きせつのもの
ぽふんと、体の上に乗った重み。それで、ツナは眠りの海から浮上した。ふわふわとまどろみに揺れる彼女に、声が掛かる。
「起きろ、ツナ」
「……うん?」
誰だろう。よく知った声だ。
ぼんやりとツナは考えた。眠りはまだツナの片足をつかんで夢に引きずり込もうとする。けれどそれを遮る声が、また、今度は耳元で響いた。
「……起きろ!」
「うわ!!」
今度こそ覚醒して、ツナは目を開ける。驚きの表情のままで胸元の重みに目を向ければ、そこにはリボーンが、いつもと変わらぬ黒スーツ姿で乗っかっていた。はたと、ツナは考える。
(何か約束、してたっけ?)
いや、していない。ようやく回りだした頭がそう答えを出す。
けれどリボーンは頻繁に、何の連絡もなしにツナのところにやって来る。今日もそうだろうか。けれど、ツナの勘はそうではない告げている。
それなら、なんだろう。不思議に思ったツナは、それでも普段どおりに朝の挨拶をしてみた。
「おはよう、リボーン」
「ちゃおっす、相変わらず寝起き悪りぃな」
軽口を叩いて、けれどリボーンはツナの上から降りようとしない。ツナがむくりと起きあがっても膝の上に移動するだけで、黒いまんまるの瞳はずっと彼女を見上げている。
「どうかした?」
「これ、プレゼントだぞ」
言葉とともに差し出された、赤。
それは、赤いカーネーションだった。
一輪の赤花が、柔らかな黄の紙とリボンで丁寧に包装されてツナの前に差し出されている。
「…………?」
花がそこにある理由が全く飲み込めていないツナをリボーンは口元で笑い、まだ寝ぼけてんのか?とからかった。
「今日は母の日だぞ」
「うん」
そういえば、そんな日もあった気がする。誰かに貰った、行事が細かくプリントされたカレンダーをおぼろげに思い浮かべ、こくんとツナは頷いた。
「母の日には、ママンにカーネーションをあげるもんだ」
「うん」
そういえば、そういう風習があったような。九代目を代役に押しつけられる父の日と違い、どこか他人事のように感じる『母の日』にツナはまだどこか違和感を拭えないまま、リボーンの話におとなしく耳を傾ける。
「だから、俺からママンにプレゼントだぞ」
「……うん」
間近で咲くカーネーションの赤はふわりと甘い香りがして。朝一番にそれをプレゼントしてくれたリボーンは、考えなくともツナの可愛い子供だった。
「……ありがとう、リボーン」
「どういたしまして」
ツナがにこりと笑って花を受け取ると、リボーンはどこか照れた様子で、そう答えた。
パジャマから私服に着替え、二人で軽い朝食を取ったところで、リボーンはツナの肩にぴょんと飛び乗って言った。
「ツナ、研究室に行くぞ」
「オレ今日はお休み貰ったんだけど?」
「用事があるぞ、俺も、お前も」
「そうなの?」
知らなかった。昨日の帰り、骸は何も言っていなかったのに。
不思議に思いながらも、ツナはリボーンにしたがって研究棟へ向かう。
その途中。広い廊下の奥から、黒と銀をまとう長身がこちらに向かってきていた。いつかも、こんな出会い方をしたような気がする。しばらく前の事を思い返しながら、ツナは声を掛けた。
「おはよう、スクアーロ」
「おう」
「マーモンもおはよう」
「おはよ」
スクアーロの頭上に乗った赤子を見上げてツナが言うと、マーモンはふわりと彼女の視線上に降りて、浮かぶ。
刹那、また赤が視界に飛び込んできた。
「あげるよ」
マーモンのちいさな手が、虚空から赤いカーネーションを掴み、差し出している。魔法か手品のようだと、ツナはその手際に感心し――その後ようやく、驚いた。
「…………え?」
「君にだよ」
自分の子供ではない虹の赤子と、カーネーション。
