その瞳に捕らわれてーafter storyー
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電話の相手*
彼女のあの告白を聞いてから前以上に大切に想うようになった。彼女が隣に座ろうとすれば手を引いて胡座をかいたそこに座らせ後ろから抱きしめ、あの二文字の言葉を言わなくても遠回しに甘い言葉を囁いたり…そうする度に顔を赤くする彼女が愛おしく今すぐ気持ちを伝え自分のものにしたい衝動に駆られる。
彼女はあの呟きを知らないようで自分の変わり様に戸惑っている様子だ。
「零さん?ここ最近どうしたんですか?」
いつも以上に甘いです…と後ろから抱きしめられながらそう話す彼女。顔を覗き込むと頬を微かに染めているものだから堪らず抱きしめ後ろ髪を掻き分けうなじにキスを落とす。
「んッ、零さん……」
逃げようとする彼女を腕の中に閉じ込めうなじに唇を這わせ時折舌で舐める。
「待っ…んッ、」
ピクンと小さく跳ねる体、漏れる甘い声に下半身が疼く。このまま彼女を食べてしまおうか、そう思った瞬間、自分のスマホから着信音が鳴り響く。
動きを止めその音に耳を傾けた。
心の中でため息をつくとゆっくり彼女から離れ立ち上がる。
「ハルさん。どうやら仕事からの電話のようです。少し待ってて下さい」
笑顔で声をかけスマホを取ると彼女に背を向け寝室へ入る。笑顔を消し履歴から先程の番号に折り返す。
『Hi?バァーボン?お邪魔だったかしら?』
電話越しに聞こえるその女の声は微かに笑っているようだった。
「何もお邪魔ではありませんよ」
こちらもにこやかに答え何もなかったかのように話す。
『あら。あのお嬢ちゃんとは上手くいってないのかしら?』
「ご冗談を。何を根拠にそのような事を…僕にはそんな現を抜かしてる暇なんかありませんよ。あなたこそ今度はいつ僕の相手をしてくれるんです?」
『随分と積極的ねぇ?あの娘じゃ物足りないのかしら?』
「勘違いされては困りますね…お酒の相手ですよ」
『連れないのね』
「何とでも。それより連絡があるという事は次の仕事ですか?」
『ええ』
仕事の内容を聞き瞬時に覚えると電話を切ろうとする。
『なんだか変わったわね』
「何がです?」
面白そうに話す女の声が聞こえ会話を続けた。
『あの娘はいい子だものね〜』
「彼女とはあれ以来顔を合わせておりませんが?」
『そう?なら何故あの後GPSも盗聴器もすぐに反応しなくなったのかしら?』
それを聞いて心臓が小さく跳ねる。
やはりすぐに取り出したのはまずかったか。
「彼女にそんなものを仕込んだんですか?怪しい人物には見えませんでしたが」
それでもシラを切り知らないふりをした。電話越しに突如笑い声が聞こえる。
『あえて仕込んだのよ。ワザと二つに分けて仕込んだのに二つとも反応しなくなるんだもの。あなたが処理したことくらいお見通しよ、バーボン?』
クスクスと笑い一体何を考えているのか読めない。
「もし彼女と知り合いならばどうするのです?」
気がつけばそんなことを聞いておりしまったと焦る。
『あら。いつもの切り返しとは違うわね』
彼女はそんなことにもいちいち反応を示すため気をつけていたのだがボロが出てしまった。
『ちなみにどうもしないわよ。黙っててあげるからお願いを聞いてくれるかしら?』
「なんでしょう。僕の出来るお願いならいくらでも叶えてあげますよ?」
『そんな台詞を聞きたいわけじゃないわ。女同士で話がしたいの。彼女に代わってくれる?』
近くにいるんでしょう?と軽快な口調で話す女の声を聞いてスマホをキツく握りしめた。
『何を言っても無駄よ。代わらないのなら彼女のことを彼に言うわ』
一瞬だけ歯を食い縛ると女に声をかけた。
