胸に響くその音を
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1.入学式
春。
桜が舞う季節に私は風舞高校の一年生になった。
名前は〇〇ハル、16歳。
「ハルー!早くしなさーい!」
「分かってるよー!」
鏡の前でもう一度制服姿の自分を見てどこもおかしくないか入念にチェックする。
「よし!」
鞄を持ち玄関に走る。靴を履くところへ母親が。
「それじゃあ!行ってきます!」
「気をつけるのよ?」
「うん!分かってるって!」
笑顔で玄関を出ると大きく伸びをした。
——これから新しい高校生活が始まるんだ!
希望を胸にこれから毎日通うことになるであろう通学路に足を進めた。
「ハル!おはよう!」
「麻衣!おはよ〜!」
学校の近くで中学からの友人、桜坂麻衣 が声をかけてきた。彼女は私よりも幾分か背が高くショートカットで活発な女の子だ。
「私たちも高校生かぁ〜」
「ほんと感慨深いよね〜」
なんてしみじみと会話をしてると高校に着いた。クラスは麻衣と一緒で教室へ。なんだか緊張する。周りの子がみんな大人っぽく見えるのは気のせいではないだろう。
ドキドキしながら麻衣の後ろを歩き席に着く。
時間になると年配のおじいさんが教室に入ってきた。
「わしは今日から君たちの担任をする、森岡富男じゃ。みなからはトミー先生と呼ばれておる。好きなように呼んでくれて構わんぞ。では、体育館に向かうとするかの」
トミー先生の号令でみんなで体育館に向かった。体育館では入学式が行われ新入生の挨拶で壇上に男子生徒が登った。
——あれ……あの子どこかで…
壇上に登った男子生徒が何処か見覚えがある気がしたが思い出せず頭を抱える。そこへヒソヒソ話が耳に入ってきた。
"あの人、入試トップだって"
"ええ!めっちゃ頭いいじゃん"
——あの子頭いいんだ…
彼が誰か思い出せず、ボーっとしながらそんなことを考えている。そうこうしている内にいつのまにか挨拶が終わり入学式も終わっていた。
教室に戻ってトミー先生から今後のことで説明がある。部活動の勧誘がこれから始まるとのことでできれば何かしらに入ってほしいとの事だった。
「わしもある部活動の顧問を受け持っておる」
そう言って左腕を伸ばし、右手を曲げて真っ直ぐ前を見つめている。それを見てハッとした。その"構え"に目を輝かせて前のめりで見つめた。目が合うとニコリと微笑む先生。
「興味がある人は是非ともきてくれて構わん。初心者も大歓迎じゃよ」
なるほど。この高校にはあるのだと期待に胸が膨らむ。もう入部する部活は決まりだ。
俄然やる気が出てきて体がうずうずしてしまう。HRが終わり麻衣のところへ行き部活動の話になった。
「トミー先生のあれ、なんだったんだろうな」
「麻衣、分からなかった?あれは弓道の構えだよ。ここには弓道部があるみたい…私入ってみようかな!」
「ほぅほぅ。それはいいことじゃのぉ」
「「トミー先生!!」」
いつのまにか背後に立っていたおじいちゃん先生に驚きつつも先生に向き直る。
「あの、私初心者ですけど…大丈夫でしょうか?」
「構わんよ。近々入部説明会をする予定じゃから是非とも来て欲しい」
では気をつけて帰るのじゃよ、とトミー先生は教室を出て行った。
「ハル、弓道部に入るんだね」
「うん。そのつもり。麻衣はバスケ?」
もちろん、と麻衣がニカっと笑う。
麻衣は中学の時からバスケ部だ。バスケ部を見に行くというので一緒について行った。
麻衣はその場でバスケ部の入部を決め、その後家に帰ることに。玄関で靴を履いているとトミー先生が通りかかったので挨拶をする。
「トミー先生!また明日!」
「おぉ。また明日の」
おじいちゃん先生でなんだか憎めない。そんな会話をしながら校門へ向かって歩いていると誰かとぶつかった。
「ぅわぁ!」
「きゃっ!」