その取り合わせに疑問を抱き、けれど流されるままにツナはそれを受け取ってしまう。
「……ありがとう」
「気にしないで、いつもだから」
いつも。マーモンはそんな事を言うが、ツナははじめてだ。
どういう事だろうと肩のリボーンに問いかけようとすると、リボーンはこれまたどこからか取り出したカーネーションを一輪、スクアーロに手渡していた。よくよく見てみれば、スクアーロはリボーンに貰ったもの以外にも、綺麗にラッピングされたカーネーション一輪――花束といっていいのか、少しツナは悩んだ――を幾つか手にしている。
「ねえ、スクアーロ。これ……何?」
マーモンに貰ったカーネーションを指してツナが聞けば、スクアーロは自分の持つそれらに目を下ろす。その動きにさらりと銀髪が揺れて、白銀と赤が綺麗なコントラストを描いた。
ハスキーの掛かった声が、ツナに答える。
「母の日恒例だぜぇ。アルコバレーノがマザーに花をやる決まり、らしい」
「平等に一人一輪、全員にね」
「……そうなんだ」
スクアーロの回答と、それに附属するマーモンの説明に、ようやくツナは納得がいった。
これも。あの日リボーンに貰った挨拶と同じ定例、という事らしい。ツナはマーモンに渡された花を見た。リボーンに貰った一輪と同じカーネーションが、けれど微妙に色を変えてそこにある。
そういえば、スクアーロのハスキーボイスにツナはまた顔を上げる。
「研究室は雲雀のとこから行け」
「え?」
「ラルが来てるぜぇ」
虹のなりそこないとはいえ、ラルもアルコバレーノの一部と数えられているのか、例外なく定例に従うらしい。分かった、頷いてツナは雲雀の研究室へ向かった。
コンコンと一応ノックはして、ドアを押す。
「おじゃましまーす」
スクアーロの言葉通り、研究室の片隅に置かれた椅子にラルが座っていた。主の雲雀は自らのデスクで書き物をしていた。彼はツナとリボーンに一度目を向けたがすぐに書類に目を戻す。
「来たか」
ツナ達を待っていたらしい。ラルに近付きながら、ツナは頷いて答えた。
「うん、スクアーロがこっちからって言うから」
「そうか。……やる」
「ありがとう」
少しだけ桃色がかった赤の花。にこりとツナが笑んで礼を言えば、ラルは頬をほの赤くしてそっぽを向き、椅子から飛び降りた。そしてそのまま、研究室のドアへまっすぐ向かってしまう。
「帰る。雲雀、邪魔したな」
「うん」
「もう帰っちゃうの?」
「ああ、お前で最後だった。あいつらは隣にいるぞ」
そう言われてしまえば、ツナはもうラルを引き止める事が出来ない。困り顔のままツナはラルの小さな背を見送った。慰めるようにぽんぽんと頭を撫でて「気にすんな」と言うリボーンにほんのり笑顔を返して、隣――骸の研究室へ入った。
そこには研究員達に混じってティーカップ片手にきゃらきゃらと笑いあうハルと京子がいて、彼女達はすぐにツナに気づいてこっち、と手を振る。
「ツナさんやっと来ましたー」
「おはよう、ツナちゃん。おやつあるよ」
「おはようハル、京子ちゃん」
マザー全員が、呼び出されるのももしかして、定例かもしれない。ひそりと過ぎった予想が恐らくは正しいだろうと考えながら、ツナは二人のマザーに挨拶をした。
「さっきスクアーロさん帰っちゃったんです。もしかして、ツナさんすれ違いました?」
「うん、会ったよ」
ハルの問いに頷けば、京子は少しだけ眉を下げてそっと、いつもより小さな声で聞いてくる。
「隣も?」
「……うん」
桃色がかった赤を見せると、京子はそっか、と曖昧に笑う。リボーンが肩から飛び降りハルと京子の方へ向かうと、それとは逆に彼女達の傍に座っていたアルコバレーノ、スカルとコロネロがツナの元へ来た。
