進撃の小言
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君には何が見える?②
あの衝撃的なモノを見てしまって心中ざわついて落ち着かない。
自分は何故見てしまったのか。
なんであんなものを見てしまったのか。
これでは団長にあわせる顔がない。
あの後だって逃げるようにして部屋を出てしまったのだから。
「ハル」
中庭のベンチで悶々とした頭を抱えていると不意に名前を呼ばれた。低音でだけどはっきりと聞こえるこの声は彼のものだ。
「だ、団長…」
驚いて間が空いたが急いで立ち上がると敬礼をする。
「普通にしてくれ」
「…はい」
自分は何かやらかしたのか、それとも先日のことを咎めに来たのか心中落ち着かない。ドキドキしながら彼を見つめているとふっと彼が笑った。
ーーえ?あの団長が笑った?
「君に用があってきた」
「私にですか?」
「そうだ」
ついて来てくれ、と団長に促される。断る理由なんてないので大人しくついて行く。来たのは団長執務室で体に緊張が走る。団長の後について入るが入り口で立ち止まる。
一体自分は何をしでかしたのかと怖くて仕方がないのだ。
「こっちに来てくれないか?」
「はい…」
あの目撃した現場にゆっくりと近づく。
以前見た場所にはなるべく視線を向けず団長の前に立つ。
「ここに立ってくれ」
ここ、というのは目撃した場所だった。なんで?と疑問が消えないままそこに立つ。でも見ないように視線を逸らしていると前を見るように言われ見てしまう。が、一瞬何か見えたと思ったがすぐに何も見えなくなる。何が起きたのか訳がわからない。だって目の前は真っ暗なのだから。彼の大きな手によって塞がれてしまった視界。手の温もりが目の周りの皮膚から伝わってくる。
「君には何がみえる?」
えっと…何が見える?の前に何も見ない。ていうか、『見えた』のまちがいでは?それより団長、見えません。声を出そうとするが喉がつかえて何も出ない。
「それはなんだと思う?」
いや、だから何も見えませんってば!、心の中で突っ込む。
「えっと…団長…?」
やっとの思いで団長を呼んでみる。
「すまない。変なことを聞いたな」
そう言って視界が明るくなった。
その明かりに安堵して視線を落とした。
そこにあったのは……
ーーうん。見なかった事にしよう
そしてまた逃げるように執務室を出るのだった。
ーーーー
「おい、エルヴィン。てめぇにはそんな趣味があったのか?」
「なんのことだ」
「何って、それをわざと置いて兵士達の反応を楽しんでるじゃねぇか」
悪趣味だな、そう話す彼に小さく笑う。
「噂を聞いたからな。みながどんな反応をするのか確認したかったまでだ」
「…変人だな」
「なんとでも言えばいい」
そして彼が自分のヅラ擬きを手に持っているところにまた人がやってきた。
「ちょっとちょっとエルヴィン!噂がかなり広まって…って、ごめん!」
バタンッ!、と荒々しく扉を閉めていったハンジ。
「あいつに見られたら厄介じゃねえのか?」
「そうだな。それだけは気を付けていたんだが…」
ーーーー
こうしてエルヴィンのヅラ説の噂が調査兵団のみならず他の兵団にまで広まり誤解を解くのに時間がかかったと聞いた。
ーーにしても、タチが悪い
団長のおふざけにまんまと騙された一人であって悩んでいたあの日々は何だったのかと思ってしまう。けれど、あの一件があって真実が明るみになりみんなの中にあった雲が晴れたことで動きにキレが出ていると兵長が褒めていたそうな。
ーー兵団にとってはよかった、のかな
遠くに見える団長の後ろ姿を目で追って微笑を浮かべた。
その時風が吹いて団長の髪が揺れた。
揺れた…そしてふわりと、浮いた…
『君には何が見える?』
『それはなんだと思う?』
「…キース、シャーディス…」
団長の頭は上記の人物を思い起こさせた。
そして慌てる様子もなくそれを押さえる団長。
紛れも無くそれだった。
君には何が見える?②
fin.
