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よみきり

路上の菓子売りの前で立ち止まる異邦人に、アラウディは立ち止まった。最近こちらの言葉を覚えたらしい東洋の人間は、にこにこと菓子売りと話をしている。
「何をしてるの」
「おや、アラウディ殿」
声を掛ければ、雨月はすぐにアラウディの方を向いて、にこりと会釈をした。
「こちらの方が新しい菓子を見せてくださって。アラウディ殿も甘いものが好きなのでござるか?」
問われ、アラウディは静かに首を振って否定する。
「あれが……ジョットが好きだろうと思って」
たまには土産をやらないと拗ねるから。思いついた中で一番納得のいく言い訳に雨月は頷いて、言葉を返す。
「私も同じ事を考えていたでござるよ」
にこにこと、おだやかな笑顔。絆されるつもりはないが、なぜかそれはアラウディの心に静かな波を立てる。
「…………君は」
「はい?」
「君はどれが好きなの」
ぱちり。漆黒の目を瞬かせた雨月は、すぐにまた笑顔に戻って籠の中の一つを指さした。
「これが……。こちらの国は甘さが強いので、こういう物の方が好きでござるよ」
「じゃあ、これと、それもちょうだい」
アラウディは雨月の指したものとジョットの好きそうな菓子をそれぞれ指さし、店主にそっけなく言う。
「そんな、悪いでござる」
「あれのついで。それに僕も半分もらうよ」
「……アラウディ殿も、これが好きなのでござるか?」
「こっちよりは、嫌いじゃないね」
薄く笑うと、雨月もまた笑う。二人で菓子を食べているのをGにでも見つかれば何かからかわれるかもしれないが、奴とてジョットには甘い。理由をいいさえすればどうにでもなる。
「アラウディ殿、どうぞ」
早速割られた菓子を目の前に出され、アラウディはそれを受け取って口を付ける。よく知った味であるのに、それはどこか、いつもより甘く感じられた。
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