胸に響くその音を
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3.憧れ
次の日の放課後。
今日は弓道場に入ると体操着に着替える。
「今日も来てくれたんだね」
声をかけられたので振り向くと竹早君が立っていた。
「うん。弓道部に入るつもりだからね。楽しみなんだ」
ふふっと笑うと彼も優しい顔をしていた。その時別の方向からも声がする。
「あー!竹早が女の子と喋ってる!メッハー☆」
「えっ…め、メッハー…?」
声をかけてきたのは女子に人気の如月君。なんだか恥ずかしくて声が小さくなる。
「如月。困ってるじゃないか」
「あららー。ごめんごめん!でも仲良く楽しくやろうよ!」
「は、はぁ…」
「ななおくーん!私達も仲良くしたーい!」
彼の勢いに押されていると取り巻き女子達がやってきて体を押されるためバランスを崩して転倒しかける。
「ぅ、わぁ!」
床にコケそうになったところを誰かが支えてくれお礼を言おうと顔を上げたがその表情を見て体が固まり何も言えなかった。
「おめぇら…神聖な弓道場できゃぴきゃぴうるせぇんだよ…七尾も。そいつら黙らせておけ」
「かっちゃん怖い怖い」
如月君にはこの男の睨みなど効いてはいないが周りの女子達には効果抜群だ。静かになったところで我に返り支えてくれた彼こと小野木君を見上げ声をかけた。
「あ、あの…」
「あ"?」
彼は機嫌が悪いのかジロリとこちらを視線だけ向け自分も睨まれた。ビクッと体が強張るが震える声でお礼を伝えた。
「さ、支えてくれて…ありがと……」
「別に。どんくせぇ奴だな」
睨みをきかせたまま言われ怒られた気分になり泣きそうになる。そこへ誰かが割り込み視界が遮られた。
「小野木。この子は本気で入部するつもりだ。だからあまりいじめないでやってくれないか?」
そう言ってくれたのは竹早君だ。声は穏やかだが語尾には少し棘のある言い方に聞こえハラハラと焦る。
「っんだよ。んなの知るか。別に脅しちゃいねーよ」
「へぇー。竹早って意外と熱いところがあるんだね」
如月君も話に加わってきてそんな事を言っているが取り巻き女子の視線が痛くて早くこの場を離れたい。
「あの。竹早くん、ありがとう。どんくさいのは事実だからもっとテキパキ動けるようにするよ」
早口にそう言うと「向こうにいるね」と入り口から反対側へと避難した。そこへトミー先生がやってきて説明が始まる。
「えー、さて…今でこそちょっとレアなモテアイテムじゃが弓というものはごくごく身近にあったものじゃ」
「その証拠に世の中には弓が由来と言われる言い回しが結構あってのぉ…例えば"手の内を明かす"。これは弓の持ち方が秘伝であったからとも言われておる」
トミー先生の説明の合間に竹早君が矢を男子達に渡しており自分にも「どうぞ」と手渡された。
——これが矢…
細いそれはしっかりしており真っ直ぐな一本に目を輝かせた。
「んー…ボーイズ&ガールズは他に何か知っておるかなー?」
トミー先生が何か言っているが話半分に夢中になって矢を眺めていた。すると次に聞こえたトミー先生の声に反応を示す。
「さて、実際に弓に触れてみてもらおうかの」
その言葉にさっきよりも目を輝かせてトミー先生の方を見る。女子部員達が早すぎないかと言っているがトミー先生は「実際にみんと分からんじゃろ」と笑っている。
ワクワクして弓が回ってくるのを待っていると「これを」と竹早が弓を渡してくれた。
「えっ、でもこれは…」
明らかにみんなが持ってみているものとは違う弓。
「これは僕のだよ」
「そ、そんな大事なもの!持てないよ!」
両手を突き出してダメダメとするが彼は微笑んだまま譲らない。
「君に持ってほしいんだ」
そんなことを言われ頬を少し染めると彼が持つ弓にお礼を言いながら手を伸ばした。手渡された弓は意外と重く鼓動が速くなった。
——これが…弓…
みんなから距離を取って弓を立てて持ってみる。上から下までじっくり眺めた。
自分も出来るか分からないが弓を引きたい気持ちがうんと高まった。目を輝かせて見ていると竹早君が弓について説明をしてくれそれを熱心に聞く。女子部員達も来てくれて竹早君が紹介してくれた。
「この人は遼平と同じクラスの〇〇ハルさん。〇〇さん、この人達が女子部員だよ」
「初めまして。初心者ですけど弓道部に入部予定の者です」
お辞儀をしながら挨拶をするとみんな喜んでくれた。
「初心者でも大歓迎だよー!入部してくれると嬉しいな」
