進撃の小言—生誕祭—
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お祝い/マルコ生誕祭
あなたに恋をしたけれど叶わなかったこの想い。遠い年月を経て、あなたは私を見つけてくれた。
あの時は本当に驚いた。けれど、あなたは昔のままで本当に嬉しかったんだ。会ったその場でプロポーズをされて受け入れたけど、よくよく考えれば普通ならあり得ない。実際、友人にその事を伝えたら口に含んだお茶を盛大に吹きかけられたのを思い出した。
そしてプロポーズを受け入れて5年の歳月が流れ私の幸せは止まることを知らない。
ちなみに今日は彼の32回目の誕生日。前世よりも倍の人生を歩んできた彼と今日という日を共に過ごすことが出来て本当に嬉しい。少しだけいつもよりおめかしして、服も彼が好きだと言ってくれたワンピースを着て、かなり奮発して頑張った手料理をテーブルに並べて彼の帰宅を待つ。
午後19時。玄関のドアが開いて彼の声がした。彼がどんな反応をするのか楽しみだけど不安で、少し緊張しながらも彼を迎えに玄関へと足を運んだ。
「おかえり」
「ただいま」
このやり取りも何十回、何百回しただろうか。一緒に住んでいるのだから当たり前の挨拶。けれど、私たちにとってはそれが特別な事だった。前世の記憶を引き継いだままこの世に生まれた私達。あの時と変わらぬ気持ちのまま出会うことが出来た。それは奇跡に違いない。
「今日はいつもより綺麗だね…何かあった?」
結婚記念日はまだだし…、そう言って悩む彼に小さく微笑み、手を引いてリビングへと誘導する。ドアを開けて彼の背中を押し、中に入ってもらうと息を飲む音が聞こえた。
「これは…そうか、今日は僕の…」
壁に吊り下げた“Happy Birthday”のガーランドに紙花のポンポンなんかもつけて装飾された部屋を見て驚く彼。
「マルコ、おめでとう」
「嬉しいよ。ありがとう」
彼は抱きしめながらお礼を呟いた。それからは一緒に料理やケーキを食べていよいよプレゼントを渡す時。
「マルコ、プレゼントを用意したんだけど…」
「本当?嬉しいな。ありがとう」
「いやでも…気にいるかな…」
悩みに悩み抜いたプレゼントだがそれだけでは気が引けたのでおまけにもう一つ用意したものを一緒に渡す。
「二つ?一体何だろう…」
こっちから開けて、そう指差した箱のラッピングを外して中身を確かめる彼。焦げ茶色の革製で出来たちょっとお高めのコインケースを手に取れば「ありがとう」とはにかみ笑いをするため自分も嬉しくなる。そしてもう一つの包み紙を外す。
「バラ…?」
「そう…男性にどうかなって思ったけどこれにはちゃんと意味があって…」
自分で言いながら声が小さくなっていく。やっぱり男性には花なんてダメだったかな…視線を落として小さくため息をついた。
「どんな意味があるんだい?」
彼の真剣な声色に顔を上げる。目が合えば「教えてほしい」、ふわりと笑うため説明してみる。
「バラは6月の誕生月花で“愛や美”という花言葉があるの」
「それで?」
「それで…バラは花びらの色や本数で意味があって…」
「それはどんな?」
「そ、それは…!」
花言葉を伝えようとしたけれど何故か楽しそうに笑う彼の顔が癪に触って「知らない!」とそっぽを向く。
「ごめん。教えてほしいな」
「自分で調べてよ。得意でしょ、優等生さん」
「はは!優等生なんて久しぶりに聞いたよ。えっと…バラはピンク、白、青…全部で5本か…」
箱に入ったバラの花を見つめる彼。今流行りのプリザーブドフラワーというやつで保存が効くやつだ。
「後で調べてみるよ。ありがとう」
「でもバラなんて嫌だったよね…」
「どうして?君が真剣に悩んで選んだものだろう?それに意味があるようだし」
彼は嫌がるどころか喜んでくれたみたいで心の底から安堵した。
「言っておくけど…僕も同じ気持ちだから」
「えっ?!花言葉知ってるの?!」
「いいや。知らないよ?でも君の考えそうなことは分かる」
何年一緒に暮らしてると思うんだ?、彼がそう続けるので体中が熱くなり始めた。だから照れ隠しに椅子から立ちあがると「片付ける」と言ってケーキの皿をキッチンに運び洗い始めた。カチャカチャと食器の音と水道水の流れる音が耳に聞こえるがその音が不意に止まった。
「マルコ?」
マルコが蛇口をひねり水を止めたかと思うと手首を掴まれ腰を引き寄せられた。咄嗟の事に名前を呼んでみたけど彼は自分をじっと見下ろしたまま。
「気持ちのこもったプレゼントありがとう。これからも一緒に歳を重ねていこう」
自分を見つめていた彼は優しい笑顔を浮かべている。だから自分も笑って「うん」と返事をしながらその胸に顔を埋めた。
「そろそろどうかな?」
