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01/新しい世界

「みんなー! 新しく友達ができたから紹介するなーっ!」

心配になって保科さんに声をかけようとしたのですが、甘露寺さんはそんな保科さんに構わずにそのままの勢いで扉を開いて中に入って行ってしまいました。
当然、手を掴まれている僕も一緒にです;

そうして連れて行かれた先には、とても美しい方達が立っていました。
思わずその美しさに見入ってしまいます。

「も~、静夏どこいってたの?」

そう言って甘露寺さんに抱きついてきたのは、ゆるくウェーブのかかった少し長めの金髪と、切れ長で紫色の瞳をした背の高い細身の方です。
その方は甘露寺さんに甘えるようにすり寄っていて、切れ長の瞳が少しつり気味なのもあってか、猫のようで微笑ましいです。

「そいつどうしたんだ?」

そうどこか不機嫌そうにしながら甘露寺さんに話しかけてきたのは、センターバックでつんつんした赤髪とつり気味の緑色の瞳をした、背の高い男らしい身体つきの方です。
人に有無を言わせないような強い雰囲気を持った方で、そんな方にチラリと一瞥されて僕は少し落ち着かなくなりました。

「はぁ……」

ため息をついて少し離れた場所で大人しく立っているのは、くせっ毛でえりあしが長めの銀髪と、丸みがかった切れ長の金色の瞳をした、とても背の高い男らしい身体つきの方です。
ぼーっとしていますが、体調でも悪いのでしょうか? 少し心配です;

「どこってたもつ、インターフォンが鳴ったから見に行ってたんだよ! あ、凛のこと睨むなよな怜王れお! ん? 充希みつき、そんなとこに居ないでこっち来いよ!」

甘露寺さんはお友達だから慣れているのでしょうか?
その方達を気にしたふうもなく、楽しそうに話しています。

けど、すみません。
僕は慣れていないので手を離して距離をとらせてもらってもよろしいでしょうか、甘露寺さん;

さっきから何度も手を離してもらおうとしてるのですが、全然離してくれません。
手の平も、赤髪の方からの視線も痛いですし、もう誰かどうにかしてくださいー!

「あの、甘露寺くん。その子、手ぇ痛そ──「あ、天! 天にも紹介したいから聞いてくれよ!」

僕の願いが届いたのか、3人の後ろからおずおずと出て来た方が甘露寺さんに声をかけてくれたのですが、甘露寺さんにはその方の声は聞こえなかったみたいです;
その方の話をさえぎって、話しかけてしまいました。

「わ、わかった。聞くから……その子の手を、離してあげてくれない、かな? ちょっと赤くなって、痛そうだよι」
「へ? あ、そうか? ごめん凛! まったく気づかなかった;」
「あ、い、いえ、気にしないでください」

もうしばらくこのままかと思っていたら、あの方がもう一度甘露寺さんに言ってくれました。
そのおかげで、甘露寺さんはすぐにあやまって手を離してくれました。

や、やっと解放されました!
たしか、天さん……と呼ばれてましたよね? これはしっかりお礼を言わないと!

「あの、天さん。言いにくいことを言ってくださって、ありがとうございます」
「っ……い、いえ」

お礼を言ったのですが、なぜかびくつかれて小さくなられてしまいました。

えっ、ぼ、僕、なにかしてしまったのでしょうか?

悩んでなんかいられません。
すぐに聞いて、僕が悪いことをしたならあやまらないと!

「あ、あの……僕、なにか──「もーっ、ふたりだけで話してんなよな! 俺もまぜろっ!」
「「っ!」」

あぁ……聞こうとしていましたがまた甘露寺さんに遮られてしまいました;

「え~、静夏を仲間外れにするようなヤツらなんて放っておけばいいじゃ~ん」
「そうだぞ静夏。こんなのより俺と話そうぜ」

しかも他のおふたりまであいだに入ってこられてしまって、甘露寺さんを仲間外れにしたと思われてしまいました。
こんな状況ではまた聞くのは無理そうです;

「い、いえ! あ、のっ……仲間外れに、したわけじゃ……」
「え~? 小さくてなに言ってるか聞こえないんですけど~」

あっ、天さんが誤解を解こうとしてくれましたが、上手くいかなかったみたいです。

「えと、だ、から……仲間外れにした、わけじゃ──「は? お前、誰に口答えしてんだ?」
「ひっ!」

い、いけません!
このままじゃ天さんが怒られてしまいますっ!
僕も早く、誤解があることを伝えないと;

「ま、待ってください! 」
「あ゛?」
「か、甘露寺さんを仲間外れにしてしまったのは悪かったです。友達が、そんなことをされたのです。貴方が怒るのもわかります」
「……へぇ、お前は素直じゃねぇか」

きつく睨まれたけれど逃げずにまっすぐ見つめてそう言うと、赤髪の方は満足そうに笑いました。

僕が言ったことは本心です。
仲間外れにしたつもりはなかったのですが、そう思わせてしまったのです。
もし僕の友達が──と思ったら、この方が怒る気持ちもわかります。

けれど、これだけはわかってもらいたいです。

「ですが、それは故意ではないことだけはわかってください。けして、甘露寺さんを傷つけようとしてしたわけではないです」
「なっ!」

僕はそうきっぱりと言って、すぐに甘露寺さんの方を向いてあやまる。

「甘露寺さん。僕たちは、故意に仲間外れにしようとしたわけではなかったのですが、それでも傷つけてしまいましたよね? 申し訳ありませんでした」
「へ? いや、俺は気にしてないからいいぜ!」

誠意をこめて頭を下げると、甘露寺さんがそう言って元気に笑ってくれました。

よ、よかった……

そう思って小さく息を吐いてると、赤髪の方が納得がいってないような顔で静夏さんの肩を掴みました。

「おい静夏、騙されんな。こういうヤツはあやまっとけばとか──「はいはい、うるさいですよ会長。静夏は気にしてないって言ってますし、そもそも仲間外れなんて貴方たちが勝手に言いがかりつけただけじゃないですか」

納得していない赤髪の方にどうすればいいのかと思ったら、保科先輩があいだに入ってくれました。

「なっ、そんなことは!」
「あるでしょう? 静夏に気にかけてもらっている人が気に食わないからってみっともないことしないでください」
「ぐっ」

あ、赤髪の方が黙ってしまいました。
その様子を見て、保科先輩は満足そうに笑ってます。

「ほら、さっさと生徒会室に帰りますよ。静夏も行きましょう? 生徒会室に、貴方の好きなケーキを用意してあるんです」
「マジか! 行くいくっ!」
「なっ、静夏!?」
「ふふっ、一緒に食べましょうね」
「副会長~、俺のはあったり──「しません」
「おい、俺を無視する──「はいはい、行きますよー」
「ちょっ! 離せ、保科!」

保科先輩の鮮やかな手腕に見とれてるうちに、甘露寺さんたちが部屋からいなくなっていました。

す、すごいです……

「では、お騒がせしてすみませんでした」
「「あ、はい……」」

最後にひとことそう言って、保科先輩も部屋から出て行きました。






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