01/新しい世界
あれから他愛もない話をしているうちに、寮へと着きました。
でも僕は、目の前の光景に茫然として固まりました。
な、なんですかこの豪華な建物はっ!
「驚いたか、凛」
「は、はい」
だ、だって! どう見たって寮じゃなくて、高級なホテルとかみたいなんですよっ!
いえ、むしろお城じゃ……
「まぁ、そのうち慣れるさ」
「は、い」
だといいのですが;
「あぁ、忘れるところだった。はい、凛」
そういって目の前にさっと差し出されたのは銀色のカード。
「これ……」
色は違うけれど、さっき理事長さんに差し出されたカードと同じです。
まさか、春人さん……
不安になって、僕は春人さんをおずおずと見上げる。
「あ、勘違いするなよ? これはさっきのカードとは違うからな」
「そう、ですか」
よかった、春人さんは僕に甘いところがあるので心配してしまいました;
でも、そうですよね。
いくら僕に甘いといっても、さすがに倫理感に引っかかりそうなことはしないですよね。
「これは学生証とクレジットカードと寮の鍵を兼ねたカードだ。無くさないようにな?」
「あ、はい、わかりました。ありがとうございます」
春人さんからカードを受け取って、お財布の中へ大事にしまう。
いろいろ兼ね備えた便利なカードですが、それだけなくすと大変なものです。
なくさないように大切に保管します!
「じゃあ、もう行くな」
「はい、送ってくれてありがとうございました」
「どういたしまして。凛──」
「ぅわっ!」
いきなり春人さんに頭を撫でられました。
まるで、小さい子にするみたいに。
もう、春人さんったら;
そう少し気恥ずかしい気持ちで見上げれば、慈愛に満ちた、優しい顔をした春人さんと目が合いました。
優しすぎるその表情に、思わず頬が赤く染まる。
「頑張りなさい。でも、無理はしすぎないように」
「──はい」
そう言う声も、僕を撫でてくる手も、とても優しくて温かいです。
久々に感じる温かさに、自然と顔がゆるむ。
ふふっ、心がなんだかぽかぽかします。
「じゃあ、またな」
「はい、また……」
春人さんは最後に僕の頭をぽんぽんっと撫でたあと、背中を向けて去っていきます。
僕は少し寂しくなりながらも、春人さんが見えなくなるまでその背中を見送りました。
春人さんを見送ったあと、僕は覚悟を決めて寮の入り口へと向かう。
中はどうなっているんでしょう。
ドキドキしながら扉に手をかけて、ゆっくりと開いていく。
「──っ!」
でも、中を見て思わず扉を閉めちゃいました。
な、中は二割増しです;
いえ、もっとでしょうか?
おそるおそるもう一度開けて、やっぱり閉める。
や、やっぱりこんな豪華なところは無理です!
「なにやってんだ? お前」
「わ……っ!」
あまりの豪華さにおどおどしていると、いきなり中から扉が開きました。
驚いて見上げると──
そこには、エプロンを着けた熊のような大きな方がいました。
す、すごい迫力です;
「おい……ってお前、編入生か」
「あ、は、はい。編入生の、沖守 凛と申します。よろしくお願いいたします」
挨拶は大切です。
頭を下げて丁寧に挨拶しました。
あれ? ジッと見られてます。
な、なにか変なところでもあったのでしょうか?
「あ、の……;」
「あ、悪い; 俺は寮監の大隈 晃 だ。よろしくな」
「はい」
なにかしてしまったのかと心配しましたけれど、大丈夫だったみたいです。
優しい笑顔を見せてくれました。
よかったです。
「寮のこと、軽く説明するから中入れ」
「あ、はい」
そう寮監さんに招かれて中に入る。
うぅ、やっぱり豪華すぎて落ち着きません;
「部屋に向かいながら説明するから着いてきてくれ」
「はい」
そう言って歩いてく寮監さんに着いて行く。
さりげなく僕の歩調に合わせてくれてます。
優しい方です。
この方が寮監さんでよかった。
「1階はエントランスとエレベーターホールだけだ。5台あるが、一番右とその隣のエレベーターは専用だから使うな」
「わかりました」
一番右とその隣ですね。
間違えて乗らないように気をつけますっ!
