あんたの温もりがいい
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7.
さて、どうしたものか。
子ども姿の兵長を抱き抱えたまま途方にくれる。管理棟に行くわけには行かず宿舎に方向転換をしたその時、声をかけられた。
「待て」
振り返るとそこにはミケさんが立っていた。何故だろう。なんだかマズイ気がする。
「ミケさん…なんでしょうか?」
至って普通に彼を尋ねたが兵長を抱える腕が緊張で震える。兵長のこの姿だけは見られないようにしなければ。
「あんたからリヴァイの匂いがする」
「ーーっ!気のせいでは?」
「昨日の訓練後から見かけていないからな…何か知ってるんじゃないか?」
「さぁ…私は何も存じ上げませんよ?すみません、急いでいるので私はこれで…」
早くここから立ち去らねばと踵を返したが大きな手に肩を掴まれ動けなくなった。
「いや…何かおかしい」
「な、何がですか?」
「リヴァイの匂いが強い」
そう言って顔を近づけると首に顔を近づけてスンスンと匂いをかぎ出した。髭が当たりそうで当たってなくてくすぐったい。時折ピクンと体を震わせているとマントが盛り上がってミケさんの顔に当たった。
「なっ」
「へっ?!」
ミケさんは急なことに大変驚いており自分もさっきまで寝ていたはずの兵長が起きてマントから姿を出したので慌ててしまった。だからミケさんが驚くのも無理はない。視線の先にいるのは小さくなった兵長なんだから。
兵長は何も言わずじっとミケさんを見つめていた。
「こいつは、」
「あ、あの…」
「こいちゅにしゃわりゅな(コイツに触るな)」
「ーーっ!」
何も喋らなかった兵長がそんな事を言うので頬に熱が集まる。
「なるほどな。ハンジの仕業か」
ミケさんはこれだけで理解したようで流石だな、と感心した。結局、この小さな男の子がリヴァイ兵長だと言う事がバレてしまい再びマントで隠すと団長執務室へミケさんと向かった。
「エルヴィン、俺だ」
「ミケか。入ってくれ」
ミケさんが中に入ると自分も中に入る。団長に敬礼しようとしたが兵長を抱えているのでうまく出来ずお辞儀をした。団長は幾ばくか疲労の見える顔をしておりその瞳は不思議そうに自分を見ている。
「リヴァイが見つかったぞ」
「本当かっ!」
ミケさんが見つかったと言った瞬間、目を見開いて椅子に座っていた団長がガタリと立ち上がり興奮している。こんな団長初めて見た。ミケさんは詳しい経緯を知らないため団長が説明している。その間にチラリとマントを覗くと見上げていた兵長とパチリと目が合う。マントを引っ張るので団長の話が終わったのを見計らってマントを取る。
「リヴァイ…」
団長は少し憐れむような視線を向けている。兵長は何も言わず自分の服を掴んで腕に抱かれたままだ。
「ミケ。ハンジを呼んでこい。解毒剤も用意しろとな」
「了解だ」
自分の聞き間違いではなければ団長の口から今解毒剤、という言葉が発せられた?服を引っ張られるので視線を下ろすと兵長が顎で団長を指し『聞け』と言ってるようだった。
「あ、あの。団長、」
「なんだ?」
「解毒剤があるんですか?」
「そのようだ。既に準備はしてあったらしい」
「そうなんですか!兵長、良かったですね」
まだ機嫌は悪そうだが声をかけると頷く兵長。なんだろう。黙ってても小さな手で服を掴んでる姿は可愛らしい。この姿の兵長ともお別れかと思うと少しだけ寂しい気がした。
「君は何故リヴァイと一緒にいる?」
団長が探るような目をしながら尋ねてくる。
「昨日の夕方、本部の中でぶつかったんです。迷子だと思い家に連れて帰ったんです…」
「平気だったのか?」
団長が眉を潜めながら兵長に視線を向けた。兵長は黙ったままコクンと頷いた。団長もそれを見て安心したように表情を少しだけ緩める。
「それよりリヴァイは話せないのか?」
「そんなことないですよ?」
「なら何故話さない」
「それは、このぐらいの年齢の子はまだ上手く話せないので…」
「なるほど」
ふむ、と顎に手を添えて何かを考え始めた団長。
「聞いてみたいものだが…」
チラリと兵長を見るとそっぽを向いている。それが小さかった頃の弟の姿と重なり思わず笑みが零れた。兵長がそれに気付くと睨まれるが今はそこまで怖くない。笑いを堪えたが我慢できずに顔を逸らしてふふふ、と笑ってしまった。
「ちぇめぇ…あとじぇおぼえちぇどよ?
