Ciao,il mio iride
「雲雀さん、います?」
がちゃ、と雲雀さんの研究室を開けてのぞき込んで、けれど当の雲雀さんは留守だった。けど、代わりにソファに赤子の姿。……いっつも、こっちにいるよね。
「あれ、ラルちゃん。こんにちは」
六道先生のところにはいかないけれど、雲雀さんのところには、よく顔を出しているらしい。ラルちゃんはオレを見て、すぐに視線を雲雀さんのデスクにやって答えた。
「あいつは留守だ。さっき呼ばれて出ていった」
「そっか……」
「用事があったのか?」
「そういう訳じゃないんだけど」
オレは、片手に下げた紙袋を見せて、ラルちゃんに提案してみた。
「おやつ食べる?お隣に持っていくには少なくて、オレが食べるにはちょっと多いの」
本当はお隣用だったんだけど、道中いろんな人に奪われてあと二人分しか残ってない。
だからこっちに来たんだけど、雲雀さんはいなかった。けど、ちょうどラルちゃんがいるし。これは逆にナイスタイミングという訳で。
しばらく無言で考え込んだラルちゃんは、ぴょんとソファから飛び降りるとてこてとこ戸棚に歩いて、ちいさな手を伸ばしてその棚を開いた。驚くことにその中にはちいさな冷蔵庫。勝手知ってるなあ……っていうか怒られないのかな。いいのかな。
「ツナ」
「なに?」
「そこに座っていろ。出来合いだが、緑茶でいいか?」
「う、うん。けど、勝手にいいの?」
「構わん」
いいんだ。
言われるままラルちゃんが座ってた場所の向かい側に腰掛けて、がさがさと紙袋からお菓子を出してみる。失敗しなかったカップケーキがふたつ。うっかり九代目に呼び止められてついでにおじさま達に捕まったせいで結構減っちゃった。うまくできたのを、死守したオレだったりする。
「おじさま達め……」
多少の恨み言も許されるだろう。うん。今度何かお菓子を巻き上げてやろう。
内心で固く誓ってる間にラルちゃんがペットボトルの緑茶とコップを手に戻ってきた。ちいさな手がとんとんとコップを置いて、お茶を注いでくれる。何か申し訳ないけど止められなかった。
「飲め」
「ありがとう。カップケーキ、どうぞ」
「ああ」
ラルちゃんはケーキを一つ取ると、ぺりぺりと包装を剥きながらぽつりとつぶやいた。
「お前も、よく作るのか?」
「え?…………うーん、そんなに頻繁じゃないけど。たまに」
「そうか」
お前も。ラルちゃんはそんなことを言った。
たぶん、京子ちゃんも、ってことなんだろうなあ。京子ちゃんとハルはしょっちゅう六道先生の研究室におやつの差し入れをしてくれる。それが、雲雀さんにもっていうのは、自然な話で。
もくもくとカップケーキを食べるラルちゃん。ちょっとリスみたいでかわいい。
「甘いの、好き?」
「苦手ではない」
すごく遠回しな、肯定……でいいのかな。あんまりそれに反応できずに、オレもカップケーキを食べる。今日は生地に砕いたナッツを混ぜ込んでみた。んー、悪くない。
「次はチョコチップでも入れてみよう」
「それも悪くないな」
独り言にラルちゃんが反応した。なんかうれしくなったので、今度作ってみよう。ナッツとチョコのカップケーキ。そしたら、またここに持ってこよう。
「味見してくれる?」
「時間が合えば、だ」
そんなこと言いつつラルちゃんはちゃんと味見してくれそうな予感がして、オレはにこにことラルちゃんに笑い掛けた。
やっぱり女の子は甘いものが好きなのかもしれない。
がちゃ、と雲雀さんの研究室を開けてのぞき込んで、けれど当の雲雀さんは留守だった。けど、代わりにソファに赤子の姿。……いっつも、こっちにいるよね。
「あれ、ラルちゃん。こんにちは」
六道先生のところにはいかないけれど、雲雀さんのところには、よく顔を出しているらしい。ラルちゃんはオレを見て、すぐに視線を雲雀さんのデスクにやって答えた。
「あいつは留守だ。さっき呼ばれて出ていった」
「そっか……」
「用事があったのか?」
「そういう訳じゃないんだけど」
オレは、片手に下げた紙袋を見せて、ラルちゃんに提案してみた。
「おやつ食べる?お隣に持っていくには少なくて、オレが食べるにはちょっと多いの」
本当はお隣用だったんだけど、道中いろんな人に奪われてあと二人分しか残ってない。
だからこっちに来たんだけど、雲雀さんはいなかった。けど、ちょうどラルちゃんがいるし。これは逆にナイスタイミングという訳で。
しばらく無言で考え込んだラルちゃんは、ぴょんとソファから飛び降りるとてこてとこ戸棚に歩いて、ちいさな手を伸ばしてその棚を開いた。驚くことにその中にはちいさな冷蔵庫。勝手知ってるなあ……っていうか怒られないのかな。いいのかな。
「ツナ」
「なに?」
「そこに座っていろ。出来合いだが、緑茶でいいか?」
「う、うん。けど、勝手にいいの?」
「構わん」
いいんだ。
言われるままラルちゃんが座ってた場所の向かい側に腰掛けて、がさがさと紙袋からお菓子を出してみる。失敗しなかったカップケーキがふたつ。うっかり九代目に呼び止められてついでにおじさま達に捕まったせいで結構減っちゃった。うまくできたのを、死守したオレだったりする。
「おじさま達め……」
多少の恨み言も許されるだろう。うん。今度何かお菓子を巻き上げてやろう。
内心で固く誓ってる間にラルちゃんがペットボトルの緑茶とコップを手に戻ってきた。ちいさな手がとんとんとコップを置いて、お茶を注いでくれる。何か申し訳ないけど止められなかった。
「飲め」
「ありがとう。カップケーキ、どうぞ」
「ああ」
ラルちゃんはケーキを一つ取ると、ぺりぺりと包装を剥きながらぽつりとつぶやいた。
「お前も、よく作るのか?」
「え?…………うーん、そんなに頻繁じゃないけど。たまに」
「そうか」
お前も。ラルちゃんはそんなことを言った。
たぶん、京子ちゃんも、ってことなんだろうなあ。京子ちゃんとハルはしょっちゅう六道先生の研究室におやつの差し入れをしてくれる。それが、雲雀さんにもっていうのは、自然な話で。
もくもくとカップケーキを食べるラルちゃん。ちょっとリスみたいでかわいい。
「甘いの、好き?」
「苦手ではない」
すごく遠回しな、肯定……でいいのかな。あんまりそれに反応できずに、オレもカップケーキを食べる。今日は生地に砕いたナッツを混ぜ込んでみた。んー、悪くない。
「次はチョコチップでも入れてみよう」
「それも悪くないな」
独り言にラルちゃんが反応した。なんかうれしくなったので、今度作ってみよう。ナッツとチョコのカップケーキ。そしたら、またここに持ってこよう。
「味見してくれる?」
「時間が合えば、だ」
そんなこと言いつつラルちゃんはちゃんと味見してくれそうな予感がして、オレはにこにことラルちゃんに笑い掛けた。
やっぱり女の子は甘いものが好きなのかもしれない。
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