Erwin/調査兵
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1.
外は日射しがあると少しだけ汗ばむ季節。しかし建物の中に入ると日射しを遮り冷んやりとする。
「報告は以上です。団長」
「ご苦労」
自分は今、先日の壁外調査の記録を報告したところだ。団長は「ふむ」と顎に手を添えると静かに顔を上げ視線が交わる。
「君の班は一番被害が少なかったようだ」
「後方にいましたから」
「今回だけではないだろう?」
「それは、そうですね」
「君は優秀のようだな」
「団長にそう言って頂けて光栄です」
敬礼すると自分に近づいて来た団長。幾分も高い彼が間近に来れば自ずと見上げなければならない。青い瞳に見下ろされてなんだか居心地が悪くなる。
「あの、」
「優秀な君に一つ頼みがある」
「なんでしょうか?」
団長の頼みなんて嫌な予感しかしない。
「今晩、私と共に過ごしてくれないか?」
「なっ?!」
思いもよらない頼み事で焦る。かなり焦る。そういう意味だと捉えるべきなのか訳が分からず困惑の表情に変えて彼を見上げた。すると「あぁ。すまない」と表情を変えずに口を開いた団長。
「今晩、内地に赴くことになったのでその付き添いにという事だ」
「そ、そうですか…了解です」
何がすまないだ。全く紛らわしい言い方をする人だと、安堵すると共にフツフツと怒りが込み上げてくる。
「では、そのような手筈で頼む」
「分かりました」
その後はいつも通りに打ち合わせをして自分の執務室へと戻り椅子に腰掛けため息を一つ吐く。
── 仕事しよう
まだまだやることは山ほどある。書類に目を通したのち、体を動かすために訓練へ向かった。
ーーー
日が沈む前に兵舎に戻り立体機動装置を片付け管理棟にある自室に戻る。
カチャ
奥の方からドアの開く音がして団長が出てきた。まだ兵服だ。
「訓練からの戻りか?」
「はい、これから準備します」
「そうか。私もだ」
「そうですか」
「楽しみにしている」
小さく笑うとまた部屋に入って行った。楽しみにしている?内地に行って貴族に媚びに行くのが?団長の考えていることがさっぱり分からず苦笑して自分も部屋に入った。
「お待たせしました」
「ふむ。悪くないな」
「お世辞はいいですよ」
「お世辞ではない」
「ありがとうございます」
「ははっ。何をそんなに難しい顔をしている」
「何故でしょうかね」
「ふっ、馬車を用意している。行こうか」
貴族との話し合いを交えた会食らしいが…小綺麗な格好でと言われ幸い持ち合わせていたワンピースを身につける。その上からストールを羽織った。袖はあるが胸元が出ていて落ち着かない。それにヒールだって慣れない。兵服の方が数段マシだ。ちなみに髪は結い上げるのが難しいため横に流して花がモチーフの髪留めで留めた。
団長は黒のタキシード姿でオールバック。見慣れない姿に馬車の中でマジマジと見ていると「惚れたのか?」なんて言うので首を振ると「それは残念だ」と小さく笑う彼。全く、そんな冗談はやめてほしい。
でも馬車に乗り込む時からずっと思っていたことがある。彼は紳士だ。馬車の乗り降りには手を差し出してエスコートしさり気なく歩調も合わせてくれる。貴族の館へ入れば自分がしんどくならないよう時折気遣いも見せてくれる。慣れないヒールを履いていることを知ってるかのように椅子に座らせて休憩させてくれたり…
── 調子狂うな…
これじゃあ惚れちゃうじゃない、なんて思いながらぼんやりと団長の姿を見ていた。今は団長一人で貴族と会話をしている。壁外調査や資金繰りの事でも話をしているのか。どんな話をしているのか分からないが和やかそうだ。すると会話をしていた二人がこちらを見るのでドキリとする。団長が自分を見ながら何か話をしているようだった。そしてその貴族は話を聞いて残念そうな顔をしている。
── な、何を話して…
明らかに自分の話題であることには変わりないが何を話しているのかと気が気でなかった。居心地が悪い、そう思って立ち上がると外の空気を吸いにバルコニーに出た。夜になると少し肌寒いが中にいるよりはよかった。空を眺めていると背後から「お嬢さん」と声をかけられた。