(テメェ…後で覚えてろよ?)」
すると今度は前からふっ、と空気が抜けるような音がして視線を向けると団長が片手で顔を覆って肩をふるふると震わせていた。団長が笑ってる。驚いていると兵長に服を引っ張られ目が合うと指で下に降ろせと合図を送るのでゆっくり床に降ろした。テクテクと団長に近寄るとスネの部分を思い切り蹴り上げた。が、力が弱いせいか団長は痛がる素振りを見せるどころか益々おかしそうにしているではないか。ゲシゲシと尚も蹴り上げている兵長のおでこに青筋が見えた気がした。
ハラハラとしているとバァーーン!っと勢いよく扉が開いた。
「リヴァーーーイ!!」
ハンジさんが物凄い勢いで兵長に近付くと抱き上げて抱っこしている。
「随分探したんだよー!どこに行ってたのさ!危うくエルヴィンに殺されるところだったよー!」
兵長の頬にグリグリと顔を擦り付けているハンジさんだけど、兵長はかなり、そうこの世の終わりかと言わんばかりに顔が青ざめ目には怒りを宿している。そして手でハンジさんの顔を叩いて顎を押しやり髪を引っ張ろうとしてやめ、とにかく離れたそうにしていた。
「ハンジ、ひとまず落ち着け」
そう言って団長が兵長を抱き上げた。なんだろう。無表情の団長が、かなり機嫌が悪くなった兵長を抱っこしている。凄く面白い。笑ったらまた兵長に怒られるから必死に我慢する。こんな光景はもう二度と見られないから目に焼き付けておこう。
「小さくなってもリヴァイはリヴァイなんだな」
ははっ、と柔らかく笑ってる団長を見た兵長が急に嫌がり出してまた暴れる。それを見兼ねたミケさんが抱っこしようとしたが手を叩いて嫌がる。そうなると残るのは…
「君にお願いするとしよう」
「はい…」
また腕の中に戻って来た兵長。見るとわなわなと小さく震えている。
「兵長。大丈夫ですよ?」
声をかけて弟をあやしていたように微笑んできゅっと抱き締めた。小っちゃい子はあったかいなーと思っていると今度は周りがざわめく。
「えっ、リヴァイ?どうしたの?」
「らしくないな」
「珍しいこともあるもんだ」
どうかしたのかと思っていると兵長は胸に顔を擦り付けるようにスリスリし始めた。何これ。めちゃくちゃ可愛い、と母性本能がくすぐられる。兵長だということも忘れて堪らずもう一度抱きしめた。
「ねぇ、君。それリヴァイだよ?頭大丈夫?」
ハンジさんが近付いて肩に手を乗せようとした。
パチン
「つんな」
兵長がハンジさんの手を叩いた。
「え?何?なんて?」
「くんな、って言ったんだと思います」
「えー、酷いなリヴァイ!夜通し探したのにこの仕打ち?!」
酷いじゃないかー!、と絶叫している。それを静かな目で見下ろす兵長。
「ちちゃない」
「え?」
「チッ…ちちゃねぇ」
「分かった。汚いって言ったんだね。そうでしょ?リヴァイ、そうでしょ??」
また興奮し始めたハンジさんを団長が止めて解毒剤を早くリヴァイに渡せと命令している。
「そうだった!これこれ!」
ジャケットのポケットから取り出したのは小さな小瓶。その蓋を開けようとするがなかなか開かない。「あれぇ?」とハンジさんが思い切り引っ張るが開かない。みんながいくらやっても開かない。ハンジさんが思いっきり引っ張っている。なんでかな、嫌な予感が…
キュポンッ、
いい音を響かせて蓋が開いた、刹那。ハンジさんの手を滑り落下する小瓶。慌てて三人が手を伸ばすも間に合わず、カチャン、パリンと音を立てて砕けてしまった小瓶に散らばる解毒剤。それを自分を含めた四人は大変な事になったと困惑し、兵長ただ一人だけはまた顔が青ざめ絶望の表情を浮かべていた。
さて、どうしたものか。
子ども姿の兵長を抱き抱えたまま途方にくれる。管理棟に行くわけには行かず宿舎に方向転換をしたその時、声をかけられた。
「待て」
振り返るとそこにはミケさんが立っていた。何故だろう。なんだかマズイ気がする。
「ミケさん…なんでしょうか?」
