鳴宮湊ver.
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1.
「俺を入部させて下さい。」
ある日の放課後。
用事でいつもより遅い時間に弓道場に足を踏み入れれば、そう頭を下げる彼の姿が視界に入った。
彼は弓袋と矢筒を持ち背筋を伸ばして立っている。
(…入部?え、鳴宮くんが入部…?)
頭の中が混乱して呆然とその場から動けなくなった。彼が小野木君や七緒君、竹早君達と何やら話していたけれど耳には届かない。
(鳴宮くんが…弓をまた引く…戻って来てくれた…!)
やっと状況を飲み込めれば安堵し視界がボヤけ始めた。
あの時の言葉により自責の念を抱いていた自分にとってこの上なく嬉しい出来事。そして杞憂な事で済んだとそれにも安心したのだ。
一度入りかけた道場内だけれどまた靴を履いて外へ出る。弓道場の裏へ周ればハンカチで涙をそっと拭いとった。
泣き顔で皆の前に出る訳にはいかない。
「…ハルさん?」
そこへ名前を呼ばれ顔を上げれば竹早君が立っていた。
「た、竹早くんっ!これはその…!」
これは違くてっ!、と慌てながらも鼻を啜ってしまい、目の前まで歩みを進めてきた彼に何も言えなくなってしまう。
「湊が入部したよ。」
「うん…。」
「大丈夫だったでしょ?」
「…うん。」
「涙を流すまで思い詰めていたなんて…。」
そこまで気にする必要なかったのに、と頭に手が乗るのが分かった。
その手は温かく、優しく、また彼の言葉に涙がじんわりと滲みハンカチで目頭を押さえる。
竹早くんは頭に手を乗せたまま落ち着くまで待ってくれた。
道場内から「竹早どこだー!」と小野木君の大きな声が響いている。
「もう行かないとだね。」
「そうだね。平気かい?」
「うん、もう大丈夫。ありがとう。」
どういたしまして、と互いに言葉を交わしてから道場内へと向かう。
一緒に中へ入れば鳴宮君が既に着替えを済ませ、その姿に心が震えるのを感じた。
「竹早どこ行ってたんだよ。」
「どこでも。ただ小野木の声が聞こえる所には居たよ。」
「てんめぇ…!」
「まぁまぁかっちゃん。すぐ戻ってきたんだからいいじゃん。」
「俺はさっさと始めたいんだ!」
憤慨する小野木君を背後をそろそろと静かに通り過ぎ自分も早く着替えを済ませようと準備を始めた。
着替えを終え道場内に入ればそれぞれストレッチを始めているところだった。
自分も女子部員に混じってストレッチをする。
自分は新入部員メニューをこなす為に外へ出ようと出入口付近に歩みを進めたところで竹早君と鳴宮君が目の前に居た。
「これからランニングかい?」
「うん。行ってくるね。」
「気を付けて。行ってらっしゃい。」
竹早君と話すも隣に居る鳴宮君は訝しげにこちらを見ていた。
「…あの、鳴宮、くん…。」
声が微かに震えてるのが分かったけれどこれから入部して共に過ごすなら今ここで話しかけないといけないと勇気を出した。
彼は少し驚きながらも視線が交わる。
「君は…?」
「あの時はごめんなさいっっっ!!」
「えっ…急になんだ…?」
「えっ?」
謝らなきゃ、謝らなきゃ、と謝罪の事ばかり考えていたと言うのに、当の本人は不思議そうに首を傾げていたのだ。
「まず君と面識があったかな…。」
「……。」
なんと言うことだ。
彼はあの時のことを覚えておらず自分は謝罪出来た安堵感とショックで力が抜けて床に座り込んでしまった。
「湊…本当に覚えてないの?」
そこへ竹早君が呆れた様な声で確認するのが聞こえてきた。
「えっと…見た事ある様な気がするけど…はっきりと覚えてなくて…。」
ごめん、と申し訳なさそうに謝罪され何故か涙が溢れてしまう。
「え!ご、ごめん!本当にごめん!」
どうしよう!、と慌てている彼に申し訳ないけれど涙が止まらない。
「私…鳴宮くんの射を見て…弓道を始めて……。」
憧れの人が目の前にいるのになんたる醜態だ、と悲しさも込み上げ情けなくなってきた。