そう話すのは花沢ゆうなさん。
髪を二つ結びして可愛らしい。
「入部されましたら仲良くしましょう」
そして長髪をハーフアップにして凛とした面持ちの白菊乃愛さん。
「初心者でも嬉しいよ。待ってるから是非入ってほしい」
最後に背の高いショートカットの妹尾梨可さん。
「はい!入部したらよろしくお願いします!」
「同い年なんだから敬語はいらないよ〜」
「そうですわよ。遠慮はいりませんわ」
「タメ口で構わないから」
みんながそう言ってくれるのでお言葉に甘えて敬語なしで話す事に。
「ハルは何で弓道したいの?」
ゆうなに質問されるため答える。
「その…ある人の弓道してる姿を見て憧れて…」
話すのがなんだか恥ずかしくなって段々声が小さくなる。
「えー!誰だろう!」
「だ、誰でもいいよ!」
顔を赤くしながらみんなを見て話を続けた。
「その人の弓は凄く綺麗だった。弓を構える姿、矢を射った音そして矢が的に中る音…その音が耳から離れなくてその人のことも目が離せなくなって…カッコいいって思ったの。それで自分も弓をやりたいなって思って…それで……」
彼の姿を思い出しながら夢中になって話していたがハッと我に返り、更に顔を赤くして俯く。
「ご、ごめん…こんな話しで…」
「いや。似たようなものだから気にしないよ」
「それにしても話してるハル可愛かった。まるでその憧れの人に恋をしてるみたい」
ゆうながそんな事を言うので真っ赤にして慌てた。
「ち、違うよ!」
——やばい…その人が鳴宮くんだなんて言えない雰囲気になってしまった!
顔を赤くして話している様子を横目で見ている人物がいるとはこの時は気が付かなかった。
——そういえば…今日は鳴宮くん来てないな…
弓道…やらないのかなぁ……
竹早君の弓を眺めながら鳴宮君の事を考えているとトミー先生から号令がかかり部員達が集まっていた。その様子を見ていたが立ち位置まで歩み寄ると矢道を眺める。
——ここを矢が飛んで的にあたる…
風が頬を撫で部屋の中を通り抜けていくのを感じながらこれからのことに思いを馳せた。
「それじゃあハル。また明日も待ってるよ」
「ハルじゃあね!また明日!」
「ではご機嫌よう、ハルさん」
「うん!みんなまた明日ね!」
ゆうな、白菊、妹尾の三人に挨拶をして自分も帰ろうと足を一歩踏み出した。
次の日の放課後。
今日は弓道場に入ると体操着に着替える。
「今日も来てくれたんだね」
声をかけられたので振り向くと竹早君が立っていた。
「うん。弓道部に入るつもりだからね。楽しみなんだ」
ふふっと笑うと彼も優しい顔をしていた。その時別の方向からも声がする。
「あー!竹早が女の子と喋ってる!メッハー☆」
「えっ…め、メッハー…?」
声をかけてきたのは女子に人気の如月君。なんだか恥ずかしくて声が小さくなる。
「如月。困ってるじゃないか」
「あららー。ごめんごめん!でも仲良く楽しくやろうよ!」
「は、はぁ…」
「ななおくーん!私達も仲良くしたーい!」
彼の勢いに押されていると取り巻き女子達がやってきて体を押されるためバランスを崩して転倒しかける。
「ぅ、わぁ!」
床にコケそうになったところを誰かが支えてくれお礼を言おうと顔を上げたがその表情を見て体が固まり何も言えなかった。
「おめぇら…神聖な弓道場できゃぴきゃぴうるせぇんだよ…七尾も。そいつら黙らせておけ」
「かっちゃん怖い怖い」
如月君にはこの男の睨みなど効いてはいないが周りの女子達には効果抜群だ。静かになったところで我に返り支えてくれた彼こと小野木君を見上げ声をかけた。
「あ、あの…」
「あ"?」
彼は機嫌が悪いのかジロリとこちらを視線だけ向け自分も睨まれた。ビクッと体が強張るが震える声でお礼を伝えた。
「さ、支えてくれて…ありがと……」
「別に。どんくせぇ奴だな」
睨みをきかせたまま言われ怒られた気分になり泣きそうになる。そこへ誰かが割り込み視界が遮られた。
「小野木。この子は本気で入部するつもりだ。だからあまりいじめないでやってくれないか?」
そう言ってくれたのは竹早君だ。声は穏やかだが語尾には少し棘のある言い方に聞こえハラハラと焦る。
「っんだよ。んなの知るか。別に脅しちゃいねーよ」
「へぇー。竹早って意外と熱いところがあるんだね」
如月君も話に加わってきてそんな事を言っているが取り巻き女子の視線が痛くて早くこの場を離れたい。
「あの。竹早くん、ありがとう。どんくさいのは事実だからもっとテキパキ動けるようにするよ」