至って普通に彼を尋ねたが兵長を抱える腕が緊張で震える。兵長のこの姿だけは見られないようにしなければ。
「あんたからリヴァイの匂いがする」
「ーーっ!気のせいでは?」
「昨日の訓練後から見かけていないからな…何か知ってるんじゃないか?」
「さぁ…私は何も存じ上げませんよ?すみません、急いでいるので私はこれで…」
早くここから立ち去らねばと踵を返したが大きな手に肩を掴まれ動けなくなった。
「いや…何かおかしい」
「な、何がですか?」
「リヴァイの匂いが強い」
そう言って顔を近づけると首に顔を近づけてスンスンと匂いをかぎ出した。髭が当たりそうで当たってなくてくすぐったい。時折ピクンと体を震わせているとマントが盛り上がってミケさんの顔に当たった。
「なっ」
「へっ?!」
ミケさんは急なことに大変驚いており自分もさっきまで寝ていたはずの兵長が起きてマントから姿を出したので慌ててしまった。だからミケさんが驚くのも無理はない。視線の先にいるのは小さくなった兵長なんだから。
兵長は何も言わずじっとミケさんを見つめていた。
「こいつは、」
「あ、あの…」
「こいちゅにしゃわりゅな(コイツに触るな)」
「ーーっ!」
何も喋らなかった兵長がそんな事を言うので頬に熱が集まる。
「なるほどな。ハンジの仕業か」
ミケさんはこれだけで理解したようで流石だな、と感心した。結局、この小さな男の子がリヴァイ兵長だと言う事がバレてしまい再びマントで隠すと団長執務室へミケさんと向かった。
「エルヴィン、俺だ」
「ミケか。入ってくれ」
ミケさんが中に入ると自分も中に入る。団長に敬礼しようとしたが兵長を抱えているのでうまく出来ずお辞儀をした。団長は幾ばくか疲労の見える顔をしておりその瞳は不思議そうに自分を見ている。
「リヴァイが見つかったぞ」
「本当かっ!」
ミケさんが見つかったと言った瞬間、目を見開いて椅子に座っていた団長がガタリと立ち上がり興奮している。こんな団長初めて見た。ミケさんは詳しい経緯を知らないため団長が説明している。その間にチラリとマントを覗くと見上げていた兵長とパチリと目が合う。マントを引っ張るので団長の話が終わったのを見計らってマントを取る。
「リヴァイ…」
団長は少し憐れむような視線を向けている。兵長は何も言わず自分の服を掴んで腕に抱かれたままだ。
「ミケ。ハンジを呼んでこい。解毒剤も用意しろとな」
「了解だ」
自分の聞き間違いではなければ団長の口から今解毒剤、という言葉が発せられた?服を引っ張られるので視線を下ろすと兵長が顎で団長を指し『聞け』と言ってるようだった。
「あ、あの。団長、」
「なんだ?」
「解毒剤があるんですか?」
「そのようだ。既に準備はしてあったらしい」
「そうなんですか!兵長、良かったですね」
まだ機嫌は悪そうだが声をかけると頷く兵長。なんだろう。黙ってても小さな手で服を掴んでる姿は可愛らしい。この姿の兵長ともお別れかと思うと少しだけ寂しい気がした。
「君は何故リヴァイと一緒にいる?」
団長が探るような目をしながら尋ねてくる。
「昨日の夕方、本部の中でぶつかったんです。迷子だと思い家に連れて帰ったんです…」
「平気だったのか?」
団長が眉を潜めながら兵長に視線を向けた。兵長は黙ったままコクンと頷いた。団長もそれを見て安心したように表情を少しだけ緩める。
「それよりリヴァイは話せないのか?」
「そんなことないですよ?」
「なら何故話さない」
「それは、このぐらいの年齢の子はまだ上手く話せないので…」
「なるほど」
ふむ、と顎に手を添えて何かを考え始めた団長。
「聞いてみたいものだが…」
チラリと兵長を見るとそっぽを向いている。それが小さかった頃の弟の姿と重なり思わず笑みが零れた。兵長がそれに気付くと睨まれるが今はそこまで怖くない。笑いを堪えたが我慢できずに顔を逸らしてふふふ、と笑ってしまった。
「ちぇめぇ…あとじぇおぼえちぇどよ?