「乗れ、沖守」
「はい」
話している内にエレベーターホールに着きました。
寮監さんに促されて、僕はエレベーターに乗りこむ。
──エレベーターの中も凄く豪華です。
天井も床もキラキラしてます。
僕には眩しいです;
「2階は談話室やシアタールームとかの共有スペース。3階は食堂で──ん? どうした沖守」
「あ、す、すみません。大丈夫です、続けてください;」
「そうか? じゃあ……4階はスーパーで、お前の部屋は37階の498号室だ。わかったか?」
「はい、わかりました」
自分の頭の中で反芻して頷く。
大丈夫、しっかり覚えました。
「同室者がいるから、部屋のことはソイツに聞いてくれ。寮の規則とかは部屋にあるから一度見とけ。難しいことは無いから」
「わかりました」
寮監さんの言葉に頷いたところで、エレベーターが止まりました。
「──着いたな」
「あ、案内はここまでで大丈夫です」
これだけ大きな寮です。
寮監さんなら、きっと忙しいですよね。
だから、甘えてばかりはいけません。
「え?」
「案内はもう大丈夫です。部屋番号はしっかり覚えましたから」
「だが……」
寮監さんはためらうように目線を彷徨わせています。
けれど僕の意志が強いことに気づいたたのか、小さく苦笑しながらも頷いてくれました。
「わかった。……ありがとな」
「いえ、こちらこそありがとうございました」
僕はそうお礼を言って、エレベーターから降りる。
床がふわふわの絨毯で、慣れないからドキドキします;
そのまま足を進めて、自分の部屋を探していく。
部屋が広いのかひとつひとつの扉が離れてて、なかなかスムーズにいきません。
こんなに広くては探すのが大変ですね;
「あ、497号室」
曲がり角の部屋が497号室でした。
ということは、498号室は角を曲がったところですかね?
僕はほっと息をつきながら角を曲がる。
よかった、やっと着い──
「──あっ」
「君は……」
やっと着いたと思ったら、僕の部屋の前に人が居ました。
その方は、僕がさっき怒らせてしまったあの方で──
.
でも僕は、目の前の光景に茫然として固まりました。
な、なんですかこの豪華な建物はっ!
「驚いたか、凛」
「は、はい」
だ、だって! どう見たって寮じゃなくて、高級なホテルとかみたいなんですよっ!
いえ、むしろお城じゃ……
「まぁ、そのうち慣れるさ」
「は、い」
だといいのですが;
「あぁ、忘れるところだった。はい、凛」
そういって目の前にさっと差し出されたのは銀色のカード。
「これ……」
色は違うけれど、さっき理事長さんに差し出されたカードと同じです。
まさか、春人さん……
不安になって、僕は春人さんをおずおずと見上げる。
「あ、勘違いするなよ? これはさっきのカードとは違うからな」
「そう、ですか」
よかった、春人さんは僕に甘いところがあるので心配してしまいました;
でも、そうですよね。
いくら僕に甘いといっても、さすがに倫理感に引っかかりそうなことはしないですよね。
「これは学生証とクレジットカードと寮の鍵を兼ねたカードだ。無くさないようにな?」
「あ、はい、わかりました。ありがとうございます」
春人さんからカードを受け取って、お財布の中へ大事にしまう。
いろいろ兼ね備えた便利なカードですが、それだけなくすと大変なものです。
なくさないように大切に保管します!
「じゃあ、もう行くな」
「はい、送ってくれてありがとうございました」
「どういたしまして。凛──」
「ぅわっ!」
いきなり春人さんに頭を撫でられました。
まるで、小さい子にするみたいに。
もう、春人さんったら;
そう少し気恥ずかしい気持ちで見上げれば、慈愛に満ちた、優しい顔をした春人さんと目が合いました。
優しすぎるその表情に、思わず頬が赤く染まる。
「頑張りなさい。でも、無理はしすぎないように」
「──はい」
そう言う声も、僕を撫でてくる手も、とても優しくて温かいです。
久々に感じる温かさに、自然と顔がゆるむ。
ふふっ、心がなんだかぽかぽかします。
「じゃあ、またな」
「はい、また……」
春人さんは最後に僕の頭をぽんぽんっと撫でたあと、背中を向けて去っていきます。
僕は少し寂しくなりながらも、春人さんが見えなくなるまでその背中を見送りました。
春人さんを見送ったあと、僕は覚悟を決めて寮の入り口へと向かう。
中はどうなっているんでしょう。
ドキドキしながら扉に手をかけて、ゆっくりと開いていく。
「──っ!」
でも、中を見て思わず扉を閉めちゃいました。
な、中は二割増しです;
いえ、もっとでしょうか?