「分かりました」
電話を切らないまま寝室から出ると彼女が笑ってこちらを見る。声をかけられる前に人差し指を口元に当てて声を出さないようにジェスチャーで示した。
「あなたとお話がしたいそうですよ」
「えっ?私と…?」
誰だろう、とスマホを受け取り「もしもし」と声をかけ始めた。その様子をじっと見つめていると彼女と目が合いニコリと安室透で笑う。
「あっ!あの時の!」
ようやく彼女は誰からか分かり顔を綻ばせて話始める。今すぐそのスマホを手から抜き取って切りたいぐらいだがグッと堪えてキッチンの方へ向かった。
「GPS?盗聴器?なんの事ですか?」
彼女の声でそんなことが聞こえ耳をすませる。
「あっ…えっと…その……はい…」
恥じらうような声がして一体何を話しているのか気になる。
「えっと…本当に彼とは何にもないですよ?今はたまたまこの間助けて頂いたお礼をしにお邪魔させて頂いてるんです」
「そうでしょうか……でもなぜあなたが心配を?」
彼女達の会話はなんとなく想像はつくが早く電話を切ってくれないかと少し焦る。
キッチンを出てリビングに入ると彼女の隣に座った。その隣からは笑い声が聞こえる。
「ふふっ。確かにそうですね」
クスクスと笑っている彼女の顔はとても柔らかで見ていて心が和む。電話の相手があの女でなければこのままイタズラをしても良かったのだが…
ーー風見の時にやってみるか
なんてことを思いつきクスリと笑う。
「はい、はい。またお話出来たらお願いします」
ふふっと笑って別れの挨拶をしているようだ。
「あ、あの!その…お体には気を付けて下さいね?それではまた…」
最後にそう話すと電話を切ってスマホを手渡された。
「まさかあの人とお話出来るなんて」
またふふっと笑っている彼女の肩を引き寄せ抱き締める。
「えっ?零さん…?」
彼女は何故このタイミングで抱き締められているのか不思議そうにしているが遠慮がちに腕が回され自分も抱き締められたのが分かった。
「あんなに楽しそうに話されていると妬けちゃいますよ」
「何を言ってるんですか。女の人ですよ?」
また小さく笑い声が聞こえ顔を綻ばせているのが見なくても分かる。
「でも…妬いてくれるのはちょっと嬉しいかも」
今度はそんな事を言って胸に擦り寄ってくるものだから体がザワリと震える。体を離して彼女に口付けをする。
「ハルさん…あなたって人は…」
小さく呟くと背中に回していた手を服に忍ばせて肌に触れ優しく撫で回すと彼女から声が漏れ始めた。
「んッ…ゃッ…」
自分が与える刺激に小さく跳ねる体。我慢するように押し殺しているくぐもった声。そして瞳を潤ませ頬を染め切なげな表情をしている顔。
その全てが愛おしい。
電話で先程の甘い時間が流れてしまったが仕切り直すことにした。
ーーーーー
「GPS?盗聴器?なんの事ですか?」
『あら?あなたの体に仕込んでいたのだけれど…』
「あっ!あれ!」
彼から自分と話したい、そうスマホを渡され耳にあてる。電話の相手があの時自分を攫った女の人で驚いた。そしてその時に仕込んだGPSなどについて聞かれたがスッカリ忘れてしまっていた。
『その様子だと彼がとってくれたのかしら?』
「あっ…えっと…その……はい…」
あの時のことを思い出して恥ずかしくなる。
『今彼と一緒にいるけど恋仲になったようね』
「えっと…本当に彼とは何にもないですよ?今はたまたまこの間助けて頂いたお礼をしにお邪魔させて頂いてるんです」
『あらそうなの…残念ね』
電話越しに聞こえる声は本当に残念そうに聞こえ不思議に思う。
『彼はあなたを側に置いておきたいはずよ?応援してるわ。心配だからたまに連絡しようかしら』
「そうでしょうか……でもなぜあなたが心配を?」
『何故、ねぇ〜。私にも分からないわ』