彼らはほぼ同時に、ツナへ赤い花を出した。アルコバレーノの赤子達はそろって、なにもない場所からカーネーションを取り出す。やっぱり魔法なのかな、とツナは小さく思ったが、すぐにその考えを払って花を受け取った。
「ありがとう、二人とも」
「別に、いつもだし」
「そうだぜコラ」
「らしいね」
四輪に増えたカーネーションを抱いて、ツナは嬉しそうに微笑む。部屋に戻れば、リボーンから貰った一輪もある。花瓶を探さなきゃな。
「いっぱい貰っちゃったな」
「っても一人一輪だぜコラ」
「うん。でも、みんな違う色だね」
掛けられた包装紙もリボンも、花の色も。それぞれが違っている。個性か、それとも故意にそういう風にしているのか。ツナはどちらか分からなかった。けれど、どっちにしろ嬉しい事に変わりは無かった。
「ツナちゃん、カップとっておいでよ。ハルちゃんと美味しいお茶を買ってきたんだよ」
「うん、ちょっと待ってて」
答えてツナは、研究室で使うカップを取りに向かう。
その途中で彼女はふと、立ち止まった。
研究室の隅、普段は書類が詰まれている棚の上に、見慣れない花瓶があった。そこには白いカーネーションが幾つも生けられていた。そして、リボーンがそれを見上げている。彼は棚の上に飛び乗ると、花瓶に同じカーネーションの白花を一輪、挿した。
どこか寂しげな後ろ姿に、ツナは声を掛けずにはいられなかった。
「リボーン?」
「これは、今までのママン達の分なんだぞ」
生き残れなかった、もしくはそれ以外の理由でいなくなってしまった母親達に送る花達。
ツナは思わずリボーンを持ち上げて、ぎゅうと小さな体を抱きしめた。
「ねえ、リボーン」
「どうした」
「来年も、カーネーション……欲しいな。赤いの」
「当然だぞ」
俺を産んだお前がそう簡単に死ぬとは思わねえぞ、小さく答えて、リボーンはニヒルに笑ってみせた。そうかもね、ツナも、くすりと笑った。
「起きろ、ツナ」
「……うん?」
誰だろう。よく知った声だ。
ぼんやりとツナは考えた。眠りはまだツナの片足をつかんで夢に引きずり込もうとする。けれどそれを遮る声が、また、今度は耳元で響いた。
「……起きろ!」
「うわ!!」
今度こそ覚醒して、ツナは目を開ける。驚きの表情のままで胸元の重みに目を向ければ、そこにはリボーンが、いつもと変わらぬ黒スーツ姿で乗っかっていた。はたと、ツナは考える。
(何か約束、してたっけ?)
いや、していない。ようやく回りだした頭がそう答えを出す。
けれどリボーンは頻繁に、何の連絡もなしにツナのところにやって来る。今日もそうだろうか。けれど、ツナの勘はそうではない告げている。
それなら、なんだろう。不思議に思ったツナは、それでも普段どおりに朝の挨拶をしてみた。
「おはよう、リボーン」
「ちゃおっす、相変わらず寝起き悪りぃな」
軽口を叩いて、けれどリボーンはツナの上から降りようとしない。ツナがむくりと起きあがっても膝の上に移動するだけで、黒いまんまるの瞳はずっと彼女を見上げている。
「どうかした?」
「これ、プレゼントだぞ」
言葉とともに差し出された、赤。
それは、赤いカーネーションだった。
一輪の赤花が、柔らかな黄の紙とリボンで丁寧に包装されてツナの前に差し出されている。
「…………?」
花がそこにある理由が全く飲み込めていないツナをリボーンは口元で笑い、まだ寝ぼけてんのか?とからかった。
「今日は母の日だぞ」
「うん」
そういえば、そんな日もあった気がする。誰かに貰った、行事が細かくプリントされたカレンダーをおぼろげに思い浮かべ、こくんとツナは頷いた。
「母の日には、ママンにカーネーションをあげるもんだ」
「うん」
