01/新しい世界
あれから天さんの気づかいで一緒に荷物を片付けたり、寮室の説明などをしてもらっているうちにすっかり外は暗くなっていました。
僕はせめてものお礼に晩ごはんをごちそうすることにして、天さんと一緒に食堂へ向かいました。
「ここが食堂だよ、凛くん」
「うわー、す、すごいですね;」
「ふふっ、やっぱりそう思うよね。僕も初めて見たときびっくりしたもん」
天さんはそう言って、僕を微笑ましそうに見ながら笑ってます。
ずっと一緒にいたせいか敬語も取れて、だいぶ慣れてくれたみたいで嬉しいです。
「早く座って注文しよう? オススメとかおしえるね」
「はい、よろしくお願いします」
そうして促がされるままに座って注文していると、急に入口の方が騒がしくなりました。
その喧騒は徐々に食堂全体に広がっていきます。
「──っ」
「急にどうしたんでしょう? なにかあったのでしょうか?」
そう不思議に思ってまわりを見わたしていると、天さんが黙りこんで俯いているのが目に入りました。
「ど、どうしたのですか天さん! 具合でも悪くなったのですか?」
「いや、あの──「あー! やっと見つけたぞ凛、天っ!」
「っ!」
「わ……っ」
心配になって声をかけながら天さんの顔を覗きこもうとしていると、急に大きな声で話しかけられました。
僕はそれに思わず驚いて声をあげる。
急になにかと思って振りむけば、甘露寺さんがにこにこ笑いながらさきほど部屋にいた赤髪と金髪のおふたりを連れてこちらへ向かってきていました。
「甘露寺さん……」
「一緒に食べようと思って誘いに行ったのに居ないから探したぞ! 先に食堂に来てたんだな!」
「あ……は、い」
甘露寺さんは元気に話しかけてきましたが、その瞬間まわりの雰囲気が一気に冷たくなってうまく返事ができませんでした。
な、なんででしょうか?
どうしてこんなに雰囲気が変わったのかわからなくて、前に座っている天さんへうかがうように視線を投げれば、天さんは小さく震えていました。
あっ、そういえば天さんの様子がおかしかったのです!
他のことに気をとられている場合ではありませんでした;
「すみません、天さん。大丈夫ですか?」
「……」
また誤解されないようにこっそりと話しかけると、天さんは無言で僕の手をぎゅっと握ってきました。
心配になって顔を覗きこめば、その顔に浮かんでいたのは強い怯えの感情で──
「……ぁ」
僕は天さんの怯えように思わず息をのむ。
それと同時に、天さんがこんなに怯えてる原因にも気づきました。
「まったく、あとちょっとで3人で食べるところだったぞ!」
「──っ」
天さんは甘露寺さんが苦手でしたね。
似てるからと、僕まで怯えられるくらいに。
早く気づいてあげられなかった自分が恨めしいです。
でも、今は悔やんでる場合ではないですね。
なんとかこの状況を打破しなければ!
「あの、僕たちはもう──「あっ、そういえばさっきコイツらの紹介をしてなかったな! 今度はちゃんと紹介するな!」
「えっ!? ちょっと待っ──「こっちの金髪のヤツが久世原 保! 生徒会の会計をやってるぞ!」
そう意気込んで甘露寺さんに話しかけたのですが、いつものごとく話を遮られてしまいました。
それでもめげずに止めようとしたのですが甘露寺さんは楽しそうに後ろのおふたりの紹介をしていきます。
せめて天さんの方へ話がいかないように僕が矢面に立ちましょう!
「ちょっといい加減なところがあるけど、面白くていいヤツだぜ! 」
「別によろしくしなくていいよ~。可愛くない子には興味ないから♪」
「は、はぁ……」
さっそく甘露寺さんたちと天さんのあいだにさりげなく入りながら紹介を聞いていたのですが、久世原さんのあけすけな態度に思わず生返事になる。
なんか、すごいはっきりとした方ですね;
「もう、変なこというなよな! そういうこと言うから誤解されるんだぞ!」
「ごめん、ごめん」
「まったく……で、こっちの赤い髪のヤツが御門 怜王! 生徒会長をやってるんだぜ!」
「ザコは話しかけんなよ」
「は、はぁ……」
「こら、怜王! こう、ちょっと偉そうなところがあるけどちゃんと優しいとこもあるからな!」
ちょ、ちょっとですか……久世原さん同様、はっきりとした方ですね;
かえす返事も思わず同じような生返事になってしまいました。
「紹介も終わったし、あっちで一緒に夕飯食おうぜっ!」
「ちょっ、ちょっと待ってくださ──っ!」
ここまではっきり言えるなんてすごいなと変に関心してたら、一緒に食事することにされそうになりました。
慌てて止めようとした瞬間、殺気にも似た視線がまわりから寄せられる。
何事かと思えば──
『あいつ、なに言ってんの!?』
『なんであいつが決めてるわけ!?』
『また生徒会の皆様と食事をご一緒する気!?』
『しかもあんな冴えないやつらも一緒に!?』
そんな罵詈雑言ともいえる言葉を浴びせられる。
そのせいか、天さんの怯えが強くなりました。
この言葉は甘露寺さんと僕たちに向けられたもので、言った方たちは僕たちが生徒会のおふたりと食事をすることになったことが気に食わないようです。