クスリと小さく笑ったのが聞こえた。
『まぁ彼はあなたの事は私に知られたくないようだけど。今も睨みをきかせてるんでしょう?』
彼女にそう聞かれチラリと隣に座った彼を見る。
彼はじっとこちらを見ているがその瞳は真剣だ。しかしそれは一瞬しか見ることが出来ずすぐににこやかな笑顔になった。
「ふふっ。確かにそうですね」
電話越しでも彼女は分かるようでそう伝えると笑い声がして「そろそろ切るわ」と電話の終焉を告げる。またお話が出来ればいいな、そう伝えると「ありがとう」と少しだけ寂しげな声で返事があった。堪らずまた声をかけ「体に気をつけてと」と伝える。
ーー自分を攫った相手なのに『気を付けて』なんて…
何故かは分からないが彼女を嫌いにはなれなかった。彼の事を知る共通の相手だからなのか分からないけれど、嫌ではなかったのだ。彼は仲良くなるのは快く思っていないようだけど。
「あんなに楽しそうに話されていると妬けちゃいますよ」
今だって電話を切った後、抱きしめられて妬けるなんて言われてしまう。相手は女の人なのに。それが本当なのか冗談で言ってるのかは分からないけど冗談でも嬉しい。
「でも…妬いてくれるのはちょっと嬉しいかも」
そう言って彼の胸に擦り寄った。
彼の温もりはとても居心地がいい。その温もりを感じていたかったが体が離され口付けをされる。
「ハルさん…あなたって人は…」
その言葉が耳に届くのと同時に背中にある彼の手がいやらしく動く。服の下から手が忍び込み優しく撫でるように何度も手が往復する。それだけでもゾワゾワと甘く痺れる感覚が体中を駆け抜ける。
「んッ…ゃッ……」
背中に回した手で彼のシャツを強く握りしめその感覚に耐える。
「もっと声を聞かせて下さい」
そう言ってブラのホックを外され手が前にくると胸を揉みだす彼。何度も抱かれているがやはり慣れない。甘く言葉を囁き優しく愛撫され何よりイケメンの彼には敵わない。今も彼からの刺激に耐えるしかなく目が合えばクスリと妖しい笑みを浮かべる彼に心臓はうるさく鳴りっぱなしだ。
「先程は邪魔が入りましたからね。仕切り直しです」
彼は仕切り直しと言って自分を軽々とお姫様抱っこすると寝室へと向かう。
「さて。どこから触りましょう」
ベッドに横にされ彼も覆いかぶさる。
電話がかかってくる前よりも彼の纏う雰囲気は甘さが増している気がしてならなかった。その甘さに戸惑いながらもそんな彼に酔いしれてしまう。彼と会えば会うほど、体を重ねれば重ねるほど、彼への想いが積もっていく。
ーーいつかポロっと言ってしまいそう…
既に言ってるしまってるとは知らずにそんな事を思う。しかし彼から口付けをされ意識を持っていかれてしまった。
「電話の相手が誰であろうと嫉妬しますよ」
彼に愛された後そんなことを言うので勘違いしそうになりながらもやっぱり嬉しくて綻ぶ顔を見られないように隠すのに必死になる。
顔を隠せば彼に「隠しても無駄ですよ」とすぐに顔を見られ「見ないで」「見ます」のやり取りが繰り返されると笑いが起きて二人で笑い合った。
この時間が幸せで堪らず彼にすり寄る。
ーーいつか気持ちが伝えられたら…
その時がきたら笑顔で気持ちを伝えよう、そう思って抱きしめてくれる彼の温もりに身を預けた。
ーーーーーー
ーー『あ、あの!その…お体には気を付けて下さいね?それではまた…』
電話を切った後あの娘に言われた言葉が頭の中で繰り返される。
ーーあんな風に言われたのはいつぶりかしら?
小さく笑ってグラスにワインを注ぐ。
それを手に取ってグラスを傾け中の液体をクルクルと回す。彼が気に入ってる彼女…とても興味深い。
「あの二人…面白いわ」
クスリと呟やくとワインを口に含んだ。
電話の相手
fin.
