君に、明日
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
2.
数時間後……
「待ってよ、みんな!僕達はまだ話し合ってないじゃないかぁぁあっ!!」
どうして自分は今、巨人に足を掴まれているのか。どうして体が浮いているのか。目の前には同期がいるのに三人はただこっちを見ているだけ…手を伸ばしてもこの手を掴んではくれない。体の右側がギチギチと痛い……痛くて悲しくてどうしようも出来なくて自分は死ぬんだ、そう頭で考えた時に過るのは彼女の顔。
ほんの数時間前まで笑って抱きしめ合って温もりを感じて……これからだったというのに。どうしてこんな事になったのか…自分が二人の会話を聞いたばかりにこんな事に……こんな事なら一層の事キスをしておけば良かった、後悔が体を埋め尽くす頃、感じたのは体が噛み砕かれる嫌な音。そして同じくして共に訪れたのは出ることの出来ない深い闇だった。
ーーー
あれから、数え切れないほどの時が流れる。
車や人の往来に紛れて歩いているが、寝不足で気だるさを感じながら通学している大学の敷地内へと入ってラウンジへと向かった。ここ最近は変な夢を見ており気が滅入っていた。繰り返し同じシーンを見るのだ。大きな体をした人間に自分が食べられ闇が訪れる。いつもそこで目が覚めて飛び起き、体が冷や汗をビッチリとかくもんだからシャワーを浴びてその後は眠れずにいた。
「なんだろうあの夢は…」
小さくため息をついてスマホにタイマーをセットし少しの時間だけ眠る。どれくらい寝たのか頭を持ち上げるとガヤガヤと周りが騒がしい。まだ重たい瞼を上げると視界に入ったのは見知らぬ女性らしき人物が同じテーブルに座っていた。誰なんだこの人は。
「申し訳ないです。他に席が空いてなかったもので…」
「いえ、構いませんよ」
顔を上げればすぐに目が合い話しかけられた。そして彼女をマジマジと見てしまう。ショートカットをしていて見た目男性っぽいが声がやはり女性だ。それになんだか何処かで見覚えが……
「私の顔に何かついてますか?」
「い、いえ!なんだか懐かしいなぁ~と思いまして…」
何言ってんだ自分と思ったが本当の事だからしょうがない。彼女は自分の言葉に目を見開くと小さく笑った。
「実は…私もそう思ってました」
「えっ、」
「不思議ですよね。初めてお会いするのに」
そう言ってふわりと笑う彼女に鼓動がトクリとある一定の速さをもって脈を打ち出した。彼女とは時間の許せる限り様々な話をして久々の楽しいひと時を過ごす。話せば話すほど懐かしい感覚が強くなりまたそれと同じくして別の感情が沸き起こるのが分かった。
その日の夜、また同じ夢を見たが今度はおかしい……食べられ後の情景が流れる。自分は死んだのか建物の壁にもたれかけるようにしていた。そこへ一人の少年が口元を布で覆って近付いて来た。そしてその後ろからもう一人……今日会ったばかりのはずの彼女も姿を現して驚く。彼女は目にいっぱいの涙を溜めてゆっくり自分に近づくとペタリと側に座り込んだ。そして何かを喋り彼女は自分の手を取ると頬に当てる。
—— マルコ……
そう呼ばれたような気がして彼女に近寄る。泣かないで、僕ならここにいるよ……手を伸ばしたところで目を覚ます。瞼を開ければ寝ながら空 に手を伸ばしていた。上体を起こしたがポタリと布団を濡らす涙。なんだったんだろうか、あの夢は……放心状態になりながらも自分の手を見つめた。
大学に着いてラウンジに向かえばそこには昨日の彼女が居る。声をかけると彼女は目を見開いて立ち上がりいきなり抱きついてきた。
「マルコ……っ!やっぱりあなたはマルコだったのね!何やってるの!恋人になった数時間後に死ぬなんて……っ!」
恋人?死ぬ?一体彼女が何のことを言ってるのか訳が分からず途方にくれる。
「ま、待って。確かに僕はマルコだけど、君の恋人じゃないし死んでもいないよ?誰かと勘違いをしているんじゃ…」