……きっと、こういうのもあって天さんは甘露寺さんが苦手なのですね。
僕はせめてものお礼に晩ごはんをごちそうすることにして、天さんと一緒に食堂へ向かいました。
「ここが食堂だよ、凛くん」
「うわー、す、すごいですね;」
「ふふっ、やっぱりそう思うよね。僕も初めて見たときびっくりしたもん」
天さんはそう言って、僕を微笑ましそうに見ながら笑ってます。
ずっと一緒にいたせいか敬語も取れて、だいぶ慣れてくれたみたいで嬉しいです。
「早く座って注文しよう? オススメとかおしえるね」
「はい、よろしくお願いします」
そうして促がされるままに座って注文していると、急に入口の方が騒がしくなりました。
その喧騒は徐々に食堂全体に広がっていきます。
「──っ」
「急にどうしたんでしょう? なにかあったのでしょうか?」
そう不思議に思ってまわりを見わたしていると、天さんが黙りこんで俯いているのが目に入りました。
「ど、どうしたのですか天さん! 具合でも悪くなったのですか?」
「いや、あの──「あー! やっと見つけたぞ凛、天っ!」
「っ!」
「わ……っ」
心配になって声をかけながら天さんの顔を覗きこもうとしていると、急に大きな声で話しかけられました。
僕はそれに思わず驚いて声をあげる。
急になにかと思って振りむけば、甘露寺さんがにこにこ笑いながらさきほど部屋にいた赤髪と金髪のおふたりを連れてこちらへ向かってきていました。
「甘露寺さん……」
「一緒に食べようと思って誘いに行ったのに居ないから探したぞ! 先に食堂に来てたんだな!」
「あ……は、い」
甘露寺さんは元気に話しかけてきましたが、その瞬間まわりの雰囲気が一気に冷たくなってうまく返事ができませんでした。
な、なんででしょうか?
どうしてこんなに雰囲気が変わったのかわからなくて、前に座っている天さんへうかがうように視線を投げれば、天さんは小さく震えていました。
あっ、そういえば天さんの様子がおかしかったのです!
他のことに気をとられている場合ではありませんでした;
「すみません、天さん。大丈夫ですか?」
「……」
また誤解されないようにこっそりと話しかけると、天さんは無言で僕の手をぎゅっと握ってきました。
心配になって顔を覗きこめば、その顔に浮かんでいたのは強い怯えの感情で──
「……ぁ」
僕は天さんの怯えように思わず息をのむ。
それと同時に、天さんがこんなに怯えてる原因にも気づきました。
「まったく、あとちょっとで3人で食べるところだったぞ!」
「──っ」
天さんは甘露寺さんが苦手でしたね。
似てるからと、僕まで怯えられるくらいに。
早く気づいてあげられなかった自分が恨めしいです。
でも、今は悔やんでる場合ではないですね。
なんとかこの状況を打破しなければ!
「あの、僕たちはもう──「あっ、そういえばさっきコイツらの紹介をしてなかったな! 今度はちゃんと紹介するな!」
「えっ!? ちょっと待っ──「こっちの金髪のヤツが
そう意気込んで甘露寺さんに話しかけたのですが、いつものごとく話を遮られてしまいました。
それでもめげずに止めようとしたのですが甘露寺さんは楽しそうに後ろのおふたりの紹介をしていきます。
せめて天さんの方へ話がいかないように僕が矢面に立ちましょう!
「ちょっといい加減なところがあるけど、面白くていいヤツだぜ! 」
「別によろしくしなくていいよ~。可愛くない子には興味ないから♪」
「は、はぁ……」
さっそく甘露寺さんたちと天さんのあいだにさりげなく入りながら紹介を聞いていたのですが、久世原さんのあけすけな態度に思わず生返事になる。
なんか、すごいはっきりとした方ですね;
「もう、変なこというなよな! そういうこと言うから誤解されるんだぞ!」
「ごめん、ごめん」
「まったく……で、こっちの赤い髪のヤツが
「ザコは話しかけんなよ」
「は、はぁ……」
「こら、怜王! こう、ちょっと偉そうなところがあるけどちゃんと優しいとこもあるからな!」
ちょ、ちょっとですか……久世原さん同様、はっきりとした方ですね;
かえす返事も思わず同じような生返事になってしまいました。
「紹介も終わったし、あっちで一緒に夕飯食おうぜっ!」
「ちょっ、ちょっと待ってくださ──っ!」
ここまではっきり言えるなんてすごいなと変に関心してたら、一緒に食事することにされそうになりました。
慌てて止めようとした瞬間、殺気にも似た視線がまわりから寄せられる。
何事かと思えば──
『あいつ、なに言ってんの!?』
『なんであいつが決めてるわけ!?』
『また生徒会の皆様と食事をご一緒する気!?』
『しかもあんな冴えないやつらも一緒に!?』
そんな罵詈雑言ともいえる言葉を浴びせられる。
そのせいか、天さんの怯えが強くなりました。
この言葉は甘露寺さんと僕たちに向けられたもので、言った方たちは僕たちが生徒会のおふたりと食事をすることになったことが気に食わないようです。
……きっと、こういうのもあって天さんは甘露寺さんが苦手なのですね。
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