犬と僕の暮らし
答えは、出てしまった。――おおよそ、望まれる形で。
アラウディがまず連絡を付けたのは、綱吉の方だった。何故なら依頼したのは彼の方が早かったから。ただそれだけに過ぎない。
今日は仕事がなかったらしい、綱吉はすぐにアラウディの住まい、仕事部屋にしている書斎へやってくると、ナッツを抱えたまま
「どうでしたか?」
と先に問うてきた。急かすような口調の彼にアラウディはらしくないね、と漏らして来客用テーブルの上に乗る飲み物を指さす。
「落ち着いて、それ飲んでなよ。僕は資料を出すから」
「これは?」
「レモネード。君から貰った百花蜜の使い道に困ってね、雨月に聞いたらレシピを貰ったんだ」
「そうなんですか……」
綱吉はそれ以上問わず、ナッツをソファの隣に座らせてレモネードに口をつける。おいしいです、と呟きつつも一口飲んだきりでグラスを置き、アラウディを琥珀色の瞳でしっかりと見据えた。
「……君は、全く」
薄い苦笑いを浮かべてアラウディは資料の一枚を取り出して、綱吉に手渡した。難しい言葉が並ぶそれをどうにか解読しようと綱吉は集中する。ナッツも綱吉の気配が普段と違うのが伝わったのだろう、そわそわと落ち着かない様子でいる。
数分後。目当ての項目をようやく見つけたらしい、綱吉は小さく息を呑んで、
「やっぱり」
そう、微かな声で言った。
覚えていたのかい、アラウディの問いかけには否定をして、彼はそれでも、分かったんですと答えた。不思議な言葉だが、ボンゴレの一員であるのならありえないことでは無いだろう。
「多分、そうじゃないかって。山本と会った時から思ってたんです」
綱吉はアラウディへ資料を返し、一度頭を下げると眉を下げて微笑った。
「ありがとうございます、アラウディさん。ごめんなさい、色々……その、大変だったって…その、ジョットが手伝ったとか…」
「気にしないで。僕は依頼に答えただけ」
そこまで言ってアラウディは、すうと息を吸って薄青の瞳で少年を見た。
「この後は君が決めることだ。君の全てを掛けて、選ぶといい」
「……はい」
言わずとも、彼は答えを決めてしまっているのだろう。それを、アラウディは止めることは出来ない。綱吉は用件だけ済ますとナッツを頭に乗せ急ぎ足で帰ってしまう。
今のアラウディにできるのはただ、もう一人の依頼者に同じ回答を手渡すだけ。
「向こうにも、言わないとね」
呟いて、彼はディスプレイに並ぶ文字列から、慣れた番号を選んだ。
アラウディがまず連絡を付けたのは、綱吉の方だった。何故なら依頼したのは彼の方が早かったから。ただそれだけに過ぎない。
今日は仕事がなかったらしい、綱吉はすぐにアラウディの住まい、仕事部屋にしている書斎へやってくると、ナッツを抱えたまま
「どうでしたか?」
と先に問うてきた。急かすような口調の彼にアラウディはらしくないね、と漏らして来客用テーブルの上に乗る飲み物を指さす。
「落ち着いて、それ飲んでなよ。僕は資料を出すから」
「これは?」
「レモネード。君から貰った百花蜜の使い道に困ってね、雨月に聞いたらレシピを貰ったんだ」
「そうなんですか……」
綱吉はそれ以上問わず、ナッツをソファの隣に座らせてレモネードに口をつける。おいしいです、と呟きつつも一口飲んだきりでグラスを置き、アラウディを琥珀色の瞳でしっかりと見据えた。
「……君は、全く」
薄い苦笑いを浮かべてアラウディは資料の一枚を取り出して、綱吉に手渡した。難しい言葉が並ぶそれをどうにか解読しようと綱吉は集中する。ナッツも綱吉の気配が普段と違うのが伝わったのだろう、そわそわと落ち着かない様子でいる。
数分後。目当ての項目をようやく見つけたらしい、綱吉は小さく息を呑んで、
「やっぱり」
そう、微かな声で言った。
覚えていたのかい、アラウディの問いかけには否定をして、彼はそれでも、分かったんですと答えた。不思議な言葉だが、ボンゴレの一員であるのならありえないことでは無いだろう。
「多分、そうじゃないかって。山本と会った時から思ってたんです」
綱吉はアラウディへ資料を返し、一度頭を下げると眉を下げて微笑った。
「ありがとうございます、アラウディさん。ごめんなさい、色々……その、大変だったって…その、ジョットが手伝ったとか…」
「気にしないで。僕は依頼に答えただけ」
そこまで言ってアラウディは、すうと息を吸って薄青の瞳で少年を見た。
「この後は君が決めることだ。君の全てを掛けて、選ぶといい」
「……はい」
言わずとも、彼は答えを決めてしまっているのだろう。それを、アラウディは止めることは出来ない。綱吉は用件だけ済ますとナッツを頭に乗せ急ぎ足で帰ってしまう。
今のアラウディにできるのはただ、もう一人の依頼者に同じ回答を手渡すだけ。
「向こうにも、言わないとね」
呟いて、彼はディスプレイに並ぶ文字列から、慣れた番号を選んだ。