胸に響くその音を
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
4.早気
一歩足を踏み出し自分も帰ろうとしたところを竹早君に声をかけられた。隣を見ると山之内君もいる。
「あ。竹早くん、山之内くん。お疲れ様。」
「お疲れ。」
「お疲れー!!」
山之内君はいつも元気だな、と小さく笑う。
「弓道どう?!」
そんな山之内君に質問され今日のことを興奮しながら話した。
「うん!すごく楽しそう!弓持ったけど、意外と重たいんだね。腕力鍛えなきゃ!」
「おお!やる気満々じゃん!筋トレとか知りたいことあったら教えるよ!」
「ほんと!?クラス一緒だし色々教えて欲しい!」
山之内くんと楽しく話しているのを一歩後ろを歩く竹早君が聞いている。
「竹早くん、今日は弓を持たせてくれてありがとう。」
「いいよ。僕がそうしたかったから」
「静弥の弓持ったのか?!いいなー!」
「遼平は自分の持ってるじゃないか。」
「でもやっぱ人のは少し感覚が違うじゃんかよー!」
そうなんだ、と思いながら話を聞いているとバス停に着いてしまう。ここで分かれて帰ろうとしたがあの彼の名前が聞こえてきて足を止めた。
「そういえば今日湊来なかったなー。」
「そう、だね…。」
「弓道部入らないって言ってたしな…。やっぱやめるのかな…。」
山之内くんの言葉を聞いて心臓が脈打ち始めた。
「えっ…。鳴宮くん…弓道辞めちゃうの?」
それはショックな事で鞄を持つ手に力が入る。
「本人はやらないつもりでいるみたいだけど…。僕は入部させるつもりだよ。」
「でも鳴宮くん入部しないって言ってたんでしょう?」
「何なにー?湊のこと知ってるの?」
「あ、うん。彼が弓道してるところ見た事があって…。」
「そっか!湊の弓道するとこカッケーよな!」
ニパッと山之内君が笑うので一つ首を縦に頷く。
「〇〇さん…。名前でもいいかな?ハルさんの弓道を始めた理由って湊でしょ?」
竹早君が話を自分に振り、しかも彼の事で慌ててしまう。名前呼びになった事に気付かないほどに。
「えっ?!そうなの?!」
「やっ…!違う!じゃなくて違わないけど…!えっと…その…!」
段々と頬に熱が集まり体も熱い気がしてならない。どう説明してもよいのか俯いて言葉を詰まらせた。
「憧れの人…って会話が聞こえてきたけど。」
真っ赤な顔で目を見開き竹早君の顔を見る。
「な、なんでそれを…!」
「女子達の会話が聞こえてきた。前に湊の弓の事を話した時、ハルさんの顔が嬉しそうだったし、それに湊の事を心配してるしね。」
竹早君の話を聞いてどう答えようか考えていると山之内君が話に割り込んできた。
「なにー?!〇〇は湊の事が好きなのか?!」
目をキラキラさせて山之内君が詰め寄る。
顔が近い。
「違うよ!鳴宮くんの弓に憧れてるのはほんと!でも好きとかそんなんじゃないから!」
山之内君から一歩距離を置いて話をする。
実際、本当に恋愛感情など持ち合わせてはいないのだから赤くなる必要などはないのだが、誰にも話した事がないので恥ずかしいのだ。
「なーんだ。」
「なんだじゃないだろ遼平。ごめん、ハルさん。」
「ううん…。大丈夫。でも鳴宮くんが弓道やらないのは寂しいね…。」
そうだね、と寂しそうに笑う竹早君と山之内君。
「あ、そういえば湊は早気って言ったっけ…。それって治るのかな…。」
山之内君が心配そうに竹早君に聞いている。
「はや、け……?」
初めて聞くその言葉に首を傾げる。
「ハルさんは初心者だから知らないよね。去年の大会と昨日の湊の射を見ただろ?『射法八節』…。これは今後習うことになるだろうからその時にまた詳しく教えるとして、これは矢を射るまでの動作を八つに分けたものたけどその内の一つ…。矢を構えて射るまでの動作、『会』。早気はこれが十分に保てずにすぐに矢を放ってしまうものなんだ。」
