちわびていたのか雲雀が睨むように山本を見上げて言った。
「話は終わった?」
 山本が頷く前に、骸が口の端だけで笑って答えを返す。
「ええ。手の掛かる大人ですが、しばらくお任せします」
「何それ」
「これからもよろしくってことなのな!」
「煩い。終わったのなら帰るよ」
 ぽんぽんと頭を撫でた山本の手を振り払って、雲雀は玄関へ足を向ける。ふと服の裾を引かれ振り向けば凪がほんのりと笑みを浮かべていた。
「また明日」
「うん」
「そうだ、山本武」
 凪と共に見送りに出た骸が、ふと山本の名を呼び何かを投げて寄越す。山本が受け止めたそれはシンプルな携帯電話だった。腕組をした骸が、貸しですよと不適に笑う。
「僕の予備です。データは僕と獄寺のを入れています。……休業は君の勝手ですが、連絡はまめになさい」
「……マジ、感謝するのな!」
 ぱん、と両手を合わせ礼を言う山本に、骸は呆れながらもその笑みは崩さなかった。
 雲雀はただ、そんな大人達をじっと見ていた。


*****


家に戻ってから。山本は携帯電話を耳に当て、謝り倒していた。
 凪の兄――六道骸が山本に貸した携帯。シンプルな黒のそれは雲雀の持っているものよりいくらか旧式だろう。
電話の向こうからでも微かに聞こえる男の怒鳴り声。山本が電話をかけた相手だろうか。消去法で考えれば、ゴクデラとかいう奴の筈だ。あの携帯には、二人分のデータしか入っていないと骸は言っていた。
 雲雀は山本を眺めながらぱりぱりとおやつの煎餅をかじる。ころころと山本は表情を変えて、なんだか面白かった。
「悪かったって! ほんと、気付かなかったのな‼」
 謝る。苦笑いする。眉を下げる。また謝る。やっぱり困ったように笑う。子供みたいだ。
 二枚目の煎餅を食べ終わるくらいに、ようやく電話が終わった。
 山本は困った、とかぼやきながら携帯を座卓に置いて、けれどそれは雲雀からはあまり困った風には見えなかった。煎餅を一枚掴んでかじって、山本は雲雀を見る。
「……なあ雲雀、今度の日曜暇か?」
「特に用事はないよ」
 答えると、山本はぱんと手を合わせて頼み込んできた。
「一緒に行ってもらいたい所があるのな!おやつ奢るから!」
「…………何それ」
 自分が食べ物に釣られるとでも思ってるのか。不満に思いながら、雲雀は山本を睨み上げる。
「獄寺が、一回顔見せに来いってうるさいのな。で、ついでに雲雀も見てみたいって」
「何で僕?」
「世話になってるって言ったら、興味持っちまったのな。もしかしたら骸が何か話してるかもしれねえ。でなー、獄寺んち、下がカフェだからおいしいおやつあるのな!」
「どうでもいい」
 論外だ。切り捨てた僕に山本は首を傾げた。
「えー? マスター、料理もおやつもうまいんだぜー」
「それは関係ない。……まあ、行ってあげてもいいけど」
「マジ⁉ 助かるのな‼」
「感謝しなよ」
 本当は、雲雀はゴクデラとかいう男に少しだけ、興味があった。きっとそいつも、自分も知らない山本を知っているだろうから。
 そして、そのヒントは目の前にある。
「ねえ、携帯触ってもいい?」
 問えば山本は何の迷いもなく頷いた。人がいいのかただの間抜けか。デーチモにはあんなに噛みつく癖に、僕には警戒心のかけらすら見せない。
「構わねえけど、どうしたんだ?」
「僕のデータ入れておく。それに、あなたの番号も把握しておきたい」
「あー、そうだな。そっちの方が便利だしな!」
 了承に、僕は黒の携帯を手に持った。暗証番号も設定されてないそれを、適当に操作する。こういうのは大概似たような作りだから、説明書が無くてもどうにだってなる。
 僕のデータは順当に、山本の携帯に収まった。逆も同じく。けれど僕は携帯を返さないまま、かちかちとそれを弄んだ。山本は、何も聞かずに煎餅をかじっている。
「前の携帯、大事なデータとか入ってなかったの? あの人、処分したとか言ってたけど」
 骸との会話の端を思い出して雲雀は問う。山本は、ゆるく首を振った。
「あれ、仕事用だったのな。師匠の家とかは番号覚えてるし、そんな困るような使い方はしてなかった」
「そう」
 もしかしたらこの男、機械音痴かもしれない。雲雀は考えるまあ、どうでもいいけど。
「雲雀にはそういう大事なやつ、あるのか?」
「ないよ」
「……じゃあ、これから作ろうな!」
 思わず溜息が出てしまった。どうしたらそういう思考になるのか。
 けど、悪くないと思ってしまった自分もいて。少しだけ、雲雀は悔しかった。

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