そういえば、そういう風習があったような。九代目を代役に押しつけられる父の日と違い、どこか他人事のように感じる『母の日』にツナはまだどこか違和感を拭えないまま、リボーンの話におとなしく耳を傾ける。
「だから、俺からママンにプレゼントだぞ」
「……うん」
間近で咲くカーネーションの赤はふわりと甘い香りがして。朝一番にそれをプレゼントしてくれたリボーンは、考えなくともツナの可愛い子供だった。
「……ありがとう、リボーン」
「どういたしまして」
ツナがにこりと笑って花を受け取ると、リボーンはどこか照れた様子で、そう答えた。
パジャマから私服に着替え、二人で軽い朝食を取ったところで、リボーンはツナの肩にぴょんと飛び乗って言った。
「ツナ、研究室に行くぞ」
「オレ今日はお休み貰ったんだけど?」
「用事があるぞ、俺も、お前も」
「そうなの?」
知らなかった。昨日の帰り、骸は何も言っていなかったのに。
不思議に思いながらも、ツナはリボーンにしたがって研究棟へ向かう。
その途中。広い廊下の奥から、黒と銀をまとう長身がこちらに向かってきていた。いつかも、こんな出会い方をしたような気がする。しばらく前の事を思い返しながら、ツナは声を掛けた。
「おはよう、スクアーロ」
「おう」
「マーモンもおはよう」
「おはよ」
スクアーロの頭上に乗った赤子を見上げてツナが言うと、マーモンはふわりと彼女の視線上に降りて、浮かぶ。
刹那、また赤が視界に飛び込んできた。
「あげるよ」
マーモンのちいさな手が、虚空から赤いカーネーションを掴み、差し出している。魔法か手品のようだと、ツナはその手際に感心し――その後ようやく、驚いた。
「…………え?」
「君にだよ」
自分の子供ではない虹の赤子と、カーネーション。
その取り合わせに疑問を抱き、けれど流されるままにツナはそれを受け取ってしまう。
「……ありがとう」
「気にしないで、いつもだから」
いつも。マーモンはそんな事を言うが、ツナははじめてだ。
どういう事だろうと肩のリボーンに問いかけようとすると、リボーンはこれまたどこからか取り出したカーネーションを一輪、スクアーロに手渡していた。よくよく見てみれば、スクアーロはリボーンに貰ったもの以外にも、綺麗にラッピングされたカーネーション一輪――花束といっていいのか、少しツナは悩んだ――を幾つか手にしている。
「ねえ、スクアーロ。これ……何?」
マーモンに貰ったカーネーションを指してツナが聞けば、スクアーロは自分の持つそれらに目を下ろす。その動きにさらりと銀髪が揺れて、白銀と赤が綺麗なコントラストを描いた。
ハスキーの掛かった声が、ツナに答える。
「母の日恒例だぜぇ。アルコバレーノがマザーに花をやる決まり、らしい」
「平等に一人一輪、全員にね」
「……そうなんだ」
スクアーロの回答と、それに附属するマーモンの説明に、ようやくツナは納得がいった。
これも。あの日リボーンに貰った挨拶と同じ定例、という事らしい。ツナはマーモンに渡された花を見た。リボーンに貰った一輪と同じカーネーションが、けれど微妙に色を変えてそこにある。
そういえば、スクアーロのハスキーボイスにツナはまた顔を上げる。
「研究室は雲雀のとこから行け」
「え?」
「ラルが来てるぜぇ」
虹のなりそこないとはいえ、ラルもアルコバレーノの一部と数えられているのか、例外なく定例に従うらしい。分かった、頷いてツナは雲雀の研究室へ向かった。
コンコンと一応ノックはして、ドアを押す。
「おじゃましまーす」
スクアーロの言葉通り、研究室の片隅に置かれた椅子にラルが座っていた。主の雲雀は自らのデスクで書き物をしていた。彼はツナとリボーンに一度目を向けたがすぐに書類に目を戻す。
