ぐんじんかぞく。
綱吉を迎えに来る人間はバリエーションに富んでいる。
ある時は、帽子にカメレオンを乗せた黒いスーツの男。
またある時はライダースーツの青年。いつぞやは強面の黒衣が現れたこともある。
――不審者だな、お前達。
ある日、ライダースーツと黒スーツに向けてそう呟いたのは綱吉の母親。
それ以来彼女は誰か別のものが迎えに来る度に、それを連絡するようになった。
不審者を園に迎えるのを避けたい正一としては非常に助かっている。
今日のお迎えは朝に綱吉から渡された連絡帳に書いてあった通り、ランドセルを背負った少年だった。
「こんにちは、入江先生」
すっかり顔見知りになった少年が色違いの目を細め、にこりと笑って正一に挨拶する。
「こんにちは、骸君」
挨拶を返す正一も、優しく微笑んだ。
少年は綱吉のおとなりさんで、名を六道骸という。
共働きである両親の帰りが遅い日は、少年の家で食事を取ることもあるらしい。
そのため、骸が綱吉を迎えに来ることは多く、綱吉は非常に骸に懐いていた。
――随分としっかりした子供。
それが、骸に対して正一が抱いた印象だった。まだ小学生なのに大人のように丁寧な口調で話し、動作もやけに大人びている。
「学校はもう終わったのかい?」
「はい。今日は早いんです」
「そっか。学校が遠いのも大変だね」
「ずっとですから、慣れています」
肩を竦めて骸は答えた。
住んでいるのは並盛の学区だが、家庭の事情で隣町の黒曜に通っている。
そう説明したのは、骸自身。
正一としてはその辺りの事情に深く介入するつもりはなく、そういう家庭もあるのだと思うだけだった。
彼は教室を覗いて、声を掛ける。骸もそれに続いた。
「綱吉君、お迎えだよ。準備をしておいで」
「帰りますよ、綱吉君」
骸の顔を見るなり綱吉はぱっと嬉しそうな表情を浮かべ、側にいた二人の子供に言った。
「むくろがきたから、オレかえるね」
「おう、つづきはあしたな」
「きをつけてください」
黒髪と銀髪の二人にぶんぶんと手を振って別れを告げ、今度は正一にあいさつをする。
「しょーちゃんせんせ、ばいばい。またあしたね!」
「失礼します、入江先生」
「うん、また明日」
園の入口で、正一は綱吉と骸を見送る。
手を繋いで帰るふたりはまるで兄弟のようだった。