竹早君の話を聞いて鳴宮君の弓を思い出す。
確かに矢を射るまでの時間が他の人よりも早いような気がする。
しかしそれでは満足な弓が出来ていないということ。弓を見れば分かるが弓を経験している人ならどれだけ辛い事になるだろう。
(だったら鳴宮くんは…。)
彼は去年の大会からずっと苦しんでるという事だ。それを思うと胸が痛んで苦しい。
「鳴宮くんを助けることは出来ないかな…。何か出来る事があれば…。」
竹早君と山之内君を見つめ訴える。
鳴宮くんから弓を遠ざけてはいけない気がして必死だった。
「ハルさん。湊ならきっと戻ってくるよ。」
「だけど…。」
「静弥がそう言うなら戻って来る!」
山之内君の笑顔を見ているとそんな気がして元気が出る。自分が落ち込んでも仕方がない。何より彼とはまだ面識もないのだから。
顔も名前も知らない女に心配されるなんて嫌に決まっている。
今の自分を考えると恥ずかしくなった。
「私なんかが図々しかったよね…。」
「いいや。君はもう部員になるんだ。」
だから大丈夫だよ、竹早君が苦笑いをする自分に笑顔でそう言ってくれ少し安心した。
「なんだかなぁー。」
「なに?」
腰を下ろした山之内君がボヤき出した。
それに返事をしている竹早君。
自分は帰ろうかどうか迷っていたがそのまま彼の話を聞くことにした。
「どうやったら湊、入部してくれんのかなぁー。その早気ってのはどうやったら治る?どのくらいかかるもの?」
山之内君のその質問に自分も答えが知りたくて竹早君を見つめた。
「分からない…。」
山之内君が他にも声をかけているが竹早君はなにも言わず俯いていた。
「ごめん。一番湊と一緒にやりたいのは静弥だよな。団体戦に出たいのもだからだよな。」
(団体戦…?)
山之内君からのその言葉に反応してしまう。団体戦ということは何か大会があるのだろうか。
「あっ。俺のバス。」
山之内君が乗るバスが来て彼は行ってしまう。バス停には彼を見送った竹早君と二人になった。
「ねぇ、竹早くん。」
後ろにいる竹早君に振り向きながら声をかけたが彼は寂しそうな顔をしていた。
「僕には償いをする義務があるんだ…。」
ボソリと聞こえた彼の呟きが頭から離れなくなる。
償いとは、なんの事だろうか。
山之内君との会話からして鳴宮君が関わっていることには違いない。一体彼らに何があったのかと疑問に思ってしまう。しかし聞いてもいいものか触れていい話題なのか戸惑うが彼の今の表情を見る限り聞こえないフリをすることにした。
「竹早くん。今度大会があるの?今山之内くんが言ってたのが聞こえたけど…。」
話題を変えて話を振ると寂しそうな顔をしていた彼の姿はなくいつも通り笑っていた。それを見てきっと彼は自分の感情をあまり表には出さない人なんだろうな、切り替えがうまいんだろうな、と思ってしまった。
「そうだよ。来月県大会の予選があるんだ。」
「来月っ!結構早いんだね…。」
「うん。団体戦に出たいところだけど…あと1人人数が足りないから困ってる。」
「そっか…。鳴宮くんが入ってくれたら出られるってこと…?」
「そういうこと。」
竹早君は困ったように笑っている。
「鳴宮くん、入ってくれるといいね。」
「そうだね…。」
そうなればいいなと思って笑うと「帰ろう」と声をかけられた。帰り道が途中まで一緒だったことに驚きつつも分かれ道で挨拶を交わす。
「じゃあ、また。」
「うん。また明日ね。」
「明日も忘れずに体操着を持ってくるように。」
「了解っ。」
敬礼ポーズをとって返事をするとクスリと笑う彼。それを見て手を振り自分の帰路につく。