「来たか」
ツナ達を待っていたらしい。ラルに近付きながら、ツナは頷いて答えた。
「うん、スクアーロがこっちからって言うから」
「そうか。……やる」
「ありがとう」
少しだけ桃色がかった赤の花。にこりとツナが笑んで礼を言えば、ラルは頬をほの赤くしてそっぽを向き、椅子から飛び降りた。そしてそのまま、研究室のドアへまっすぐ向かってしまう。
「帰る。雲雀、邪魔したな」
「うん」
「もう帰っちゃうの?」
「ああ、お前で最後だった。あいつらは隣にいるぞ」
そう言われてしまえば、ツナはもうラルを引き止める事が出来ない。困り顔のままツナはラルの小さな背を見送った。慰めるようにぽんぽんと頭を撫でて「気にすんな」と言うリボーンにほんのり笑顔を返して、隣――骸の研究室へ入った。
そこには研究員達に混じってティーカップ片手にきゃらきゃらと笑いあうハルと京子がいて、彼女達はすぐにツナに気づいてこっち、と手を振る。
「ツナさんやっと来ましたー」
「おはよう、ツナちゃん。おやつあるよ」
「おはようハル、京子ちゃん」
マザー全員が、呼び出されるのももしかして、定例かもしれない。ひそりと過ぎった予想が恐らくは正しいだろうと考えながら、ツナは二人のマザーに挨拶をした。
「さっきスクアーロさん帰っちゃったんです。もしかして、ツナさんすれ違いました?」
「うん、会ったよ」
ハルの問いに頷けば、京子は少しだけ眉を下げてそっと、いつもより小さな声で聞いてくる。
「隣も?」
「……うん」
桃色がかった赤を見せると、京子はそっか、と曖昧に笑う。リボーンが肩から飛び降りハルと京子の方へ向かうと、それとは逆に彼女達の傍に座っていたアルコバレーノ、スカルとコロネロがツナの元へ来た。
彼らはほぼ同時に、ツナへ赤い花を出した。アルコバレーノの赤子達はそろって、なにもない場所からカーネーションを取り出す。やっぱり魔法なのかな、とツナは小さく思ったが、すぐにその考えを払って花を受け取った。
「ありがとう、二人とも」
「別に、いつもだし」
「そうだぜコラ」
「らしいね」
四輪に増えたカーネーションを抱いて、ツナは嬉しそうに微笑む。部屋に戻れば、リボーンから貰った一輪もある。花瓶を探さなきゃな。
「いっぱい貰っちゃったな」
「っても一人一輪だぜコラ」
「うん。でも、みんな違う色だね」
掛けられた包装紙もリボンも、花の色も。それぞれが違っている。個性か、それとも故意にそういう風にしているのか。ツナはどちらか分からなかった。けれど、どっちにしろ嬉しい事に変わりは無かった。
「ツナちゃん、カップとっておいでよ。ハルちゃんと美味しいお茶を買ってきたんだよ」
「うん、ちょっと待ってて」
答えてツナは、研究室で使うカップを取りに向かう。
その途中で彼女はふと、立ち止まった。
研究室の隅、普段は書類が詰まれている棚の上に、見慣れない花瓶があった。そこには白いカーネーションが幾つも生けられていた。そして、リボーンがそれを見上げている。彼は棚の上に飛び乗ると、花瓶に同じカーネーションの白花を一輪、挿した。
どこか寂しげな後ろ姿に、ツナは声を掛けずにはいられなかった。
「リボーン?」
「これは、今までのママン達の分なんだぞ」
生き残れなかった、もしくはそれ以外の理由でいなくなってしまった母親達に送る花達。
ツナは思わずリボーンを持ち上げて、ぎゅうと小さな体を抱きしめた。
「ねえ、リボーン」
「どうした」
「来年も、カーネーション……欲しいな。赤いの」
「当然だぞ」
俺を産んだお前がそう簡単に死ぬとは思わねえぞ、小さく答えて、リボーンはニヒルに笑ってみせた。そうかもね、ツナも、くすりと笑った。