そう言えば傷付いたような表情を見せる彼女。涙が一つ頬を伝いそれを無意識に指で拭った。
「夢で……」
「夢?」
「うん……夢で君を、見た。夢の中の君も泣いて僕の手を握ってくれた……僕は、何かに食べられたような…」
そこまで話して夢のあの感覚が蘇り冷や汗がどっと溢れる。あの悍ましいものは一体何なのか。崩れるようにして近くの椅子に座ると目の前にハンカチを差し出される。見れば彼女が困惑した表情だが小さく笑うと「使って」と手に持たせてくれた。お礼を言って汗を拭き取る。自分に何が起きているのか状況がまだ飲み込めないが……あの夢はもう一人の自分で、彼女は何かを知っている、そう感じた。
ーーー
「マルコ最近調子悪そうだな。どうしたんだよ」
「ああ…最近変な夢を見て…」
「夢?」
そうだよ、そう言って話す相手は大学に入ってから友人になったジャン。今朝方、彼女とまた話そうと約束を交わして受講する講義室にやってきたのだがジャンと顔を合わせるといきなりそんなことを言ってきた。
「夢なんざどうってことねぇだろ」
気にしすぎだ、なんて言われたが気にしないわけにもいかない。
「それなんだけど…不思議な事に昨日会ったばかりの子が夢に出てきて、今朝も会ったけどいきなり抱き着かれちゃってさ…」
「はぁあ?!マルコ、てめぇ!!」
「ジャン、お、落ち着いて!」
ジャンの機嫌が一気に悪くなるが本当のことだから仕方がない。事情を説明すると理解してくれたのか幾分か落ち着くが……
「マルコに恋人かよ…」
「だからよく分からないんだ。今日の夕方、講義が終わってからまた話そうって約束をしたんだけど…」
「俺も行く」
「ジャンが?」
「悪りぃかよ。マルコの事が心配なんだ。友として当然だろ?(マルコに恋人…どんな頭のおかしな野郎か確かめてやる)」
ジャンの考えていそうな事が理解できて小さくため息をついたが彼もいたら自分も安心だ。
夕方になっていつものラウンジで落ち合う。彼女はまだ来ていないようでジャンと今日の講義について話していると「ちょっと」、そう話しかけられた。
数時間後……
「待ってよ、みんな!僕達はまだ話し合ってないじゃないかぁぁあっ!!」
どうして自分は今、巨人に足を掴まれているのか。どうして体が浮いているのか。目の前には同期がいるのに三人はただこっちを見ているだけ…手を伸ばしてもこの手を掴んではくれない。体の右側がギチギチと痛い……痛くて悲しくてどうしようも出来なくて自分は死ぬんだ、そう頭で考えた時に過るのは彼女の顔。
ほんの数時間前まで笑って抱きしめ合って温もりを感じて……これからだったというのに。どうしてこんな事になったのか…自分が二人の会話を聞いたばかりにこんな事に……こんな事なら一層の事キスをしておけば良かった、後悔が体を埋め尽くす頃、感じたのは体が噛み砕かれる嫌な音。そして同じくして共に訪れたのは出ることの出来ない深い闇だった。
ーーー
あれから、数え切れないほどの時が流れる。
車や人の往来に紛れて歩いているが、寝不足で気だるさを感じながら通学している大学の敷地内へと入ってラウンジへと向かった。ここ最近は変な夢を見ており気が滅入っていた。繰り返し同じシーンを見るのだ。大きな体をした人間に自分が食べられ闇が訪れる。いつもそこで目が覚めて飛び起き、体が冷や汗をビッチリとかくもんだからシャワーを浴びてその後は眠れずにいた。
「なんだろうあの夢は…」
小さくため息をついてスマホにタイマーをセットし少しの時間だけ眠る。どれくらい寝たのか頭を持ち上げるとガヤガヤと周りが騒がしい。まだ重たい瞼を上げると視界に入ったのは見知らぬ女性らしき人物が同じテーブルに座っていた。誰なんだこの人は。
「申し訳ないです。他に席が空いてなかったもので…」
「いえ、構いませんよ」
