01/新しい世界
部屋に残ったのは僕と天さんだけ。
あんなにいた人が一気にいなくなって、部屋の中はシーンとしています。
その空気が気まずいのか、天さんはおどおどしています。
この部屋に残っているということは同室者の方、ですよね?
ここは新しく入室する僕から挨拶しなくては!
「あ、あの──」
「っ!」
そう声をかけたら、びくっと怯えられてしまいました。
えっ! や、やっぱり僕、なにか知らない内にしてしまったのでしょうか?
「も、申し訳ありません。僕は貴方に、なにかしてしまったのでしょうか……?」
「っ! い、え……そういう、わけじゃ……!」
天さんは慌てたようにそう言って、なにやら困ったようにきょどきょどしています。
どうしたらいいか少し困りましたが、僕がなにかしたわけじゃないということはわかったのでほっとしました。
「そう、ですか。知らない内に傷つけたとかじゃなくて、よかったです」
「あ……」
安心してそう微笑むと、天さんはなぜか気まずそうな顔をしました。
どうしたのでしょう?
「どうか、しましたか?」
「あの、違うんですっ! えと、貴方が悪いんじゃなく、て! そのっ、僕が……僕が勝手に、勘違いして怯えちゃってた、だけで!」
天さんは両手をぎゅっときつく握って、途切れとぎれですが一生懸命そう伝えてくれました。
僕はそれを聞いて、怯えさせないようになるべく優しく話しかける。
「勘違いで怯えるって、どうしてですか?」
「あの……か、甘露寺くんと、同じタイプの人かなって……」
「え?」
甘露寺さんと、同じタイプの人?
「話の…‥通じない人、だと」
「それは──」
ちょっと、完璧な否定はできませんね;
甘露寺さんはよく人の話を遮ったりしてましたし、少し強引な部分もありましたから……
まぁ、僕はそのおかげで保科さんと少し仲良くなれたのですが。
「メガネとか、色々似てるところがあったから……変に警戒して、それで、勝手に怯えちゃって;」
「そう、だったんですか」
そういう訳があったんですね。
たしかに、顔が見えにくい髪型とかメガネとか共通点が多いですからね。納得です。
「会長から庇ってくれたのに、怯えたりなんかして……ごめんなさい!」
「あぁ、気にしないでください。そういうことなら仕方ないですよ」
「っ、こんな優しいひとなのに、僕はなんてこと……本当にごめんなさいっ!」
天さんは涙目になって、ぺこぺこと何度も頭を下げてあやまってくれました。
僕はそんなことしてほしくなくて、慌てて手を添えて止めさせる。
「も、もうあやまらなくていいですよ。せっかく同室になったのです、これから仲良くしてください。僕は沖守 凛と申します。貴方は?」
「あっ! えと、僕は穂積 天、です。よ、よろしくお願いしますっ!」
そういって、穂積さんは手を差しだしてくれました。
僕はそれを振り払わないように気をつけながらそっと握りかえす。
「穂積さん、ですか。どうぞよろしくお願いいたします」
「は、はい!……あの、さっき下の名前で呼んでくれてましたよね?」
「あ、申し訳ありません。お礼をいうときでしたからお名前を呼びたかったのですが、下のお名前しか知らなくて;」
「い、いえ、それはいいんです! そうじゃなくて、そのまま下の名前で呼んでもらいたくて……」
「下の、名前で?」
そんな、いいのでしょうか?
「はい! それで、その、僕にも下の名前で呼ばせてくださいっ!」
「それは──」
ぼ、僕の名前まで!?
え、なんでしょう。これは、夢でしょうか?
下の名前で呼び合うなんて、友達になったみたいです!
とても嬉しいのですが……本当に、いいのですか?