おそるおそるもう一度開けて、やっぱり閉める。
や、やっぱりこんな豪華なところは無理です!
「なにやってんだ? お前」
「わ……っ!」
あまりの豪華さにおどおどしていると、いきなり中から扉が開きました。
驚いて見上げると──
そこには、エプロンを着けた熊のような大きな方がいました。
す、すごい迫力です;
「おい……ってお前、編入生か」
「あ、は、はい。編入生の、沖守 凛と申します。よろしくお願いいたします」
挨拶は大切です。
頭を下げて丁寧に挨拶しました。
あれ? ジッと見られてます。
な、なにか変なところでもあったのでしょうか?
「あ、の……;」
「あ、悪い; 俺は寮監の
「はい」
なにかしてしまったのかと心配しましたけれど、大丈夫だったみたいです。
優しい笑顔を見せてくれました。
よかったです。
「寮のこと、軽く説明するから中入れ」
「あ、はい」
そう寮監さんに招かれて中に入る。
うぅ、やっぱり豪華すぎて落ち着きません;
「部屋に向かいながら説明するから着いてきてくれ」
「はい」
そう言って歩いてく寮監さんに着いて行く。
さりげなく僕の歩調に合わせてくれてます。
優しい方です。
この方が寮監さんでよかった。
「1階はエントランスとエレベーターホールだけだ。5台あるが、一番右とその隣のエレベーターは専用だから使うな」
「わかりました」
一番右とその隣ですね。
間違えて乗らないように気をつけますっ!
「乗れ、沖守」
「はい」
話している内にエレベーターホールに着きました。
寮監さんに促されて、僕はエレベーターに乗りこむ。
──エレベーターの中も凄く豪華です。
天井も床もキラキラしてます。
僕には眩しいです;
「2階は談話室やシアタールームとかの共有スペース。3階は食堂で──ん? どうした沖守」
「あ、す、すみません。大丈夫です、続けてください;」
「そうか? じゃあ……4階はスーパーで、お前の部屋は37階の498号室だ。わかったか?」
「はい、わかりました」
自分の頭の中で反芻して頷く。
大丈夫、しっかり覚えました。
「同室者がいるから、部屋のことはソイツに聞いてくれ。寮の規則とかは部屋にあるから一度見とけ。難しいことは無いから」
「わかりました」
寮監さんの言葉に頷いたところで、エレベーターが止まりました。
「──着いたな」
「あ、案内はここまでで大丈夫です」
これだけ大きな寮です。
寮監さんなら、きっと忙しいですよね。
だから、甘えてばかりはいけません。
「え?」
「案内はもう大丈夫です。部屋番号はしっかり覚えましたから」
「だが……」
寮監さんはためらうように目線を彷徨わせています。
けれど僕の意志が強いことに気づいたたのか、小さく苦笑しながらも頷いてくれました。
「わかった。……ありがとな」
「いえ、こちらこそありがとうございました」
僕はそうお礼を言って、エレベーターから降りる。
床がふわふわの絨毯で、慣れないからドキドキします;
そのまま足を進めて、自分の部屋を探していく。
部屋が広いのかひとつひとつの扉が離れてて、なかなかスムーズにいきません。
こんなに広くては探すのが大変ですね;
「あ、497号室」
曲がり角の部屋が497号室でした。
ということは、498号室は角を曲がったところですかね?
僕はほっと息をつきながら角を曲がる。
よかった、やっと着い──
「──あっ」
「君は……」
やっと着いたと思ったら、僕の部屋の前に人が居ました。
その方は、僕がさっき怒らせてしまったあの方で──
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