そこへ届く彼の大きな声。
「ああ!思い出した!ランニングしてた子だ!」
彼はそこで思い出してくれ、ニカっと笑ってくれる。
「あの時は酷い態度をとってごめん。色々あったから…。」
と、眉尻を下げ申し訳なさそうに話してくれる彼の姿を見て涙が止まった。
「ううん、私の方こそ驚かせてごめんなさい…。」
「いいんだ。君も弓道を始めてくれて俺も嬉しいよ。これからよろしく。」
手にしていたタオルで涙やら鼻水やら拭って鳴宮君に「ありがとう。よろしくね。」、そう感謝の気持ちを伝えれば奥の方から不機嫌な声が飛んできた。
「いつまでダラダラしてんだ。早く始めるぞ。」
小野木君の言葉で男子達はそれぞれ動き出した。
鳴宮君も立ち上がって竹早君の元へと歩み寄る後ろ姿を見つめる。
「ハルちゃ〜ん?」
そこへ顔中をニヤつかせながら傍に寄るゆうな。
「なんでしょう…?」
「憧れの人の射を見て弓道を始めたいってこの前話してくれたよね〜?」
ビクリと肩を揺らしてチラリと彼女を見る。
「な、なんの事かな〜?そんな事言ったかな〜?」
「とぼけたって無駄よ?ここには証人がたくさんいるんだから!」
「ええ。わたくしもしっかりと聞きましたわ。」
「残念だけど私も覚えてる。」
「み、みんな〜!」
忘れてくれていなかったあの時の憧れの人の話。
「はは〜ん。ハルの憧れの人は鳴宮の事だったんだね〜。」
なるほど、とゆうなが何度も頷いている。
「憧れだけど…好きとかそういうのじゃないから…!」
必死に弁明をするが彼女達はどこか楽しげだ。
「あら。いいじゃありませんの。憧れが恋慕に変わることはよくある事だと思いますわ。ただし公私は弁えるべきですけど。」
「そうだね。隠す事じゃないと思うし素敵なことじゃないか。応援してる。」
なんて白菊や妹尾にまで言われる始末。
本当に恋愛感情なんてないにも関わらず。
三人組から逃げるように外へ出れば、小さく溜息吐く。そしてランニングの為に走り出すのだった。
「俺を入部させて下さい。」
ある日の放課後。
用事でいつもより遅い時間に弓道場に足を踏み入れれば、そう頭を下げる彼の姿が視界に入った。
彼は弓袋と矢筒を持ち背筋を伸ばして立っている。
(…入部?え、鳴宮くんが入部…?)
頭の中が混乱して呆然とその場から動けなくなった。彼が小野木君や七緒君、竹早君達と何やら話していたけれど耳には届かない。
(鳴宮くんが…弓をまた引く…戻って来てくれた…!)
やっと状況を飲み込めれば安堵し視界がボヤけ始めた。
あの時の言葉により自責の念を抱いていた自分にとってこの上なく嬉しい出来事。そして杞憂な事で済んだとそれにも安心したのだ。
一度入りかけた道場内だけれどまた靴を履いて外へ出る。弓道場の裏へ周ればハンカチで涙をそっと拭いとった。
泣き顔で皆の前に出る訳にはいかない。
「…ハルさん?」
そこへ名前を呼ばれ顔を上げれば竹早君が立っていた。
「た、竹早くんっ!これはその…!」
これは違くてっ!、と慌てながらも鼻を啜ってしまい、目の前まで歩みを進めてきた彼に何も言えなくなってしまう。
「湊が入部したよ。」
「うん…。」
「大丈夫だったでしょ?」
「…うん。」
「涙を流すまで思い詰めていたなんて…。」
そこまで気にする必要なかったのに、と頭に手が乗るのが分かった。
その手は温かく、優しく、また彼の言葉に涙がじんわりと滲みハンカチで目頭を押さえる。
竹早くんは頭に手を乗せたまま落ち着くまで待ってくれた。
道場内から「竹早どこだー!」と小野木君の大きな声が響いている。
「もう行かないとだね。」
「そうだね。平気かい?」
「うん、もう大丈夫。ありがとう。」
どういたしまして、と互いに言葉を交わしてから道場内へと向かう。
一緒に中へ入れば鳴宮君が既に着替えを済ませ、その姿に心が震えるのを感じた。
「竹早どこ行ってたんだよ。」