まだまだ高校生活は始まったばかりだけどみんなとなら上手くやっていけそうな気がして笑みが溢れた。
一歩足を踏み出し自分も帰ろうとしたところを竹早君に声をかけられた。隣を見ると山之内君もいる。
「あ。竹早くん、山之内くん。お疲れ様。」
「お疲れ。」
「お疲れー!!」
山之内君はいつも元気だな、と小さく笑う。
「弓道どう?!」
そんな山之内君に質問され今日のことを興奮しながら話した。
「うん!すごく楽しそう!弓持ったけど、意外と重たいんだね。腕力鍛えなきゃ!」
「おお!やる気満々じゃん!筋トレとか知りたいことあったら教えるよ!」
「ほんと!?クラス一緒だし色々教えて欲しい!」
山之内くんと楽しく話しているのを一歩後ろを歩く竹早君が聞いている。
「竹早くん、今日は弓を持たせてくれてありがとう。」
「いいよ。僕がそうしたかったから」
「静弥の弓持ったのか?!いいなー!」
「遼平は自分の持ってるじゃないか。」
「でもやっぱ人のは少し感覚が違うじゃんかよー!」
そうなんだ、と思いながら話を聞いているとバス停に着いてしまう。ここで分かれて帰ろうとしたがあの彼の名前が聞こえてきて足を止めた。
「そういえば今日湊来なかったなー。」
「そう、だね…。」
「弓道部入らないって言ってたしな…。やっぱやめるのかな…。」
山之内くんの言葉を聞いて心臓が脈打ち始めた。
「えっ…。鳴宮くん…弓道辞めちゃうの?」
それはショックな事で鞄を持つ手に力が入る。
「本人はやらないつもりでいるみたいだけど…。僕は入部させるつもりだよ。」
「でも鳴宮くん入部しないって言ってたんでしょう?」
「何なにー?湊のこと知ってるの?」
「あ、うん。彼が弓道してるところ見た事があって…。」
「そっか!湊の弓道するとこカッケーよな!」
ニパッと山之内君が笑うので一つ首を縦に頷く。
「〇〇さん…。名前でもいいかな?ハルさんの弓道を始めた理由って湊でしょ?」
竹早君が話を自分に振り、しかも彼の事で慌ててしまう。名前呼びになった事に気付かないほどに。
「えっ?!そうなの?!」
「やっ…!違う!じゃなくて違わないけど…!えっと…その…!」
段々と頬に熱が集まり体も熱い気がしてならない。どう説明してもよいのか俯いて言葉を詰まらせた。
「憧れの人…って会話が聞こえてきたけど。」
真っ赤な顔で目を見開き竹早君の顔を見る。
「な、なんでそれを…!」
「女子達の会話が聞こえてきた。前に湊の弓の事を話した時、ハルさんの顔が嬉しそうだったし、それに湊の事を心配してるしね。」
竹早君の話を聞いてどう答えようか考えていると山之内君が話に割り込んできた。
「なにー?!〇〇は湊の事が好きなのか?!」
目をキラキラさせて山之内君が詰め寄る。
顔が近い。
「違うよ!鳴宮くんの弓に憧れてるのはほんと!でも好きとかそんなんじゃないから!」
山之内君から一歩距離を置いて話をする。
実際、本当に恋愛感情など持ち合わせてはいないのだから赤くなる必要などはないのだが、誰にも話した事がないので恥ずかしいのだ。
「なーんだ。」
「なんだじゃないだろ遼平。ごめん、ハルさん。」
「ううん…。大丈夫。でも鳴宮くんが弓道やらないのは寂しいね…。」
そうだね、と寂しそうに笑う竹早君と山之内君。
「あ、そういえば湊は早気って言ったっけ…。それって治るのかな…。」
山之内君が心配そうに竹早君に聞いている。
「はや、け……?」
初めて聞くその言葉に首を傾げる。
「ハルさんは初心者だから知らないよね。去年の大会と昨日の湊の射を見ただろ?『射法八節』…。これは今後習うことになるだろうからその時にまた詳しく教えるとして、これは矢を射るまでの動作を八つに分けたものたけどその内の一つ…。矢を構えて射るまでの動作、『会』。早気はこれが十分に保てずにすぐに矢を放ってしまうものなんだ。」
