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よみきり

オレの肩に持たれかかってうとうとと眠っていた骸が、起きぬけのぼんやりとした声で呟いた。

「嫌いです」
「骸?」
「嫌いです。あなたのことがきらいです、ボンゴレ」

僅かにも動かない骸が紡いだ言葉に、オレはあっけに取られた。一瞬、頭が真っ白になる。
オレからは骸の顔は見えない。だから、コイツが何を考えてそんな事を言うのかも分からない。推測も出来ない。
ただ綺麗な藍色の髪と重力を無視した房が見える。開けた窓から入る風に、髪がさらさらと揺れる。

「……なんで?」

ようやく、たった数文字の問いかけが俺の口から出た。

「あなたが愚かなマフィアだから。いつまで経ってもその身体を僕に明け渡してくれないから」

どうしようもない事ばかりを骸は並べ立てる。嫌いと言われたのはショックだったけど、理由がそれなら傷付きもしないし呆れることもなかった。だって今更だ、そんな事。

「…………んな事言われても」
「だから嫌いです」

きらいきらいと繰り返す割に、骸はオレから離れようとしなかった。それどころか子供みたいにパーカーの裾を掴んでくる。

「君のせいで僕の世界が変わっていく。こんなに、世界は醜く滅ぼしてしまいたいほど汚れているのに、君の傍にいると――」

珍しく骸は言葉を詰まらせた。
ぎゅう、と皺が寄るほど握られた裾。骸の手は僅かに震えている。白い手の甲に、オレは自分の手を重ねた。
冷たい骸の手に、掌から体温が奪われる。オレ達の体温が混ざって冷たさも感じなくなって、少しずつ骸の手から力が抜けていく。

(いつからだっけ。)

揺れるカーテンの向こう、抜けるような青空を見ながらふと、オレは思った。
いつからだっけ。
こうやって、素肌で触れ合っても骸が嫌がらなくなったのは。
無防備に寝顔を見せるようになったのは。
『骸が隣にいること』が、当たり前になったのは。
――オレが、骸を好きになったのは。

「嫌いです、だいきらいです」

思い出したように言う骸の声に意識を引き戻される。悪口の語彙も多いくせに、今日はそれしか言ってくれない。
今日の骸は嘘つきだ。
そう、オレは結論付けた。
本当に嫌いなら、何も言わないまま幻術でも何でも使ってこの場から逃れている。オレから離れないなら、まだきっとオレは嫌われてない。
嘘つきにあげる言葉をひとつ思いついて、息を吸った。

「オレは好きだよ」

はっと顔を上げた骸は僅かに頬を赤らめて、小さく零した。

「あなたは、ずるい」




*****
むくつなむく!
今回骸のイメージは懐いた野良猫。少しずつ、距離を詰めてっていつか引き返せない所にいる自分に気がついてちょっと混乱すればいい。

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