荷物が肩から落ち、尻もちをついてしまう。真新しい制服が…なんてショックを受けつつもお尻と肘が地味に痛い…。
「いたた…」
「いってー…って、うわぁ!ごめん!大丈夫?!」
そう声をかけてきたのは金髪でそばかすのある男の子だ。
「う、うん。大丈夫」
「いや。大丈夫じゃないよ。ほら、怪我してる」
その金髪の男の子の影からにゅっと顔を出してきたのは新入生挨拶をしたあの男の子だった。
「あ、あなたは…確か入学式で…」
「ん?ああ…君も新入生?」
「うん…一年九組です」
「ええ!俺と同じじゃんかー!」
「そうなの?」
「それより、ハル。ゲガしてるから保健室行こう」
麻衣の声かけで頷くと新入生代表で挨拶をした男の子が手を差し出してくれた。その手を取ると支えて立たせてくれる。お礼を言うと金髪の男の子も立ち上がり顔を覗いてきた。
——わっ…この子背が高い…
「遼平。距離が近い…すみません。良かったら保健室に行くまでの間にこれを使って。僕は竹早静弥。こっちは山之内遼平」
「ッス!」
竹早君がハンカチを渡してくれ山之内君はニカッと笑う。そして痛む肘を気にすれば山之内君から「ごめんな」と謝罪が。本当に申し訳なさそうにする彼に何だが耳が生えてる様な錯覚に陥る。
「私は〇〇ハル。こっちは友達の麻衣。竹早くん、ハンカチありがと」
「いや、本来なら保健室まで送り届けるべきなんだけど、生憎予定があって…」
「俺もバスの時間が…!ほんとごめん!また明日な!」
山之内君は手を振り、竹早君は「すまない」と軽くお辞儀をし校門を出て行った。とりあえず近くの水道でかりたハンカチを使って傷口を綺麗にし保健室へ向かう。
「山之内くんは私達とクラス一緒だったね」
「だな。バカっぽいけど」
「そんなこと言っちゃダメでしょ」
麻衣の手厳しい意見に笑いを堪えつつ保健室で手当してもらう。ハンカチは洗って返さなければ。ハンカチを見つめ竹早君の事を思い返す…やはり彼に対して既視感を持っていてそれがずっと気になっていた。
けれど、どこで見かけたのか思い出せず謎が深まる入学の日となったのだった。
春。
桜が舞う季節に私は風舞高校の一年生になった。
名前は〇〇ハル、16歳。
「ハルー!早くしなさーい!」
「分かってるよー!」
鏡の前でもう一度制服姿の自分を見てどこもおかしくないか入念にチェックする。
「よし!」
鞄を持ち玄関に走る。靴を履くところへ母親が。
「それじゃあ!行ってきます!」
「気をつけるのよ?」
「うん!分かってるって!」
笑顔で玄関を出ると大きく伸びをした。
——これから新しい高校生活が始まるんだ!
希望を胸にこれから毎日通うことになるであろう通学路に足を進めた。
「ハル!おはよう!」
「麻衣!おはよ〜!」
学校の近くで中学からの友人、
「私たちも高校生かぁ〜」
「ほんと感慨深いよね〜」
なんてしみじみと会話をしてると高校に着いた。クラスは麻衣と一緒で教室へ。なんだか緊張する。周りの子がみんな大人っぽく見えるのは気のせいではないだろう。
ドキドキしながら麻衣の後ろを歩き席に着く。
時間になると年配のおじいさんが教室に入ってきた。
「わしは今日から君たちの担任をする、森岡富男じゃ。みなからはトミー先生と呼ばれておる。好きなように呼んでくれて構わんぞ。では、体育館に向かうとするかの」
トミー先生の号令でみんなで体育館に向かった。体育館では入学式が行われ新入生の挨拶で壇上に男子生徒が登った。
——あれ……あの子どこかで…
壇上に登った男子生徒が何処か見覚えがある気がしたが思い出せず頭を抱える。そこへヒソヒソ話が耳に入ってきた。
"あの人、入試トップだって"
"ええ!めっちゃ頭いいじゃん"
——あの子頭いいんだ…
彼が誰か思い出せず、ボーっとしながらそんなことを考えている。そうこうしている内にいつのまにか挨拶が終わり入学式も終わっていた。