2019.3.12
2019.12.2
↓こちらに続きます。
初めてのデート……ホワイトデー/バレンタイン続編
彼女のあの告白を聞いてから前以上に大切に想うようになった。彼女が隣に座ろうとすれば手を引いて胡座をかいたそこに座らせ後ろから抱きしめ、あの二文字の言葉を言わなくても遠回しに甘い言葉を囁いたり…そうする度に顔を赤くする彼女が愛おしく今すぐ気持ちを伝え自分のものにしたい衝動に駆られる。
彼女はあの呟きを知らないようで自分の変わり様に戸惑っている様子だ。
「零さん?ここ最近どうしたんですか?」
いつも以上に甘いです…と後ろから抱きしめられながらそう話す彼女。顔を覗き込むと頬を微かに染めているものだから堪らず抱きしめ後ろ髪を掻き分けうなじにキスを落とす。
「んッ、零さん……」
逃げようとする彼女を腕の中に閉じ込めうなじに唇を這わせ時折舌で舐める。
「待っ…んッ、」
ピクンと小さく跳ねる体、漏れる甘い声に下半身が疼く。このまま彼女を食べてしまおうか、そう思った瞬間、自分のスマホから着信音が鳴り響く。
動きを止めその音に耳を傾けた。
心の中でため息をつくとゆっくり彼女から離れ立ち上がる。
「ハルさん。どうやら仕事からの電話のようです。少し待ってて下さい」
笑顔で声をかけスマホを取ると彼女に背を向け寝室へ入る。笑顔を消し履歴から先程の番号に折り返す。
『Hi?バァーボン?お邪魔だったかしら?』
電話越しに聞こえるその女の声は微かに笑っているようだった。
「何もお邪魔ではありませんよ」
こちらもにこやかに答え何もなかったかのように話す。
『あら。あのお嬢ちゃんとは上手くいってないのかしら?』
「ご冗談を。何を根拠にそのような事を…僕にはそんな現を抜かしてる暇なんかありませんよ。あなたこそ今度はいつ僕の相手をしてくれるんです?」
『随分と積極的ねぇ?あの娘じゃ物足りないのかしら?』
「勘違いされては困りますね…お酒の相手ですよ」
『連れないのね』
「何とでも。それより連絡があるという事は次の仕事ですか?」
『ええ』
仕事の内容を聞き瞬時に覚えると電話を切ろうとする。
『なんだか変わったわね』
「何がです?」
面白そうに話す女の声が聞こえ会話を続けた。
『あの娘はいい子だものね〜』
「彼女とはあれ以来顔を合わせておりませんが?」
『そう?なら何故あの後GPSも盗聴器もすぐに反応しなくなったのかしら?』
それを聞いて心臓が小さく跳ねる。
やはりすぐに取り出したのはまずかったか。
「彼女にそんなものを仕込んだんですか?怪しい人物には見えませんでしたが」
それでもシラを切り知らないふりをした。電話越しに突如笑い声が聞こえる。
『あえて仕込んだのよ。ワザと二つに分けて仕込んだのに二つとも反応しなくなるんだもの。あなたが処理したことくらいお見通しよ、バーボン?』
クスクスと笑い一体何を考えているのか読めない。
「もし彼女と知り合いならばどうするのです?」
気がつけばそんなことを聞いておりしまったと焦る。
『あら。いつもの切り返しとは違うわね』
彼女はそんなことにもいちいち反応を示すため気をつけていたのだがボロが出てしまった。
『ちなみにどうもしないわよ。黙っててあげるからお願いを聞いてくれるかしら?』
「なんでしょう。僕の出来るお願いならいくらでも叶えてあげますよ?」
『そんな台詞を聞きたいわけじゃないわ。女同士で話がしたいの。彼女に代わってくれる?』
近くにいるんでしょう?と軽快な口調で話す女の声を聞いてスマホをキツく握りしめた。
『何を言っても無駄よ。代わらないのなら彼女のことを彼に言うわ』
一瞬だけ歯を食い縛ると女に声をかけた。
「分かりました」