「あ、の……いや、でした?」
「そんな、滅相もない! とても嬉しいですっ! あらためて、よろしくお願いします天さん」
「は、はい! よろしくお願いします、凛くん」
そうお互いの名前を呼んで微笑み合う。
よかった。
変な様子もなくなりましたし、これから仲良くできそうです。
あんなにいた人が一気にいなくなって、部屋の中はシーンとしています。
その空気が気まずいのか、天さんはおどおどしています。
この部屋に残っているということは同室者の方、ですよね?
ここは新しく入室する僕から挨拶しなくては!
「あ、あの──」
「っ!」
そう声をかけたら、びくっと怯えられてしまいました。
えっ! や、やっぱり僕、なにか知らない内にしてしまったのでしょうか?
「も、申し訳ありません。僕は貴方に、なにかしてしまったのでしょうか……?」
「っ! い、え……そういう、わけじゃ……!」
天さんは慌てたようにそう言って、なにやら困ったようにきょどきょどしています。
どうしたらいいか少し困りましたが、僕がなにかしたわけじゃないということはわかったのでほっとしました。
「そう、ですか。知らない内に傷つけたとかじゃなくて、よかったです」
「あ……」
安心してそう微笑むと、天さんはなぜか気まずそうな顔をしました。
どうしたのでしょう?
「どうか、しましたか?」
「あの、違うんですっ! えと、貴方が悪いんじゃなく、て! そのっ、僕が……僕が勝手に、勘違いして怯えちゃってた、だけで!」
天さんは両手をぎゅっときつく握って、途切れとぎれですが一生懸命そう伝えてくれました。
僕はそれを聞いて、怯えさせないようになるべく優しく話しかける。
「勘違いで怯えるって、どうしてですか?」
「あの……か、甘露寺くんと、同じタイプの人かなって……」
「え?」
甘露寺さんと、同じタイプの人?
「話の…‥通じない人、だと」
「それは──」
ちょっと、完璧な否定はできませんね;
甘露寺さんはよく人の話を遮ったりしてましたし、少し強引な部分もありましたから……
まぁ、僕はそのおかげで保科さんと少し仲良くなれたのですが。
「メガネとか、色々似てるところがあったから……変に警戒して、それで、勝手に怯えちゃって;」
「そう、だったんですか」
そういう訳があったんですね。
たしかに、顔が見えにくい髪型とかメガネとか共通点が多いですからね。納得です。
「会長から庇ってくれたのに、怯えたりなんかして……ごめんなさい!」
「あぁ、気にしないでください。そういうことなら仕方ないですよ」
「っ、こんな優しいひとなのに、僕はなんてこと……本当にごめんなさいっ!」
天さんは涙目になって、ぺこぺこと何度も頭を下げてあやまってくれました。
僕はそんなことしてほしくなくて、慌てて手を添えて止めさせる。
「も、もうあやまらなくていいですよ。せっかく同室になったのです、これから仲良くしてください。僕は沖守 凛と申します。貴方は?」
「あっ! えと、僕は
そういって、穂積さんは手を差しだしてくれました。
僕はそれを振り払わないように気をつけながらそっと握りかえす。
「穂積さん、ですか。どうぞよろしくお願いいたします」
「は、はい!……あの、さっき下の名前で呼んでくれてましたよね?」
「あ、申し訳ありません。お礼をいうときでしたからお名前を呼びたかったのですが、下のお名前しか知らなくて;」
「い、いえ、それはいいんです! そうじゃなくて、そのまま下の名前で呼んでもらいたくて……」
「下の、名前で?」
そんな、いいのでしょうか?
「はい! それで、その、僕にも下の名前で呼ばせてくださいっ!」
「それは──」
ぼ、僕の名前まで!?
え、なんでしょう。これは、夢でしょうか?
下の名前で呼び合うなんて、友達になったみたいです!
とても嬉しいのですが……本当に、いいのですか?
「あ、の……いや、でした?」
「そんな、滅相もない! とても嬉しいですっ! あらためて、よろしくお願いします天さん」
「は、はい! よろしくお願いします、凛くん」
そうお互いの名前を呼んで微笑み合う。
よかった。
変な様子もなくなりましたし、これから仲良くできそうです。