教室に戻ってトミー先生から今後のことで説明がある。部活動の勧誘がこれから始まるとのことでできれば何かしらに入ってほしいとの事だった。
「わしもある部活動の顧問を受け持っておる」
そう言って左腕を伸ばし、右手を曲げて真っ直ぐ前を見つめている。それを見てハッとした。その"構え"に目を輝かせて前のめりで見つめた。目が合うとニコリと微笑む先生。
「興味がある人は是非ともきてくれて構わん。初心者も大歓迎じゃよ」
なるほど。この高校にはあるのだと期待に胸が膨らむ。もう入部する部活は決まりだ。
俄然やる気が出てきて体がうずうずしてしまう。HRが終わり麻衣のところへ行き部活動の話になった。
「トミー先生のあれ、なんだったんだろうな」
「麻衣、分からなかった?あれは弓道の構えだよ。ここには弓道部があるみたい…私入ってみようかな!」
「ほぅほぅ。それはいいことじゃのぉ」
「「トミー先生!!」」
いつのまにか背後に立っていたおじいちゃん先生に驚きつつも先生に向き直る。
「あの、私初心者ですけど…大丈夫でしょうか?」
「構わんよ。近々入部説明会をする予定じゃから是非とも来て欲しい」
では気をつけて帰るのじゃよ、とトミー先生は教室を出て行った。
「ハル、弓道部に入るんだね」
「うん。そのつもり。麻衣はバスケ?」
もちろん、と麻衣がニカっと笑う。
麻衣は中学の時からバスケ部だ。バスケ部を見に行くというので一緒について行った。
麻衣はその場でバスケ部の入部を決め、その後家に帰ることに。玄関で靴を履いているとトミー先生が通りかかったので挨拶をする。
「トミー先生!また明日!」
「おぉ。また明日の」
おじいちゃん先生でなんだか憎めない。そんな会話をしながら校門へ向かって歩いていると誰かとぶつかった。
「ぅわぁ!」
「きゃっ!」
荷物が肩から落ち、尻もちをついてしまう。真新しい制服が…なんてショックを受けつつもお尻と肘が地味に痛い…。
「いたた…」
「いってー…って、うわぁ!ごめん!大丈夫?!」
そう声をかけてきたのは金髪でそばかすのある男の子だ。
「う、うん。大丈夫」
「いや。大丈夫じゃないよ。ほら、怪我してる」
その金髪の男の子の影からにゅっと顔を出してきたのは新入生挨拶をしたあの男の子だった。
「あ、あなたは…確か入学式で…」
「ん?ああ…君も新入生?」
「うん…一年九組です」
「ええ!俺と同じじゃんかー!」
「そうなの?」
「それより、ハル。ゲガしてるから保健室行こう」
麻衣の声かけで頷くと新入生代表で挨拶をした男の子が手を差し出してくれた。その手を取ると支えて立たせてくれる。お礼を言うと金髪の男の子も立ち上がり顔を覗いてきた。
——わっ…この子背が高い…
「遼平。距離が近い…すみません。良かったら保健室に行くまでの間にこれを使って。僕は竹早静弥。こっちは山之内遼平」
「ッス!」
竹早君がハンカチを渡してくれ山之内君はニカッと笑う。そして痛む肘を気にすれば山之内君から「ごめんな」と謝罪が。本当に申し訳なさそうにする彼に何だが耳が生えてる様な錯覚に陥る。
「私は〇〇ハル。こっちは友達の麻衣。竹早くん、ハンカチありがと」
「いや、本来なら保健室まで送り届けるべきなんだけど、生憎予定があって…」
「俺もバスの時間が…!ほんとごめん!また明日な!」
山之内君は手を振り、竹早君は「すまない」と軽くお辞儀をし校門を出て行った。とりあえず近くの水道でかりたハンカチを使って傷口を綺麗にし保健室へ向かう。
「山之内くんは私達とクラス一緒だったね」
「だな。バカっぽいけど」
「そんなこと言っちゃダメでしょ」
麻衣の手厳しい意見に笑いを堪えつつ保健室で手当してもらう。ハンカチは洗って返さなければ。ハンカチを見つめ竹早君の事を思い返す…やはり彼に対して既視感を持っていてそれがずっと気になっていた。
けれど、どこで見かけたのか思い出せず謎が深まる入学の日となったのだった。