電話を切らないまま寝室から出ると彼女が笑ってこちらを見る。声をかけられる前に人差し指を口元に当てて声を出さないようにジェスチャーで示した。
「あなたとお話がしたいそうですよ」
「えっ?私と…?」
誰だろう、とスマホを受け取り「もしもし」と声をかけ始めた。その様子をじっと見つめていると彼女と目が合いニコリと安室透で笑う。
「あっ!あの時の!」
ようやく彼女は誰からか分かり顔を綻ばせて話始める。今すぐそのスマホを手から抜き取って切りたいぐらいだがグッと堪えてキッチンの方へ向かった。
「GPS?盗聴器?なんの事ですか?」
彼女の声でそんなことが聞こえ耳をすませる。
「あっ…えっと…その……はい…」
恥じらうような声がして一体何を話しているのか気になる。
「えっと…本当に彼とは何にもないですよ?今はたまたまこの間助けて頂いたお礼をしにお邪魔させて頂いてるんです」
「そうでしょうか……でもなぜあなたが心配を?」
彼女達の会話はなんとなく想像はつくが早く電話を切ってくれないかと少し焦る。
キッチンを出てリビングに入ると彼女の隣に座った。その隣からは笑い声が聞こえる。
「ふふっ。確かにそうですね」
クスクスと笑っている彼女の顔はとても柔らかで見ていて心が和む。電話の相手があの女でなければこのままイタズラをしても良かったのだが…
ーー風見の時にやってみるか
なんてことを思いつきクスリと笑う。
「はい、はい。またお話出来たらお願いします」
ふふっと笑って別れの挨拶をしているようだ。
「あ、あの!その…お体には気を付けて下さいね?それではまた…」
最後にそう話すと電話を切ってスマホを手渡された。
「まさかあの人とお話出来るなんて」
またふふっと笑っている彼女の肩を引き寄せ抱き締める。
「えっ?零さん…?」
彼女は何故このタイミングで抱き締められているのか不思議そうにしているが遠慮がちに腕が回され自分も抱き締められたのが分かった。
「あんなに楽しそうに話されていると妬けちゃいますよ」
「何を言ってるんですか。女の人ですよ?」
また小さく笑い声が聞こえ顔を綻ばせているのが見なくても分かる。
「でも…妬いてくれるのはちょっと嬉しいかも」
今度はそんな事を言って胸に擦り寄ってくるものだから体がザワリと震える。体を離して彼女に口付けをする。
「ハルさん…あなたって人は…」
小さく呟くと背中に回していた手を服に忍ばせて肌に触れ優しく撫で回すと彼女から声が漏れ始めた。
「んッ…ゃッ…」
自分が与える刺激に小さく跳ねる体。我慢するように押し殺しているくぐもった声。そして瞳を潤ませ頬を染め切なげな表情をしている顔。
その全てが愛おしい。
電話で先程の甘い時間が流れてしまったが仕切り直すことにした。
ーーーーー
「GPS?盗聴器?なんの事ですか?」
『あら?あなたの体に仕込んでいたのだけれど…』
「あっ!あれ!」
彼から自分と話したい、そうスマホを渡され耳にあてる。電話の相手があの時自分を攫った女の人で驚いた。そしてその時に仕込んだGPSなどについて聞かれたがスッカリ忘れてしまっていた。
『その様子だと彼がとってくれたのかしら?』
「あっ…えっと…その……はい…」
あの時のことを思い出して恥ずかしくなる。
『今彼と一緒にいるけど恋仲になったようね』
「えっと…本当に彼とは何にもないですよ?今はたまたまこの間助けて頂いたお礼をしにお邪魔させて頂いてるんです」
『あらそうなの…残念ね』
電話越しに聞こえる声は本当に残念そうに聞こえ不思議に思う。
『彼はあなたを側に置いておきたいはずよ?応援してるわ。心配だからたまに連絡しようかしら』
「そうでしょうか……でもなぜあなたが心配を?」
『何故、ねぇ〜。私にも分からないわ』
クスリと小さく笑ったのが聞こえた。