彼の温もりに浸っていたかったのだが急に話を切り出してきた。そろそろとは何の事だろうか。彼の顔を見上げながら頭の中は、?でいっぱいだ。
「僕達も新しい家族を迎えたいなって」
「—— っ?!」
言葉の意味が分かって顔が熱くなる。そろそろってそういうことなのか、と。確かに出会って結婚したけれど二人の時間を大事にしようって話し合ったから子どもの事なんて考えてもみなかった。いや、考えてはいたけれど今は今で幸せだから…でも、確かに彼との赤ちゃんはほしい、かも。
「うん…そうだね。そろそろいいかもね」
了承の意味を込めて頷けばいきなりお姫様抱っこをされた。
「えっ!マルコまさか…今から?!」
「ハルの気分が変わらないうちにね」
「でも片付けが…!」
「そんなもの後からだって出来るよ」
今はこっちの方が大事、そう言って寝室に向かう彼は悪戯な笑みを浮かべていた。
「優等生のくせに…」
「生憎、僕はもう大人だ。それに君の夫だしね」
そうでしょう?、なんて言うから頬を染めて顔を背けた。
「それに…一番のプレゼントは君かな、」
彼とは結婚してから数え切れないほど身体を重ねているというのに今回は訳が違う。彼の言動一つ一つに鼓動が速くなる。だけど、自分も望んでいることで彼と一緒の気持ちで嬉しくて視線を合わせた。
「誕生日おめでとう」
そして首に腕を回すと顔を近づけてキスをする。彼はクスリと笑い「覚悟してね」なんて言うから私は小さく頷いて、この時から甘く濃密で濃厚な時間を過ごした。
ーーー
「これからは毎日しよう」
「ま、毎日?!」
「子作りは大変だと聞いたから。そう簡単には出来ない、そうなんだろ?」
「それはそうだけど…」
「決まりだ。これからは毎日君を愛すよ」
「ま、マルコ…」
情事が終わったピロートーク。あの時の優等生の姿は消えていて大人の雰囲気を醸し出すちょっぴり意地悪で甘い彼に翻弄させられる。けれど、あの時叶える事が出来なかった家庭を築き、新しい命を迎えようとしている事に幸せを感じ胸いっぱいに喜びで溢れていた。
ありがとう、あなたに出会えて本当に良かった。
これからもあなたと共に生きていきたい。
この手を離さず、
どんな事も一緒に乗り越えていこう—— …
そして毎年の誕生日にはお祝いを。
「マルコ、生まれてきてくれてありがとう」
「Happy Birthday、Marco !」
2019.6.16
fin.
あなたに恋をしたけれど叶わなかったこの想い。遠い年月を経て、あなたは私を見つけてくれた。
あの時は本当に驚いた。けれど、あなたは昔のままで本当に嬉しかったんだ。会ったその場でプロポーズをされて受け入れたけど、よくよく考えれば普通ならあり得ない。実際、友人にその事を伝えたら口に含んだお茶を盛大に吹きかけられたのを思い出した。
そしてプロポーズを受け入れて5年の歳月が流れ私の幸せは止まることを知らない。
ちなみに今日は彼の32回目の誕生日。前世よりも倍の人生を歩んできた彼と今日という日を共に過ごすことが出来て本当に嬉しい。少しだけいつもよりおめかしして、服も彼が好きだと言ってくれたワンピースを着て、かなり奮発して頑張った手料理をテーブルに並べて彼の帰宅を待つ。
午後19時。玄関のドアが開いて彼の声がした。彼がどんな反応をするのか楽しみだけど不安で、少し緊張しながらも彼を迎えに玄関へと足を運んだ。
「おかえり」
「ただいま」
このやり取りも何十回、何百回しただろうか。一緒に住んでいるのだから当たり前の挨拶。けれど、私たちにとってはそれが特別な事だった。前世の記憶を引き継いだままこの世に生まれた私達。あの時と変わらぬ気持ちのまま出会うことが出来た。それは奇跡に違いない。
「今日はいつもより綺麗だね…何かあった?」
結婚記念日はまだだし…、そう言って悩む彼に小さく微笑み、手を引いてリビングへと誘導する。ドアを開けて彼の背中を押し、中に入ってもらうと息を飲む音が聞こえた。
「これは…そうか、今日は僕の…」
壁に吊り下げた“Happy Birthday”のガーランドに紙花のポンポンなんかもつけて装飾された部屋を見て驚く彼。
「マルコ、おめでとう」
「嬉しいよ。ありがとう」
彼は抱きしめながらお礼を呟いた。それからは一緒に料理やケーキを食べていよいよプレゼントを渡す時。
「マルコ、プレゼントを用意したんだけど…」
「本当?嬉しいな。ありがとう」
「いやでも…気にいるかな…」
悩みに悩み抜いたプレゼントだがそれだけでは気が引けたのでおまけにもう一つ用意したものを一緒に渡す。
「二つ?一体何だろう…」
こっちから開けて、そう指差した箱のラッピングを外して中身を確かめる彼。焦げ茶色の革製で出来たちょっとお高めのコインケースを手に取れば「ありがとう」とはにかみ笑いをするため自分も嬉しくなる。そしてもう一つの包み紙を外す。
