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01/新しい世界

理事長室から出て、春人さんとふたりで深い緑の中を歩いてく。
春人さんはあいかわらず優しくて、歩くのが遅い僕に合わせてゆっくりと歩いてくれています。

こうして春人さんと並んで歩くのは久しぶりで、とても嬉しいです。
前に裏庭を一緒に散歩したのはいつだったでしょうか?

「──凛」
「なんですか? 春人さん」

そんなことを考えていたら、春人さんに呼ばれました。
僕はすぐに返事をしたけれど、いつもと違う声色に心配になる。

春人さんの声、少し固いです;
いったいどうしたのでしょう?

「これから三年間、思いっきり学園生活を楽しんで、好きなだけ学べ」
「春人さん……」
「今回のことは気にするな……って言っても、凛じゃ無理か」

僕の性格をわかってる春人さんは、そう言って苦笑しました。

今回のこと。

この学園に通うために、あの家を出た。
それは僕や、僕の周りの方には大きな意味を持つことで──

「すみません……」
「今度の長期休暇、俺のところに来なさい。それで思いっきり甘えること。そしたらチャラだ」
「お、思いっきり甘える;」

甘えるなんて、なにをすればいいのかわかりません。
ど、どうすればいいのでしょう?

えっと、抱きしめてもらう、とか?

で、でも僕、人に触れられるのは苦手で……いや、春人さんならたぶん大丈夫、ですかね?
うぅ、頭を撫でられるくらいは大丈夫なのですが;

いえ、待ってください。
そういうの以外でも甘える方法があるかもしれません。
──駄目です。思いつきません。

えっ、本当にどうすればいいのでしょう;

「ん?」
「わ、わかりました。……頑張ります;」

頭の中でぐるぐると考えていたら、春人さんに有無を言わせない綺麗な笑顔で迫られました。
どうすればいいかわかりませんが、春人さんが望むなら精一杯頑張りますっ!

「じゃあ、約束だよ」
「はい」

春人さんは嬉しそうに笑ってます。
なにも解決していませんが、春人さんのその嬉しそうな笑顔が見れて、僕はとても幸せな気持ちになりました。





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