早口にそう言うと「向こうにいるね」と入り口から反対側へと避難した。そこへトミー先生がやってきて説明が始まる。
「えー、さて…今でこそちょっとレアなモテアイテムじゃが弓というものはごくごく身近にあったものじゃ」
「その証拠に世の中には弓が由来と言われる言い回しが結構あってのぉ…例えば"手の内を明かす"。これは弓の持ち方が秘伝であったからとも言われておる」
トミー先生の説明の合間に竹早君が矢を男子達に渡しており自分にも「どうぞ」と手渡された。
——これが矢…
細いそれはしっかりしており真っ直ぐな一本に目を輝かせた。
「んー…ボーイズ&ガールズは他に何か知っておるかなー?」
トミー先生が何か言っているが話半分に夢中になって矢を眺めていた。すると次に聞こえたトミー先生の声に反応を示す。
「さて、実際に弓に触れてみてもらおうかの」
その言葉にさっきよりも目を輝かせてトミー先生の方を見る。女子部員達が早すぎないかと言っているがトミー先生は「実際にみんと分からんじゃろ」と笑っている。
ワクワクして弓が回ってくるのを待っていると「これを」と竹早が弓を渡してくれた。
「えっ、でもこれは…」
明らかにみんなが持ってみているものとは違う弓。
「これは僕のだよ」
「そ、そんな大事なもの!持てないよ!」
両手を突き出してダメダメとするが彼は微笑んだまま譲らない。
「君に持ってほしいんだ」
そんなことを言われ頬を少し染めると彼が持つ弓にお礼を言いながら手を伸ばした。手渡された弓は意外と重く鼓動が速くなった。
——これが…弓…
みんなから距離を取って弓を立てて持ってみる。上から下までじっくり眺めた。
自分も出来るか分からないが弓を引きたい気持ちがうんと高まった。目を輝かせて見ていると竹早君が弓について説明をしてくれそれを熱心に聞く。女子部員達も来てくれて竹早君が紹介してくれた。
「この人は遼平と同じクラスの〇〇ハルさん。〇〇さん、この人達が女子部員だよ」
「初めまして。初心者ですけど弓道部に入部予定の者です」
お辞儀をしながら挨拶をするとみんな喜んでくれた。
「初心者でも大歓迎だよー!入部してくれると嬉しいな」
そう話すのは花沢ゆうなさん。
髪を二つ結びして可愛らしい。
「入部されましたら仲良くしましょう」
そして長髪をハーフアップにして凛とした面持ちの白菊乃愛さん。
「初心者でも嬉しいよ。待ってるから是非入ってほしい」
最後に背の高いショートカットの妹尾梨可さん。
「はい!入部したらよろしくお願いします!」
「同い年なんだから敬語はいらないよ〜」
「そうですわよ。遠慮はいりませんわ」
「タメ口で構わないから」
みんながそう言ってくれるのでお言葉に甘えて敬語なしで話す事に。
「ハルは何で弓道したいの?」
ゆうなに質問されるため答える。
「その…ある人の弓道してる姿を見て憧れて…」
話すのがなんだか恥ずかしくなって段々声が小さくなる。
「えー!誰だろう!」
「だ、誰でもいいよ!」
顔を赤くしながらみんなを見て話を続けた。
「その人の弓は凄く綺麗だった。弓を構える姿、矢を射った音そして矢が的に中る音…その音が耳から離れなくてその人のことも目が離せなくなって…カッコいいって思ったの。それで自分も弓をやりたいなって思って…それで……」
彼の姿を思い出しながら夢中になって話していたがハッと我に返り、更に顔を赤くして俯く。
「ご、ごめん…こんな話しで…」
「いや。似たようなものだから気にしないよ」
「それにしても話してるハル可愛かった。まるでその憧れの人に恋をしてるみたい」
ゆうながそんな事を言うので真っ赤にして慌てた。
「ち、違うよ!」
——やばい…その人が鳴宮くんだなんて言えない雰囲気になってしまった!
顔を赤くして話している様子を横目で見ている人物がいるとはこの時は気が付かなかった。
——そういえば…今日は鳴宮くん来てないな…
弓道…やらないのかなぁ……
竹早君の弓を眺めながら鳴宮君の事を考えているとトミー先生から号令がかかり部員達が集まっていた。その様子を見ていたが立ち位置まで歩み寄ると矢道を眺める。
——ここを矢が飛んで的にあたる…
風が頬を撫で部屋の中を通り抜けていくのを感じながらこれからのことに思いを馳せた。
「それじゃあハル。また明日も待ってるよ」
「ハルじゃあね!また明日!」
「ではご機嫌よう、ハルさん」
「うん!みんなまた明日ね!」
ゆうな、白菊、妹尾の三人に挨拶をして自分も帰ろうと足を一歩踏み出した。