犬と僕の暮らし
大型の犬と子ライオンが一緒に寝てるとか、こいつらの世界は平和で、羨ましいな。種族も大きさも全く違うのに、仲間でもないのに、仲良くして。
そんなことを考えながら、綱吉は両手を伸ばしてわさわさとどちらの頭も撫でてやった。
「かわいいなあ、こいつら」
綱吉は思わず笑顔になってしまう。
「飼うのか?」
後ろから、男の声が問う。しかし綱吉は二匹を撫でる手を止めることも、振り返ることもせず答えた。
「まさか。ちゃんと主人がいるから、こいつ」
こいつ、というのは犬のほうだった。子ライオンのナッツは前々から綱吉の傍にいる、いわゆる相棒だ。それは男だって知っている筈なのに。
しかし、そう。それが、問題だった。この秋田犬の主人がどこにいるか、綱吉には分からない。住所も分からなければ名前もはっきり覚えてない。顔を見ればすぐに判別は出来るが、そうしたくない理由だってある。
ちょっとの間だけはぐれたナッツを回収する、その簡単すぎる任務のついでに綱吉が拾ってしまったこの犬は、多分あの青年が連れる動物の片割れ。
「その主人の名は?」
男は静かな口調で、もう一度問いかけてくる。それに綱吉は少し考えて、返事をした。記憶が薄いわけではなかった。いつも数人で動いてるから、名前が出てくるのに時間がかかるだけ。銀髪の爆弾魔に呼ばれてた名は――
「……確か、山本だったかな」
ぴくり、犬の耳が動いて綱吉を見る。恐らく正解らしい。賢い子だな。男は呟くように言って、綱吉も肯定に頷いた。賢く忠実なその犬は、しかしてやはり主人が恋しいらしい。
「ご主人探さなきゃな、次郎」
綱吉が名を呼んで頭を撫でてやれば、秋田犬は目を細め尻尾を振った。
「どうして名を知っているんだ?」
「呼んでたの、聞いてたから」
答えれば綱吉の後ろにいた男は、かつんと靴音を鳴らすと少年の隣にしゃがみこんでもふもふしたナッツのたてがみを撫でる。そして、言った。
「……敵か」
「ん、そうなんだ」
次郎は帰してやりたい。けど、山本には正直会いたくはない。それは綱吉の本音だった。更に言ってしまえば、会って必然起こってしまう戦闘を避けたい。彼は面倒くさがりの性分で、そもそも本質的には、好戦的ではない。――おそらくかの主人だって、そうだろうけれど。
「綱吉」
名を呼ばれて、綱吉が見上げれば金髪に透けて男のオレンジ色をした目が笑っていた。
「良い日を視てやろう。たまには善行もしなければ、地獄に落ちるぞ」
綱吉も、琥珀色の瞳を橙色に煌めかせて笑い返す。
「今さらだよ、ジョット」
そんなことを考えながら、綱吉は両手を伸ばしてわさわさとどちらの頭も撫でてやった。
「かわいいなあ、こいつら」
綱吉は思わず笑顔になってしまう。
「飼うのか?」
後ろから、男の声が問う。しかし綱吉は二匹を撫でる手を止めることも、振り返ることもせず答えた。
「まさか。ちゃんと主人がいるから、こいつ」
こいつ、というのは犬のほうだった。子ライオンのナッツは前々から綱吉の傍にいる、いわゆる相棒だ。それは男だって知っている筈なのに。
しかし、そう。それが、問題だった。この秋田犬の主人がどこにいるか、綱吉には分からない。住所も分からなければ名前もはっきり覚えてない。顔を見ればすぐに判別は出来るが、そうしたくない理由だってある。
ちょっとの間だけはぐれたナッツを回収する、その簡単すぎる任務のついでに綱吉が拾ってしまったこの犬は、多分あの青年が連れる動物の片割れ。
「その主人の名は?」
男は静かな口調で、もう一度問いかけてくる。それに綱吉は少し考えて、返事をした。記憶が薄いわけではなかった。いつも数人で動いてるから、名前が出てくるのに時間がかかるだけ。銀髪の爆弾魔に呼ばれてた名は――
「……確か、山本だったかな」
ぴくり、犬の耳が動いて綱吉を見る。恐らく正解らしい。賢い子だな。男は呟くように言って、綱吉も肯定に頷いた。賢く忠実なその犬は、しかしてやはり主人が恋しいらしい。
「ご主人探さなきゃな、次郎」
綱吉が名を呼んで頭を撫でてやれば、秋田犬は目を細め尻尾を振った。
「どうして名を知っているんだ?」
「呼んでたの、聞いてたから」
答えれば綱吉の後ろにいた男は、かつんと靴音を鳴らすと少年の隣にしゃがみこんでもふもふしたナッツのたてがみを撫でる。そして、言った。
「……敵か」
「ん、そうなんだ」
次郎は帰してやりたい。けど、山本には正直会いたくはない。それは綱吉の本音だった。更に言ってしまえば、会って必然起こってしまう戦闘を避けたい。彼は面倒くさがりの性分で、そもそも本質的には、好戦的ではない。――おそらくかの主人だって、そうだろうけれど。
「綱吉」
名を呼ばれて、綱吉が見上げれば金髪に透けて男のオレンジ色をした目が笑っていた。
「良い日を視てやろう。たまには善行もしなければ、地獄に落ちるぞ」
綱吉も、琥珀色の瞳を橙色に煌めかせて笑い返す。
「今さらだよ、ジョット」