外は日射しがあると少しだけ汗ばむ季節。しかし建物の中に入ると日射しを遮り冷んやりとする。
「報告は以上です。団長」
「ご苦労」
自分は今、先日の壁外調査の記録を報告したところだ。団長は「ふむ」と顎に手を添えると静かに顔を上げ視線が交わる。
「君の班は一番被害が少なかったようだ」
「後方にいましたから」
「今回だけではないだろう?」
「それは、そうですね」
「君は優秀のようだな」
「団長にそう言って頂けて光栄です」
敬礼すると自分に近づいて来た団長。幾分も高い彼が間近に来れば自ずと見上げなければならない。青い瞳に見下ろされてなんだか居心地が悪くなる。
「あの、」
「優秀な君に一つ頼みがある」
「なんでしょうか?」
団長の頼みなんて嫌な予感しかしない。
「今晩、私と共に過ごしてくれないか?」
「なっ?!」
思いもよらない頼み事で焦る。かなり焦る。そういう意味だと捉えるべきなのか訳が分からず困惑の表情に変えて彼を見上げた。すると「あぁ。すまない」と表情を変えずに口を開いた団長。
「今晩、内地に赴くことになったのでその付き添いにという事だ」
「そ、そうですか…了解です」
何がすまないだ。全く紛らわしい言い方をする人だと、安堵すると共にフツフツと怒りが込み上げてくる。
「では、そのような手筈で頼む」
「分かりました」
その後はいつも通りに打ち合わせをして自分の執務室へと戻り椅子に腰掛けため息を一つ吐く。
── 仕事しよう
まだまだやることは山ほどある。書類に目を通したのち、体を動かすために訓練へ向かった。
ーーー
日が沈む前に兵舎に戻り立体機動装置を片付け管理棟にある自室に戻る。
カチャ
奥の方からドアの開く音がして団長が出てきた。まだ兵服だ。
「訓練からの戻りか?」
「はい、これから準備します」
「そうか。私もだ」
「そうですか」
「楽しみにしている」
小さく笑うとまた部屋に入って行った。楽しみにしている?内地に行って貴族に媚びに行くのが?団長の考えていることがさっぱり分からず苦笑して自分も部屋に入った。
「お待たせしました」
「ふむ。悪くないな」
「お世辞はいいですよ」
「お世辞ではない」
「ありがとうございます」
「ははっ。何をそんなに難しい顔をしている」
「何故でしょうかね」
「ふっ、馬車を用意している。行こうか」
貴族との話し合いを交えた会食らしいが…小綺麗な格好でと言われ幸い持ち合わせていたワンピースを身につける。その上からストールを羽織った。袖はあるが胸元が出ていて落ち着かない。それにヒールだって慣れない。兵服の方が数段マシだ。ちなみに髪は結い上げるのが難しいため横に流して花がモチーフの髪留めで留めた。
団長は黒のタキシード姿でオールバック。見慣れない姿に馬車の中でマジマジと見ていると「惚れたのか?」なんて言うので首を振ると「それは残念だ」と小さく笑う彼。全く、そんな冗談はやめてほしい。
でも馬車に乗り込む時からずっと思っていたことがある。彼は紳士だ。馬車の乗り降りには手を差し出してエスコートしさり気なく歩調も合わせてくれる。貴族の館へ入れば自分がしんどくならないよう時折気遣いも見せてくれる。慣れないヒールを履いていることを知ってるかのように椅子に座らせて休憩させてくれたり…
── 調子狂うな…
これじゃあ惚れちゃうじゃない、なんて思いながらぼんやりと団長の姿を見ていた。今は団長一人で貴族と会話をしている。壁外調査や資金繰りの事でも話をしているのか。どんな話をしているのか分からないが和やかそうだ。すると会話をしていた二人がこちらを見るのでドキリとする。団長が自分を見ながら何か話をしているようだった。そしてその貴族は話を聞いて残念そうな顔をしている。
── な、何を話して…
明らかに自分の話題であることには変わりないが何を話しているのかと気が気でなかった。居心地が悪い、そう思って立ち上がると外の空気を吸いにバルコニーに出た。夜になると少し肌寒いが中にいるよりはよかった。空を眺めていると背後から「お嬢さん」と声をかけられた。
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