このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

お題365


桜は散る方が美しい、そんな歌を歌ったのは誰だったか…。
まぁ、今は葉桜だしそもそも夏に足を踏み込んでいるからな。暑い…。
風が吹くかと開いた窓に白い光が飛び込んでくる。

「おーい、君!」
「……内番はどうした、鶴丸国永」
「ちゃんとやってきたって、そうめくじら立てるなよ」
「……そこまで怒ってないだろう」
「いーや、君はすぐ怒るからなぁ」
「…で、何かあったのか?」
「これだ!」

ずいと差し出されたのは器に浮かべられた紫陽花。
いろんな色が浮いている。

「もう夏だな」
「いや、そうなんだがそうではないだろう」
「??」
「君への贈り物だぞ?」
「あぁ、ありがとう?」
「相変わらず反応が鈍いなー君は」
「これでも喜んでるんだけどな」
「いつか君が驚いて声をあげるのが聞きたいところだ」
「できるといいな」

受け取った器を文机の上におく。
…たしかに水物があるだけで少しは涼しく感じるか。

「…ありがとうな」
「素直な君はなんだか気持ち悪いな」
「鶴丸国永!」
「いやいや、悪い悪い」
「早く内番に戻れ」
「そうするさ、君もバテるなよー」

手を振りながら消える白。
全く。
ふと器を見ると季節外れの桜の花びら。
手に取るとじんわり伝わる神気。
少しすると消えてしまう花びらを突く。
ふわりふわり、なんとなく散る桜に見えた。

「――きれい、だな」

窓の外の桜吹雪には目を瞑ろうと思う。
7/8ページ
スキ