このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

Ciao,il mio iride

「ふあー、あったかいなぁ」
ツナは木陰に座り、ぼんやりと空を見上げていた。いつの間に日課になった散歩の途中、彼女はたまに、こうして無為に時を過ごす。
「昼寝したいな……でも、うっかり夕方になって身体冷やしたらいけないし」
無意識にツナの手が自身の腹部に触れる。未だ欠片も膨らんでいないそこに、命があることを彼女はなんとなく感じていた。
「うん、ひなたぼっこだけにしよう」
一人頷いたツナはまた空を見上げようとして、止まった。
「……?」
視界の端で何かが動いたような気がする。かさ、と小さく音の立った場所を見れば、そこに奇妙な生物がいた。
緑色の、そんなに大きくは無い生き物。
それはするするとツナに近付き、つぶらな瞳で彼女を見上げた。ぺろ、と伸ばされた長い舌で、ようやくツナはそれがカメレオンだと理解する。
「……お前、どこから来たの?」
無論カメレオンは答えない。それだけでなく、更にツナに近付き、その身体によじよじと登り始める。
「ちょ、待って、乗っ!?」
慌てるツナをよそにカメレオンは上り続け、ふと、彼女の腹部でぴたりと動きを止めた。
そしてそのまま眼を閉じた。
「…………えっ、寝るの?」
おそるおそるといった様子でツナはカメレオンに触れる。そして、そのすべすべの体に眼を細めた。動物を飼ったことは無いが、こういうのは案外、かわいいかもしれない。
「野生じゃないよねぇ」
野生にしては人に慣れ過ぎている。ツナの記憶が正しければ、こんな場所に野生のカメレオンはいないだろう。生息域などの細かい問題は元から彼女の知識には無い。
「ま、いっか、大人しいみたいだし」
面倒を嫌がる性格を発揮したツナは再び空を見上げた。




「ねぇ、君が連れ出したの?」
気配なく、不意に掛けられた低く冷静な声に、暇つぶしにカメレオンを観察していたツナは顔を上げた。ほぼ真正面に黒髪に白衣の青年が立ち、ツナを見下ろしている。
「つれ、だす?」
「そのカメレオンだよ。こっちは必死で探してたのに……」
「……こいつ、あなたのですか?」
「違うよ。……まぁ、今面倒見てるのは僕だけど」
いつの間にカメレオンはツナの肩までよじ登っていた。青年はひょいとカメレオンをつまみ上げると、ぽつりと呟いた。
「……どうしてあの子に近付いたの?」
カメレオンに聞いているらしい。
「答えないと咬み殺すよ、レオン」
レオンと呼ばれたカメレオンは一度震えるとちら、とツナを見た。つられて、青年も。
「……君」
「はい?」
「その下げてるタグは……?」
どうやらレオンはそこを見ていたらしい。ツナは小さなプレートをつまみ上げ、青年にそれを見せた。
「Drシャマルが付けてろって……」
「――ああ、」
青年は納得して頷いた。
「君が、今度のマザーか」
「……知ってるんですか?」
「うん、関係者だから。……道理でレオンが近付く訳だ」
青年が手を差し出す。それを借りて、ツナは立ち上がった。
「ありがとうございます」
「あんまり母体に負担を掛けるんじゃないよ。…まあ、そんなに簡単に流産なんて起こらないけど」
「気をつけます。…あ、オレは沢田ツナっていいます」
あなたは、と恐る恐るツナは聞く。青年は僅かに口元を緩めて答えた。
「僕は雲雀恭弥。あっちの研究棟で働いてる。……今度遊びにおいで」
はい、とツナは笑顔で頷いた。

*****
ひばーどだしそこねた!!
じゃなくて、雲雀さん&レオンです。ヒバードで動物=雲雀さんになっていたらしく、こういうコンビが脳内に誕生していました。
しかしカメレオンは咬み殺せないと思います。
4/19ページ
スキ