『まぁ彼はあなたの事は私に知られたくないようだけど。今も睨みをきかせてるんでしょう?』
彼女にそう聞かれチラリと隣に座った彼を見る。
彼はじっとこちらを見ているがその瞳は真剣だ。しかしそれは一瞬しか見ることが出来ずすぐににこやかな笑顔になった。
「ふふっ。確かにそうですね」
電話越しでも彼女は分かるようでそう伝えると笑い声がして「そろそろ切るわ」と電話の終焉を告げる。またお話が出来ればいいな、そう伝えると「ありがとう」と少しだけ寂しげな声で返事があった。堪らずまた声をかけ「体に気をつけてと」と伝える。
ーー自分を攫った相手なのに『気を付けて』なんて…
何故かは分からないが彼女を嫌いにはなれなかった。彼の事を知る共通の相手だからなのか分からないけれど、嫌ではなかったのだ。彼は仲良くなるのは快く思っていないようだけど。
「あんなに楽しそうに話されていると妬けちゃいますよ」
今だって電話を切った後、抱きしめられて妬けるなんて言われてしまう。相手は女の人なのに。それが本当なのか冗談で言ってるのかは分からないけど冗談でも嬉しい。
「でも…妬いてくれるのはちょっと嬉しいかも」
そう言って彼の胸に擦り寄った。
彼の温もりはとても居心地がいい。その温もりを感じていたかったが体が離され口付けをされる。
「ハルさん…あなたって人は…」
その言葉が耳に届くのと同時に背中にある彼の手がいやらしく動く。服の下から手が忍び込み優しく撫でるように何度も手が往復する。それだけでもゾワゾワと甘く痺れる感覚が体中を駆け抜ける。
「んッ…ゃッ……」
背中に回した手で彼のシャツを強く握りしめその感覚に耐える。
「もっと声を聞かせて下さい」
そう言ってブラのホックを外され手が前にくると胸を揉みだす彼。何度も抱かれているがやはり慣れない。甘く言葉を囁き優しく愛撫され何よりイケメンの彼には敵わない。今も彼からの刺激に耐えるしかなく目が合えばクスリと妖しい笑みを浮かべる彼に心臓はうるさく鳴りっぱなしだ。
「先程は邪魔が入りましたからね。仕切り直しです」
彼は仕切り直しと言って自分を軽々とお姫様抱っこすると寝室へと向かう。
「さて。どこから触りましょう」
ベッドに横にされ彼も覆いかぶさる。
電話がかかってくる前よりも彼の纏う雰囲気は甘さが増している気がしてならなかった。その甘さに戸惑いながらもそんな彼に酔いしれてしまう。彼と会えば会うほど、体を重ねれば重ねるほど、彼への想いが積もっていく。
ーーいつかポロっと言ってしまいそう…
既に言ってるしまってるとは知らずにそんな事を思う。しかし彼から口付けをされ意識を持っていかれてしまった。
「電話の相手が誰であろうと嫉妬しますよ」
彼に愛された後そんなことを言うので勘違いしそうになりながらもやっぱり嬉しくて綻ぶ顔を見られないように隠すのに必死になる。
顔を隠せば彼に「隠しても無駄ですよ」とすぐに顔を見られ「見ないで」「見ます」のやり取りが繰り返されると笑いが起きて二人で笑い合った。
この時間が幸せで堪らず彼にすり寄る。
ーーいつか気持ちが伝えられたら…
その時がきたら笑顔で気持ちを伝えよう、そう思って抱きしめてくれる彼の温もりに身を預けた。
ーーーーーー
ーー『あ、あの!その…お体には気を付けて下さいね?それではまた…』
電話を切った後あの娘に言われた言葉が頭の中で繰り返される。
ーーあんな風に言われたのはいつぶりかしら?
小さく笑ってグラスにワインを注ぐ。
それを手に取ってグラスを傾け中の液体をクルクルと回す。彼が気に入ってる彼女…とても興味深い。
「あの二人…面白いわ」
クスリと呟やくとワインを口に含んだ。
電話の相手
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