顔を上げればすぐに目が合い話しかけられた。そして彼女をマジマジと見てしまう。ショートカットをしていて見た目男性っぽいが声がやはり女性だ。それになんだか何処かで見覚えが……
「私の顔に何かついてますか?」
「い、いえ!なんだか懐かしいなぁ~と思いまして…」
何言ってんだ自分と思ったが本当の事だからしょうがない。彼女は自分の言葉に目を見開くと小さく笑った。
「実は…私もそう思ってました」
「えっ、」
「不思議ですよね。初めてお会いするのに」
そう言ってふわりと笑う彼女に鼓動がトクリとある一定の速さをもって脈を打ち出した。彼女とは時間の許せる限り様々な話をして久々の楽しいひと時を過ごす。話せば話すほど懐かしい感覚が強くなりまたそれと同じくして別の感情が沸き起こるのが分かった。
その日の夜、また同じ夢を見たが今度はおかしい……食べられ後の情景が流れる。自分は死んだのか建物の壁にもたれかけるようにしていた。そこへ一人の少年が口元を布で覆って近付いて来た。そしてその後ろからもう一人……今日会ったばかりのはずの彼女も姿を現して驚く。彼女は目にいっぱいの涙を溜めてゆっくり自分に近づくとペタリと側に座り込んだ。そして何かを喋り彼女は自分の手を取ると頬に当てる。
—— マルコ……
そう呼ばれたような気がして彼女に近寄る。泣かないで、僕ならここにいるよ……手を伸ばしたところで目を覚ます。瞼を開ければ寝ながら
大学に着いてラウンジに向かえばそこには昨日の彼女が居る。声をかけると彼女は目を見開いて立ち上がりいきなり抱きついてきた。
「マルコ……っ!やっぱりあなたはマルコだったのね!何やってるの!恋人になった数時間後に死ぬなんて……っ!」
恋人?死ぬ?一体彼女が何のことを言ってるのか訳が分からず途方にくれる。
「ま、待って。確かに僕はマルコだけど、君の恋人じゃないし死んでもいないよ?誰かと勘違いをしているんじゃ…」
そう言えば傷付いたような表情を見せる彼女。涙が一つ頬を伝いそれを無意識に指で拭った。
「夢で……」
「夢?」
「うん……夢で君を、見た。夢の中の君も泣いて僕の手を握ってくれた……僕は、何かに食べられたような…」
そこまで話して夢のあの感覚が蘇り冷や汗がどっと溢れる。あの悍ましいものは一体何なのか。崩れるようにして近くの椅子に座ると目の前にハンカチを差し出される。見れば彼女が困惑した表情だが小さく笑うと「使って」と手に持たせてくれた。お礼を言って汗を拭き取る。自分に何が起きているのか状況がまだ飲み込めないが……あの夢はもう一人の自分で、彼女は何かを知っている、そう感じた。
ーーー
「マルコ最近調子悪そうだな。どうしたんだよ」
「ああ…最近変な夢を見て…」
「夢?」
そうだよ、そう言って話す相手は大学に入ってから友人になったジャン。今朝方、彼女とまた話そうと約束を交わして受講する講義室にやってきたのだがジャンと顔を合わせるといきなりそんなことを言ってきた。
「夢なんざどうってことねぇだろ」
気にしすぎだ、なんて言われたが気にしないわけにもいかない。
「それなんだけど…不思議な事に昨日会ったばかりの子が夢に出てきて、今朝も会ったけどいきなり抱き着かれちゃってさ…」
「はぁあ?!マルコ、てめぇ!!」
「ジャン、お、落ち着いて!」
ジャンの機嫌が一気に悪くなるが本当のことだから仕方がない。事情を説明すると理解してくれたのか幾分か落ち着くが……
「マルコに恋人かよ…」
「だからよく分からないんだ。今日の夕方、講義が終わってからまた話そうって約束をしたんだけど…」
「俺も行く」
「ジャンが?」
「悪りぃかよ。マルコの事が心配なんだ。友として当然だろ?(マルコに恋人…どんな頭のおかしな野郎か確かめてやる)」
ジャンの考えていそうな事が理解できて小さくため息をついたが彼もいたら自分も安心だ。
夕方になっていつものラウンジで落ち合う。彼女はまだ来ていないようでジャンと今日の講義について話していると「ちょっと」、そう話しかけられた。