竹早君の話を聞いて鳴宮君の弓を思い出す。
確かに矢を射るまでの時間が他の人よりも早いような気がする。
しかしそれでは満足な弓が出来ていないということ。弓を見れば分かるが弓を経験している人ならどれだけ辛い事になるだろう。
(だったら鳴宮くんは…。)
彼は去年の大会からずっと苦しんでるという事だ。それを思うと胸が痛んで苦しい。
「鳴宮くんを助けることは出来ないかな…。何か出来る事があれば…。」
竹早君と山之内君を見つめ訴える。
鳴宮くんから弓を遠ざけてはいけない気がして必死だった。
「ハルさん。湊ならきっと戻ってくるよ。」
「だけど…。」
「静弥がそう言うなら戻って来る!」
山之内君の笑顔を見ているとそんな気がして元気が出る。自分が落ち込んでも仕方がない。何より彼とはまだ面識もないのだから。
顔も名前も知らない女に心配されるなんて嫌に決まっている。
今の自分を考えると恥ずかしくなった。
「私なんかが図々しかったよね…。」
「いいや。君はもう部員になるんだ。」
だから大丈夫だよ、竹早君が苦笑いをする自分に笑顔でそう言ってくれ少し安心した。
「なんだかなぁー。」
「なに?」
腰を下ろした山之内君がボヤき出した。
それに返事をしている竹早君。
自分は帰ろうかどうか迷っていたがそのまま彼の話を聞くことにした。
「どうやったら湊、入部してくれんのかなぁー。その早気ってのはどうやったら治る?どのくらいかかるもの?」
山之内君のその質問に自分も答えが知りたくて竹早君を見つめた。
「分からない…。」
山之内君が他にも声をかけているが竹早君はなにも言わず俯いていた。
「ごめん。一番湊と一緒にやりたいのは静弥だよな。団体戦に出たいのもだからだよな。」
(団体戦…?)
山之内君からのその言葉に反応してしまう。団体戦ということは何か大会があるのだろうか。
「あっ。俺のバス。」
山之内君が乗るバスが来て彼は行ってしまう。バス停には彼を見送った竹早君と二人になった。
「ねぇ、竹早くん。」
後ろにいる竹早君に振り向きながら声をかけたが彼は寂しそうな顔をしていた。
「僕には償いをする義務があるんだ…。」
ボソリと聞こえた彼の呟きが頭から離れなくなる。
償いとは、なんの事だろうか。
山之内君との会話からして鳴宮君が関わっていることには違いない。一体彼らに何があったのかと疑問に思ってしまう。しかし聞いてもいいものか触れていい話題なのか戸惑うが彼の今の表情を見る限り聞こえないフリをすることにした。
「竹早くん。今度大会があるの?今山之内くんが言ってたのが聞こえたけど…。」
話題を変えて話を振ると寂しそうな顔をしていた彼の姿はなくいつも通り笑っていた。それを見てきっと彼は自分の感情をあまり表には出さない人なんだろうな、切り替えがうまいんだろうな、と思ってしまった。
「そうだよ。来月県大会の予選があるんだ。」
「来月っ!結構早いんだね…。」
「うん。団体戦に出たいところだけど…あと1人人数が足りないから困ってる。」
「そっか…。鳴宮くんが入ってくれたら出られるってこと…?」
「そういうこと。」
竹早君は困ったように笑っている。
「鳴宮くん、入ってくれるといいね。」
「そうだね…。」
そうなればいいなと思って笑うと「帰ろう」と声をかけられた。帰り道が途中まで一緒だったことに驚きつつも分かれ道で挨拶を交わす。
「じゃあ、また。」
「うん。また明日ね。」
「明日も忘れずに体操着を持ってくるように。」
「了解っ。」
敬礼ポーズをとって返事をするとクスリと笑う彼。それを見て手を振り自分の帰路につく。
まだまだ高校生活は始まったばかりだけどみんなとなら上手くやっていけそうな気がして笑みが溢れた。