「どこでも。ただ小野木の声が聞こえる所には居たよ。」
「てんめぇ…!」
「まぁまぁかっちゃん。すぐ戻ってきたんだからいいじゃん。」
「俺はさっさと始めたいんだ!」
憤慨する小野木君を背後をそろそろと静かに通り過ぎ自分も早く着替えを済ませようと準備を始めた。
着替えを終え道場内に入ればそれぞれストレッチを始めているところだった。
自分も女子部員に混じってストレッチをする。
自分は新入部員メニューをこなす為に外へ出ようと出入口付近に歩みを進めたところで竹早君と鳴宮君が目の前に居た。
「これからランニングかい?」
「うん。行ってくるね。」
「気を付けて。行ってらっしゃい。」
竹早君と話すも隣に居る鳴宮君は訝しげにこちらを見ていた。
「…あの、鳴宮、くん…。」
声が微かに震えてるのが分かったけれどこれから入部して共に過ごすなら今ここで話しかけないといけないと勇気を出した。
彼は少し驚きながらも視線が交わる。
「君は…?」
「あの時はごめんなさいっっっ!!」
「えっ…急になんだ…?」
「えっ?」
謝らなきゃ、謝らなきゃ、と謝罪の事ばかり考えていたと言うのに、当の本人は不思議そうに首を傾げていたのだ。
「まず君と面識があったかな…。」
「……。」
なんと言うことだ。
彼はあの時のことを覚えておらず自分は謝罪出来た安堵感とショックで力が抜けて床に座り込んでしまった。
「湊…本当に覚えてないの?」
そこへ竹早君が呆れた様な声で確認するのが聞こえてきた。
「えっと…見た事ある様な気がするけど…はっきりと覚えてなくて…。」
ごめん、と申し訳なさそうに謝罪され何故か涙が溢れてしまう。
「え!ご、ごめん!本当にごめん!」
どうしよう!、と慌てている彼に申し訳ないけれど涙が止まらない。
「私…鳴宮くんの射を見て…弓道を始めて……。」
憧れの人が目の前にいるのになんたる醜態だ、と悲しさも込み上げ情けなくなってきた。
そこへ届く彼の大きな声。
「ああ!思い出した!ランニングしてた子だ!」
彼はそこで思い出してくれ、ニカっと笑ってくれる。
「あの時は酷い態度をとってごめん。色々あったから…。」
と、眉尻を下げ申し訳なさそうに話してくれる彼の姿を見て涙が止まった。
「ううん、私の方こそ驚かせてごめんなさい…。」
「いいんだ。君も弓道を始めてくれて俺も嬉しいよ。これからよろしく。」
手にしていたタオルで涙やら鼻水やら拭って鳴宮君に「ありがとう。よろしくね。」、そう感謝の気持ちを伝えれば奥の方から不機嫌な声が飛んできた。
「いつまでダラダラしてんだ。早く始めるぞ。」
小野木君の言葉で男子達はそれぞれ動き出した。
鳴宮君も立ち上がって竹早君の元へと歩み寄る後ろ姿を見つめる。
「ハルちゃ〜ん?」
そこへ顔中をニヤつかせながら傍に寄るゆうな。
「なんでしょう…?」
「憧れの人の射を見て弓道を始めたいってこの前話してくれたよね〜?」
ビクリと肩を揺らしてチラリと彼女を見る。
「な、なんの事かな〜?そんな事言ったかな〜?」
「とぼけたって無駄よ?ここには証人がたくさんいるんだから!」
「ええ。わたくしもしっかりと聞きましたわ。」
「残念だけど私も覚えてる。」
「み、みんな〜!」
忘れてくれていなかったあの時の憧れの人の話。
「はは〜ん。ハルの憧れの人は鳴宮の事だったんだね〜。」
なるほど、とゆうなが何度も頷いている。
「憧れだけど…好きとかそういうのじゃないから…!」
必死に弁明をするが彼女達はどこか楽しげだ。
「あら。いいじゃありませんの。憧れが恋慕に変わることはよくある事だと思いますわ。ただし公私は弁えるべきですけど。」
「そうだね。隠す事じゃないと思うし素敵なことじゃないか。応援してる。」
なんて白菊や妹尾にまで言われる始末。
本当に恋愛感情なんてないにも関わらず。
三人組から逃げるように外へ出れば、小さく溜息吐く。そしてランニングの為に走り出すのだった。