お題365
「Hello?……あら、巻島君」
『あー……久しぶりっショ』
画面を見ずにとった電話は私がずっと応援している学校の後輩。
…まぁ、ただ応援してるだけじゃないのだけれど、そこは置いておかないと。
彼が電話をくれる、それはきっと何か大事なことを抱えてるときですもの。
「そうね、声を聴くのは久しぶりだわ。元気にしてた?」
『まぁ…そこそこ?』
「ふふ、そう。怪我はしてない?」
『そこは問題ないっショ』
「ならよかったわ。そろそろ、インターハイの時期だものね」
『………』
「あ、応援?行くわよ!!とっても楽しみしてるのよ」
『……なんで言わないのにわかんだよ』
「だって、付き合い長いもの。それくらいはわかるわ」
『…………まだ、誰にも言ってない話…なんだけどな』
言いにくそうに彼が電話口で無言になる。
やっぱり大事な話だわ。
インターハイの話題はきっときっかけ。
「ゆっくりでいいわ…なんてあなたの電話代がかさんじゃうかしら」
『それは、気にしなくていいショ』
「そう?でもちょっと心苦しいわね」
『………あー…9月から…そっち行こうと思ってるっショ』
「ロンドンに、かしら?」
『あぁ、兄貴の手伝いしようかと思ってる』
「……そう。なら、悔いの残らないように走らないといけないわね」
『驚かないのかよ』
「まぁ…そうね、驚いてはいるわ。でも、あなたの決めたことなら尊重するわ。でもちゃんと金城君や田所君には言うのよ?黙ってきたら心配するわ」
『……まぁ、考えとくっショ』
「もう、かわいい後輩もいるのでしょう?心配させちゃだめよ。あ、あと東堂君にも伝えるのよ」
『あいつは!!………いや、めんどくせーっショ』
「そう?…でも憂いはしっかり絶っておいたほうがいいわ」
『……そこは、言われなくてもわかってるっショ』
「ふふ、ならいいわ……いつまでも子供じゃないものね」
『母親か!!2つしか変わらねぇっショ』
「あら、壁を切り取った子が大人になったなって思ったのよ?」
『それは忘れるっショ!!』
「あら、忘れられないわよ。あれであなたのこと気になったんだもの」
いまだに思い出してくすりと笑ってしまう。
きっと電話の向こうで彼は渋い顔をしてるに違いないわ。
「さて、あんまりおしゃべりしてると本当に電話代がかさんでしまうわ」
『そう、だな……話せてすっきりしたショ。聞いてくれてありがとな』
「いつでも話は聞くわ、まずはインターハイね。言うまでもないかもしれないけれど、頑張ってね」
『もちろんっショ』
「…じゃ、またね」
ピッ。
通話が切れて待ち受け画面に戻る。
…彼が来てくれるのはとてもうれしい。けどきっともっと日本で仲間たちと走りたかった気持ちもあるだろう。
かわいがっている後輩もいる、一緒に切磋琢磨できるライバルもいる。一緒にゴールを目指す仲間もいる。
それを置いて、ロンドンに来る…どれほど悩んだのだろう。きっと苦しかっただろう。
でもあなたがそれを決めたのならば、私はそれを応援するわ。
私は…楽しみにしてるから。きちんと卒業していらっしゃいね。
あなたが後悔しないように、私はただそれだけを祈ってるわ。
『あー……久しぶりっショ』
画面を見ずにとった電話は私がずっと応援している学校の後輩。
…まぁ、ただ応援してるだけじゃないのだけれど、そこは置いておかないと。
彼が電話をくれる、それはきっと何か大事なことを抱えてるときですもの。
「そうね、声を聴くのは久しぶりだわ。元気にしてた?」
『まぁ…そこそこ?』
「ふふ、そう。怪我はしてない?」
『そこは問題ないっショ』
「ならよかったわ。そろそろ、インターハイの時期だものね」
『………』
「あ、応援?行くわよ!!とっても楽しみしてるのよ」
『……なんで言わないのにわかんだよ』
「だって、付き合い長いもの。それくらいはわかるわ」
『…………まだ、誰にも言ってない話…なんだけどな』
言いにくそうに彼が電話口で無言になる。
やっぱり大事な話だわ。
インターハイの話題はきっときっかけ。
「ゆっくりでいいわ…なんてあなたの電話代がかさんじゃうかしら」
『それは、気にしなくていいショ』
「そう?でもちょっと心苦しいわね」
『………あー…9月から…そっち行こうと思ってるっショ』
「ロンドンに、かしら?」
『あぁ、兄貴の手伝いしようかと思ってる』
「……そう。なら、悔いの残らないように走らないといけないわね」
『驚かないのかよ』
「まぁ…そうね、驚いてはいるわ。でも、あなたの決めたことなら尊重するわ。でもちゃんと金城君や田所君には言うのよ?黙ってきたら心配するわ」
『……まぁ、考えとくっショ』
「もう、かわいい後輩もいるのでしょう?心配させちゃだめよ。あ、あと東堂君にも伝えるのよ」
『あいつは!!………いや、めんどくせーっショ』
「そう?…でも憂いはしっかり絶っておいたほうがいいわ」
『……そこは、言われなくてもわかってるっショ』
「ふふ、ならいいわ……いつまでも子供じゃないものね」
『母親か!!2つしか変わらねぇっショ』
「あら、壁を切り取った子が大人になったなって思ったのよ?」
『それは忘れるっショ!!』
「あら、忘れられないわよ。あれであなたのこと気になったんだもの」
いまだに思い出してくすりと笑ってしまう。
きっと電話の向こうで彼は渋い顔をしてるに違いないわ。
「さて、あんまりおしゃべりしてると本当に電話代がかさんでしまうわ」
『そう、だな……話せてすっきりしたショ。聞いてくれてありがとな』
「いつでも話は聞くわ、まずはインターハイね。言うまでもないかもしれないけれど、頑張ってね」
『もちろんっショ』
「…じゃ、またね」
ピッ。
通話が切れて待ち受け画面に戻る。
…彼が来てくれるのはとてもうれしい。けどきっともっと日本で仲間たちと走りたかった気持ちもあるだろう。
かわいがっている後輩もいる、一緒に切磋琢磨できるライバルもいる。一緒にゴールを目指す仲間もいる。
それを置いて、ロンドンに来る…どれほど悩んだのだろう。きっと苦しかっただろう。
でもあなたがそれを決めたのならば、私はそれを応援するわ。
私は…楽しみにしてるから。きちんと卒業していらっしゃいね。
あなたが後悔しないように、私はただそれだけを祈ってるわ。
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