「バラ…?」
「そう…男性にどうかなって思ったけどこれにはちゃんと意味があって…」
自分で言いながら声が小さくなっていく。やっぱり男性には花なんてダメだったかな…視線を落として小さくため息をついた。
「どんな意味があるんだい?」
彼の真剣な声色に顔を上げる。目が合えば「教えてほしい」、ふわりと笑うため説明してみる。
「バラは6月の誕生月花で“愛や美”という花言葉があるの」
「それで?」
「それで…バラは花びらの色や本数で意味があって…」
「それはどんな?」
「そ、それは…!」
花言葉を伝えようとしたけれど何故か楽しそうに笑う彼の顔が癪に触って「知らない!」とそっぽを向く。
「ごめん。教えてほしいな」
「自分で調べてよ。得意でしょ、優等生さん」
「はは!優等生なんて久しぶりに聞いたよ。えっと…バラはピンク、白、青…全部で5本か…」
箱に入ったバラの花を見つめる彼。今流行りのプリザーブドフラワーというやつで保存が効くやつだ。
「後で調べてみるよ。ありがとう」
「でもバラなんて嫌だったよね…」
「どうして?君が真剣に悩んで選んだものだろう?それに意味があるようだし」
彼は嫌がるどころか喜んでくれたみたいで心の底から安堵した。
「言っておくけど…僕も同じ気持ちだから」
「えっ?!花言葉知ってるの?!」
「いいや。知らないよ?でも君の考えそうなことは分かる」
何年一緒に暮らしてると思うんだ?、彼がそう続けるので体中が熱くなり始めた。だから照れ隠しに椅子から立ちあがると「片付ける」と言ってケーキの皿をキッチンに運び洗い始めた。カチャカチャと食器の音と水道水の流れる音が耳に聞こえるがその音が不意に止まった。
「マルコ?」
マルコが蛇口をひねり水を止めたかと思うと手首を掴まれ腰を引き寄せられた。咄嗟の事に名前を呼んでみたけど彼は自分をじっと見下ろしたまま。
「気持ちのこもったプレゼントありがとう。これからも一緒に歳を重ねていこう」
自分を見つめていた彼は優しい笑顔を浮かべている。だから自分も笑って「うん」と返事をしながらその胸に顔を埋めた。
「そろそろどうかな?」
彼の温もりに浸っていたかったのだが急に話を切り出してきた。そろそろとは何の事だろうか。彼の顔を見上げながら頭の中は、?でいっぱいだ。
「僕達も新しい家族を迎えたいなって」
「—— っ?!」
言葉の意味が分かって顔が熱くなる。そろそろってそういうことなのか、と。確かに出会って結婚したけれど二人の時間を大事にしようって話し合ったから子どもの事なんて考えてもみなかった。いや、考えてはいたけれど今は今で幸せだから…でも、確かに彼との赤ちゃんはほしい、かも。
「うん…そうだね。そろそろいいかもね」
了承の意味を込めて頷けばいきなりお姫様抱っこをされた。
「えっ!マルコまさか…今から?!」
「ハルの気分が変わらないうちにね」
「でも片付けが…!」
「そんなもの後からだって出来るよ」
今はこっちの方が大事、そう言って寝室に向かう彼は悪戯な笑みを浮かべていた。
「優等生のくせに…」
「生憎、僕はもう大人だ。それに君の夫だしね」
そうでしょう?、なんて言うから頬を染めて顔を背けた。
「それに…一番のプレゼントは君かな、」
彼とは結婚してから数え切れないほど身体を重ねているというのに今回は訳が違う。彼の言動一つ一つに鼓動が速くなる。だけど、自分も望んでいることで彼と一緒の気持ちで嬉しくて視線を合わせた。
「誕生日おめでとう」
そして首に腕を回すと顔を近づけてキスをする。彼はクスリと笑い「覚悟してね」なんて言うから私は小さく頷いて、この時から甘く濃密で濃厚な時間を過ごした。
ーーー
「これからは毎日しよう」
「ま、毎日?!」
「子作りは大変だと聞いたから。そう簡単には出来ない、そうなんだろ?」
「それはそうだけど…」
「決まりだ。これからは毎日君を愛すよ」
「ま、マルコ…」
情事が終わったピロートーク。あの時の優等生の姿は消えていて大人の雰囲気を醸し出すちょっぴり意地悪で甘い彼に翻弄させられる。けれど、あの時叶える事が出来なかった家庭を築き、新しい命を迎えようとしている事に幸せを感じ胸いっぱいに喜びで溢れていた。
ありがとう、あなたに出会えて本当に良かった。
これからもあなたと共に生きていきたい。
この手を離さず、
どんな事も一緒に乗り越えていこう—— …
そして毎年の誕生日にはお祝いを。
「マルコ、生まれてきてくれてありがとう」
「Happy Birthday、Marco !」
2019.6.16
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