(テメェ…後で覚えてろよ?)」
すると今度は前からふっ、と空気が抜けるような音がして視線を向けると団長が片手で顔を覆って肩をふるふると震わせていた。団長が笑ってる。驚いていると兵長に服を引っ張られ目が合うと指で下に降ろせと合図を送るのでゆっくり床に降ろした。テクテクと団長に近寄るとスネの部分を思い切り蹴り上げた。が、力が弱いせいか団長は痛がる素振りを見せるどころか益々おかしそうにしているではないか。ゲシゲシと尚も蹴り上げている兵長のおでこに青筋が見えた気がした。
ハラハラとしているとバァーーン!っと勢いよく扉が開いた。
「リヴァーーーイ!!」
ハンジさんが物凄い勢いで兵長に近付くと抱き上げて抱っこしている。
「随分探したんだよー!どこに行ってたのさ!危うくエルヴィンに殺されるところだったよー!」
兵長の頬にグリグリと顔を擦り付けているハンジさんだけど、兵長はかなり、そうこの世の終わりかと言わんばかりに顔が青ざめ目には怒りを宿している。そして手でハンジさんの顔を叩いて顎を押しやり髪を引っ張ろうとしてやめ、とにかく離れたそうにしていた。
「ハンジ、ひとまず落ち着け」
そう言って団長が兵長を抱き上げた。なんだろう。無表情の団長が、かなり機嫌が悪くなった兵長を抱っこしている。凄く面白い。笑ったらまた兵長に怒られるから必死に我慢する。こんな光景はもう二度と見られないから目に焼き付けておこう。
「小さくなってもリヴァイはリヴァイなんだな」
ははっ、と柔らかく笑ってる団長を見た兵長が急に嫌がり出してまた暴れる。それを見兼ねたミケさんが抱っこしようとしたが手を叩いて嫌がる。そうなると残るのは…
「君にお願いするとしよう」
「はい…」
また腕の中に戻って来た兵長。見るとわなわなと小さく震えている。
「兵長。大丈夫ですよ?」
声をかけて弟をあやしていたように微笑んできゅっと抱き締めた。小っちゃい子はあったかいなーと思っていると今度は周りがざわめく。
「えっ、リヴァイ?どうしたの?」
「らしくないな」
「珍しいこともあるもんだ」
どうかしたのかと思っていると兵長は胸に顔を擦り付けるようにスリスリし始めた。何これ。めちゃくちゃ可愛い、と母性本能がくすぐられる。兵長だということも忘れて堪らずもう一度抱きしめた。
「ねぇ、君。それリヴァイだよ?頭大丈夫?」
ハンジさんが近付いて肩に手を乗せようとした。
パチン
「つんな」
兵長がハンジさんの手を叩いた。
「え?何?なんて?」
「くんな、って言ったんだと思います」
「えー、酷いなリヴァイ!夜通し探したのにこの仕打ち?!」
酷いじゃないかー!、と絶叫している。それを静かな目で見下ろす兵長。
「ちちゃない」
「え?」
「チッ…ちちゃねぇ」
「分かった。汚いって言ったんだね。そうでしょ?リヴァイ、そうでしょ??」
また興奮し始めたハンジさんを団長が止めて解毒剤を早くリヴァイに渡せと命令している。
「そうだった!これこれ!」
ジャケットのポケットから取り出したのは小さな小瓶。その蓋を開けようとするがなかなか開かない。「あれぇ?」とハンジさんが思い切り引っ張るが開かない。みんながいくらやっても開かない。ハンジさんが思いっきり引っ張っている。なんでかな、嫌な予感が…
キュポンッ、
いい音を響かせて蓋が開いた、刹那。ハンジさんの手を滑り落下する小瓶。慌てて三人が手を伸ばすも間に合わず、カチャン、パリンと音を立てて砕けてしまった小瓶に散らばる解毒剤。それを自分を含めた四人は大変な事になったと困惑し、兵長ただ一人だけはまた顔が青ざめ絶望の表情を浮かべていた。
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