2019.4.1
あの衝撃的なモノを見てしまって心中ざわついて落ち着かない。
自分は何故見てしまったのか。
なんであんなものを見てしまったのか。
これでは団長にあわせる顔がない。
あの後だって逃げるようにして部屋を出てしまったのだから。
「ハル」
中庭のベンチで悶々とした頭を抱えていると不意に名前を呼ばれた。低音でだけどはっきりと聞こえるこの声は彼のものだ。
「だ、団長…」
驚いて間が空いたが急いで立ち上がると敬礼をする。
「普通にしてくれ」
「…はい」
自分は何かやらかしたのか、それとも先日のことを咎めに来たのか心中落ち着かない。ドキドキしながら彼を見つめているとふっと彼が笑った。
ーーえ?あの団長が笑った?
「君に用があってきた」
「私にですか?」
「そうだ」
ついて来てくれ、と団長に促される。断る理由なんてないので大人しくついて行く。来たのは団長執務室で体に緊張が走る。団長の後について入るが入り口で立ち止まる。
一体自分は何をしでかしたのかと怖くて仕方がないのだ。
「こっちに来てくれないか?」
「はい…」
あの目撃した現場にゆっくりと近づく。
以前見た場所にはなるべく視線を向けず団長の前に立つ。
「ここに立ってくれ」
ここ、というのは目撃した場所だった。なんで?と疑問が消えないままそこに立つ。でも見ないように視線を逸らしていると前を見るように言われ見てしまう。が、一瞬何か見えたと思ったがすぐに何も見えなくなる。何が起きたのか訳がわからない。だって目の前は真っ暗なのだから。彼の大きな手によって塞がれてしまった視界。手の温もりが目の周りの皮膚から伝わってくる。
「君には何がみえる?」
えっと…何が見える?の前に何も見ない。ていうか、『見えた』のまちがいでは?それより団長、見えません。声を出そうとするが喉がつかえて何も出ない。
「それはなんだと思う?」
いや、だから何も見えませんってば!、心の中で突っ込む。
「えっと…団長…?」
やっとの思いで団長を呼んでみる。
「すまない。変なことを聞いたな」
そう言って視界が明るくなった。
その明かりに安堵して視線を落とした。
そこにあったのは……
ーーうん。見なかった事にしよう
そしてまた逃げるように執務室を出るのだった。
ーーーー
「おい、エルヴィン。てめぇにはそんな趣味があったのか?」
「なんのことだ」
「何って、それをわざと置いて兵士達の反応を楽しんでるじゃねぇか」
悪趣味だな、そう話す彼に小さく笑う。
「噂を聞いたからな。みながどんな反応をするのか確認したかったまでだ」
「…変人だな」
「なんとでも言えばいい」
そして彼が自分のヅラ擬きを手に持っているところにまた人がやってきた。
「ちょっとちょっとエルヴィン!噂がかなり広まって…って、ごめん!」
バタンッ!、と荒々しく扉を閉めていったハンジ。
「あいつに見られたら厄介じゃねえのか?」
「そうだな。それだけは気を付けていたんだが…」
ーーーー
こうしてエルヴィンのヅラ説の噂が調査兵団のみならず他の兵団にまで広まり誤解を解くのに時間がかかったと聞いた。
ーーにしても、タチが悪い
団長のおふざけにまんまと騙された一人であって悩んでいたあの日々は何だったのかと思ってしまう。けれど、あの一件があって真実が明るみになりみんなの中にあった雲が晴れたことで動きにキレが出ていると兵長が褒めていたそうな。
ーー兵団にとってはよかった、のかな
遠くに見える団長の後ろ姿を目で追って微笑を浮かべた。
その時風が吹いて団長の髪が揺れた。
揺れた…そしてふわりと、浮いた…
『君には何が見える?』
『それはなんだと思う?』
「…キース、シャーディス…」
団長の頭は上記の人物を思い起こさせた。
そして慌てる様子もなくそれを押さえる団長。
紛れも無くそれだった。
君には何が見える?②
fin.
2019.4.1
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